第38話:裂かれた絆


「でも、どうして美月ちゃんなの?」


誰かがそう言った瞬間、私は驚きと不安で胸がいっぱいになった。


「そうだよ」

その言葉に、さらに心がざわついた。


「百歩譲って、ただの嫌がらせだったとしても、他の人に嫌がらせしようとした可能性だってあるじゃん」


多分その可能性は…。


「ちょっと、みんな一旦落ち着いて」


みんなを制したのは監督だった。


「だって、他にも衣装があった中でわざわざ美月ちゃんの衣装を選んだんだよ。それって、そういうことじゃない?」


誰かが言った。


その言葉に、私は胸が締め付けられるような思いをした。


「私…、」


私は言葉を失った。

何を言えばいいのか分からなかった。


ドレスが破れていた日、薄々そんな気はしてた。


私のことをよく思ってない人が、ここにいるんじゃないかって。


だけど、このクラスにそんな風に思っている人がいるって信じたくなくて、気付かないふりをしていた。


あの時の声。


その人が犯人なんだと思う。


「ねぇ美月ちゃん、誰がそんなことしたのか身に覚えない?」


その質問に、私は心臓がドキッとした。


「ないよ、」

私は震える声で答えた。


犯人は女の子ってことぐらいしか分からなかった。


だけど、そんなことを言ったらクラスが大騒ぎになる。


ただでさえみんな混乱してるのに。


「じゃあ主役を狙ってた誰かが、美月ちゃんに逆恨みして、とか?」


その言葉に、私はさらに不安になった。


「じゃあ犯人は女子ってこと?」


男子がコソコソ話し始めた。


「女子こえ〜」

誰かが呟いた。


「ちょっと待ってよ。まだ犯人が女子って決まったわけじゃないでしょ」


男女で言い争いを始めた。


「そうよ。美月ちゃんの狂ったファンがこんなことした可能性だってあるでしょ」


…やめて。


「そんなことするわけないだろ!」

もうやめて…!


「やめて…!」

私は叫んだ。


「…美月ちゃん?」

みんなが私を見た。


「みんな、犯人探しなんてやめようよ」

私は必死に止めた。


「え?でも、一番傷ついてるのは美月ちゃんでしょ?犯人が誰か気にならないの?」


その質問に、私は答えに詰まった。


気にならないって言ったら嘘になる。


だけど、


「もしも本当に、その人が私に恨みがあったんだとしたら、そんな風に思わせてしまった私も悪い。それに、今回は無事に終わったんだからもう終わりでいいじゃん、ね?」


私は必死に説明した。


こんなことでみんなの仲が悪くなって欲しくない。私一人が我慢すれば済む話なんだから。


「美月…」

蒼大が私の名前を呼んだ。


「はぁ」

すると、誰かがため息をついた。




「あのさ、もういい子ちゃんぶるのやめたら?見ててイライラするんだけど」



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