第19話:心の鼓動


「美月…?」

私がここにいるとは思っていなかったのか、目を見開いた。


「蒼大、どうしてここに?」


「衣装担当の子がカメラないって探してて、見つけたから持ってきたんだ」

と、蒼大はカメラを手に持ちながら説明した。


「そうなんだ」

「そのドレス、すごく似合ってるよ」


良かった…


「本当に?ありがとう」

私は少し照れながら答えた。


頬がほんのりと赤く染った。


その瞬間、蒼大が一歩近づいてきて、私を優しく抱きしめた。


彼の腕の中に包まれると、まるで世界が静まり返ったかのように感じた。


「蒼大…?」

「…しばらくこのままでいさせて」


蒼大の囁き声は、私の心に直接響いた。


彼の温もりと心臓の鼓動が伝わってきて、


私は驚きながらも、彼の温かさに包まれて安心感を感じた。


「分かった」

そう言って、私も蒼大の腰に手を回した。


だけど、次第に蒼大の抱きしめる力が強くなってきて、少し息苦しさを感じ始めた。


「蒼大、ちょっと強すぎるかも…」


彼はすぐに気づいて、少し力を緩めてくれた。


「ごめん。苦しかった?」

「ちょっとだけ、」


「ごめんね、可愛すぎてつい…」

その言葉に、私は顔が真っ赤になった。


「もう、蒼大ったら…」

照れながらも、私は彼の温かさに包まれて、幸せな気持ちでいっぱいだった。


「はぁ、」

どうしてため息なんて、


「蒼大…?」


と小さな声で呼びかけると、彼は少しだけ離れて私の目を見つめた。


「こんな可愛い美月、誰にも見られたくない」


私は驚きと戸惑いで心臓がドキドキしていた。


蒼大の瞳には深い愛情と少しの不安が混じっていた。


「もしかして、嫉妬してくれたの?」

「うん。そうかも、」


嫉妬してくれたのは嬉しいけど、心配なんてしなくてもいいのに。


だって、


「私の王子様は蒼大だけだよ…?」


そう言うと、


蒼大は嬉しそうに微笑みながら、私の顔を優しく両手で包んだ。


「美月、…キスしてもいい?」


その瞬間、私たちの周りの世界が静まり返ったように感じた。


心臓の鼓動が耳に響き、彼の温かい手の感触が私の頬に伝わってきた。


「ここで…?もうすぐ戻ってきちゃうよ?」


蒼大が顔を近づけてくるのを感じた瞬間、私の心臓は一層早く鼓動し始めた。


「大丈夫…」

蒼大は優しく囁き、私の目を見つめた。


その言葉に安心感を覚え、私は自然と目を閉じた。


まつげが微かに震え、彼の息遣いが近づいてくるのを感じる。


まるで、二人だけの時間が流れるようだった。


蒼大の唇がそっと触れた瞬間、私の心は一瞬で溶けてしまいそうだった。



彼の優しさと温もりが、全身に広がっていく。

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