高嶺の花には彼氏ができない！？

第24話：不安の影

「美月。そろそろ練習再会できそうー？」

クラスメイトが声をかけてきた。

「もちろん」

気持ちを切り替えて、頑張ろう。

と思ったその時、

「演技もまともに出来ないくせに、男とイチャイチャしてんじゃねぇよ」

突然背後から冷たい声が聞こえてきた。

「え…？」

声がする方を見たけど、その時には誰もいなかった。

心臓がドキドキと早鐘を打ち、冷や汗が背中を伝った。

「美月？」

蒼大の声に、私はハッと我に返った。

彼の心配そうな顔が目に入る。

「あ、ごめん。何でもない」

私は慌てて微笑み、彼を安心させようとした。

クラスメイトの誰かがそんな風に思ってるなんて、そんなのありえない。

きっと聞き間違い…だよね。

＿＿＿

「カットー！美月ちゃん良かったよ！」

監督の声が響きいた。

「ほんと？良かった、」

監督の声に、私はほっと胸を撫で下ろした。

蒼大のことだけを考えてたら、自然な演技ができたみたいだ。

練習が終わり、みんなが片付けを始める中、私は一人で考え込んでいた。

さっきの声が頭から離れない。

何かの幻聴だったのか、それとも本当に誰かが言ったのか…。

聞き間違いだって信じたいけど、

だけど、どうしても幻聴だなんて思えなかった。

「美月、大丈夫？」

蒼大が心配そうに声をかけてきた。

「うん、大丈夫。ちょっと疲れただけ」

私は微笑んで答えたけど、心の中ではさっきの声が気になって仕方がなかった。

誰かが言ったんだとしたら一体誰が。

このクラスに私のことをよく思ってない人がいるってことだよね。

そんなの考えたくもなかった。

"演技もまともに出来ないくせに" か…

私なりに頑張ってるつもりだけど、私のせいで劇が台無しになるかもって思ってる人がいる。

もしかしたら、口には出さないだけでみんなそう思ってるんじゃ…

「そろそろ帰ろうか。送ってくよ」

颯大が優しく言った。

私は彼の言葉に頷き、教室を出る準備を始めた。

外に出ると、夜の風が心地よく吹いていた。

蒼大と一緒に歩きながら、私はふと立ち止まった。

もしかして、蒼大もさっきの声を聞いたのかな。

「蒼大、さっきの声のことなんだけど…」

私は言葉を選びながら、彼に話しかけた。

「声？何か聞こえたの？」

蒼大は首を傾げて聞いてきた。

「ううん、何でもない」

まだそうと決まったわけじゃない。

誰がそんなことを言ったのかも分かってないのに、余計な心配かけたくない。

「美月、もし何かあったらすぐに言ってね。俺がいるから」

蒼大は優しく私の手を握りしめた。

その温かさに、私は少しだけ安心感を覚えた。

「ありがとう、蒼大」

私は彼の温かさに安心しながら、微笑んだ。