ねえねえ
主婦のOさんが、家の近くの喫茶店でご近所さんとお茶していた時のこと。
スーツを着たサラリーマンと思わしき男性が、子供を連れて店に入ってきた。仕事中じゃないのかしらと思って見ていると、子供の方が大声で叫びだした。
「ねえねえーおじさんいつ死ぬのー?」
(……え?)
「ねえねえーおじさんいつ死ぬのー? ほんとはおじさんが死ぬんだよー?」
その子供は、サラリーマンに話しかけているようだった。
しかし、当のサラリーマンの方は何も聞こえていないかのように反応が無い。他の客や店員も、気にかけていない様子だった。
「ねえ、ちょっとあの子供おかしくない?」
「え、あの子供って?」
「あの子よ、あそこのサラリーマンに変なこと言ってるじゃない」
「サラリーマンはいるけど……子供なんている?」
(……もしかして、私にしか見えてない?)
そう気がついた瞬間、子供と目が合った。
「ねえおばさん! この人殺してよ!」
サラリーマンのそばにいる子供が、Oさんに向かって叫ぶ。
「ねえ、この人殺して!」
(あ、絶対に反応しちゃ駄目だ)
そのうち、サラリーマンがカウンター席を立ち、店の外へ出ていった。子供もその後についていったが
「おばさんこの人殺して!」
「ほんとはおじさんが死ななきゃいけないんだよ!」
という声が、店内からサラリーマンが見えなくなるまで、外からずっと届いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます