第5話:水やり

「へぇーお母さんが花屋を?」


「はい。子供の頃から花に触れ合う機会が多かったので、美月にお願いをして一緒に水やりをすることになりました」


あ、そうだ。蒼大に聞きたいことがあったんだ。


「蒼大、聞きたいことがあるんだけど」

「何?」


「このお花がどうして元気ないのか分かる?」


先週から水をやっても元気にならないお花があった。何が原因か分からなかった。


「あーこれは…お水毎日あげてる?」

「もちろん!最近は毎日5回ぐらい水やりしてるよ!」


お花はとにかくお水が大事だって聞いた。あと太陽。


「だからだね」

「だから?」


「あげすぎても駄目なんだよ」

「うそ…、」


つまり、私のせいで、この子は…


「大丈夫、まだ間に合うよ。とにかく、土が乾くまではあげないようにして」


「わ、分かった。お水のあげすぎも駄目だったなんて…」


知らなかった。お水はあげればあげるだけいいものだと…


「そんな落ち込むことないよ。勘違いしてる人も多いから、次から気をつければいいよ」


「分かった、」


考えてみれば私、お花に対して何の知識もないまま水やりしてた…


「美月、そんな落ち込むことないって蒼大くんも『師匠!』」


「師匠?もしかして俺の事…?」


私にとってのお花の専門家だから師匠


「そう!私にお花の事もっと教えて!」

「え?」


師匠ならきっと、お花のこと沢山知ってるから


「今までなんの知識もないまま水やりしてて、そんなのお花に失礼だって思ったの」


「いや、でも俺そんな大したとこは知らないよ?」


「それでもいいの!私よりは知ってるだろうし、少しでも知識があれば、いざと言う時に使えるだろうと思って。だからお願い教えてください師匠!」


今回は師匠がいたから良かったけど。いない時は私の判断で行動しないといけない。


助けられるお花も私のせいで助けてあげられないかもしれない。そんなの嫌だ。


「ははっ、分かった。いいよ教えてあげる」


「ししょー!」


「だから、とりあえず師匠って呼ぶのはやめてくれる?」

「え、なんで!」


師匠なのに。あ、博士の方が良かったか?


「師匠なんて、恥ずかしいからね。それに、美月には名前で呼んで欲しいんだよ」


そりゃそうか。蒼大は蒼大なんだから。


「そうだよね、分かった。蒼大よろしく」


「じゃあ俺もいいかな」


あ、お兄ちゃんがいたこと忘れてた


「もちろんです」


もう、なんで真似するの。


「お兄ちゃんがどうして」

「どうしてって、水やりをするのは美月だけじゃないからね」


そうか、お兄ちゃんも毎日するって言ってたな。


「私は本気なんだから邪魔しないでよね」


「もちろん。俺も本気だよ」


なんだかなぁ。

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