第36話:暗闇の中の光

「それは、、」


多分。

蒼大の言う通り、自分のことを責めてた。


「あれは事故なんだよ。もしも劇が止まっていたとしても美月のせいじゃない」


「そうだよ、ね、」

私は小さく頷いた。


「そうだよ。だから、自分を責める必要なんてない」


蒼大が優しく微笑んだ。


その笑顔に、少しだけ心が軽くなった気がした。


「ありがとう、蒼大」


もしも劇が止まってしまって、私が落ち込んだら、蒼大は今みたいに声をかけてくれてたと思う。


そして、それでも私は自分を責めてたはず。


だから、今回の劇が成功して本当に良かった。


蒼大もそのことをちゃんと分かってたんだと思う。


「保健室行こっか」


蒼大は私を抱きかかえたまま、歩き出した。


この格好で廊下を通るのは恥ずかしかったけど、蒼大の腕の中で、私は少しずつ安心感を取り戻していった。


彼の温もりが心地よく、緊張が解けていくのを感じた。


保健室に着くと、蒼大は私を優しくベッドに下ろした。


保健の先生がすぐに駆け寄ってきて、私の足を診てくれた。


先生の手が触れると、少し痛みが走ったが、我慢した。


「この足でよく歩いたね。腫れて痛かったんじゃない?」


「はい、」

先生の言葉に、私は小さく頷いた。


「暫くは不便だろうけど、一週間ぐらいで治ると思うから、また何かあったらいつでもおいで」

先生が微笑んで言った。


その言葉に、少しだけ安心感が広がった。


「ありがとうございます」


蒼大が私の手を握りしめてくれた。


「美月、無理しないでね」

蒼大が優しく言った。


「うん、」


「俺に出来ることがあればなんでも言って」

「ありがとう」

私は微笑んで答えた。


「じゃあ、一緒に教室に戻ろうか」

蒼大が私を支えながら言った。


「うん、ありがとう」


蒼大は私を支えながら、ゆっくりと教室へと向かって歩き出した。


教室のドアに近づくと、中から揉めている声が聞こえてきた。


私は立ち止まり、耳を澄ませた。


「そんなの一体誰が!」


「何かの間違いなんじゃ!」


誰かが怒鳴っている声が聞こえた。


私は不安な気持ちでいっぱいになった。


「何が起こってるのかな…」

私は蒼大に小さな声で尋ねた。


「分からないけど、とりあえず入ってみよう」


蒼大が私を支えながら、ドアを開けた。


教室の中では、クラスメイトたちが何かを巡って激しく議論していた。


私はその光景に驚き、足がすくんだ。


みんな私がいることにも気づいてないほどだった。


「美月、大丈夫?」

蒼大が心配そうに私を見つめた。


「うん、大丈夫」


私は深呼吸をして、教室の中に足を踏み入れた。


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高嶺の花には彼氏ができない!? @hayama_25

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