第23話:演技の秘密

「ねぇ、一つだけ聞いてもいい?」

私は少し緊張しながら、蒼大に問いかけた。


心の中では、彼の答えがどんなものか気になって仕方がなかった。


「ん?何?」

蒼大は優しい目で私を見つめ、微笑んだ。


「蒼大も演技は初めてなのに、どうしてそんなに上手なの?」


私は蒼大の顔をじっと見つめながら尋ねた。


蒼大の演技が自然すぎて、まるで本当にその役を生きているかのように感じられたから。


私なんて全然ダメなのに。


「えーそうかな」

蒼大は照れくさそうに笑い、少し肩をすくめた。


その仕草がまた可愛らしくて、私は思わず微笑んでしまった。


「そうだよ。ねぇどうしてそんなに上手いの?練習たくさんしたの?」


蒼大のことだから、影でたくさん練習してそう。

もしそうなら、私も練習あるのみか…。


「そんなには練習してないよ。それに、演技だって別に普通だと思うよ?」


蒼大で普通なら私はどうなるの!


「だって今まで一度も演技を止められたりしてないじゃん」

私は少し身を乗り出して、蒼大の反応を待った。


「まぁそれはそうだけど」

蒼大は少し照れながらも、私の言葉を受け入れた。


止められるどころか褒められてばっかり。


私なんて言葉と顔が一致してないって、何度も注意されてて、自分の思い通りに表情を作ることさえ出来ないのに。


「演技する時に、何を考えてるの?」

私は蒼大の答えを知りたくて、さらに問いかけた。


何か参考に出来ることがあるかも。


蒼大は一瞬、私の目をじっと見つめた後、


「美月のこと、かな」

そう言って、少し照れくさそうに笑った。


その笑顔に、私の心臓がドキドキと高鳴った。


彼の言葉に、私は驚きと嬉しさで胸がいっぱいになった。


今、私のこと考えてるって言った…?


「えっ、私のこと?」

私は驚きながらも、顔が赤くなるのを感じた。


蒼大の言葉が信じられなくて、もう一度確認したくなった。


「うん。美月のことを考えると、自然と感情が湧いてくるんだよね、」


蒼大は真剣な眼差しで私を見つめ、その言葉を静かに、だけど力強く言った。


「そんな…嬉しいけど、恥ずかしいよ」

私は顔を赤らめながら答えた。


彼の言葉が嬉しくて、でも少し恥ずかしくて、心が温かくなるのを感じた。


私も…

蒼大のことを考えながら演技した上手くいくのかな。


一度試してみよう。


「でも、本当だよ。美月がいるから、俺も頑張れる」


蒼大の真剣な眼差しに、私は心が温かくなるのを感じた。


「ありがとう、蒼大。私も、蒼大がいるから頑張れる」


私は彼の手をぎゅっと握りしめ、心から感謝の気持ちを伝えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る