第7話


  父親は、女への暴行を続ける。


 「あー-!」

 「おさまんねぇ」

 「おさまんねぇんだよ」


 父親の怒りはおさまりそうにないようだ。

 おさめてくれないと、これ俺にはどうしようもないんだが。

 俺、赤ちゃんだし。

 生まれたばかりだよ。

 

 扉が開く。 


 「文左衛門、千代美の出産の方は問題ないか」


 扉を開けた男が、母親の出産の様子を心配したような事を口にする。

 俺は問題なく出産されたけど、問題はあるよ。

 出産された俺にきれてたり。

 出産を終えたばかりの妻に暴行を加えてたり。

 俺赤ちゃんだし。

 喋れないや。


 「文左衛門」

 「出産はぶじ終わったみたいだな」


 男は、俺を見て口にする。

 この状況でそんな事言うかしら。

 落ち着いた男だな。

 そんなに落ち着かれてても困る。


 「おお、男の子だな」


 男は俺に近づき、口にする。

 ゆーてる場合じゃねぇ。


 「お前が望んでいた男の子だ」

 「おめでとう文左衛門」

 「千代美」

 

 うん。こいつもどこかが欠陥してるように見える。

 

 「ん」

 「文左衛門」

 「出産を終えたばかりの妻は」

 「丁重にもてなすものだ」

 「暴行を加えるのはよくないぞ」


 良かった。

 こいつはまともな人間のようだ。

 どっかおかしいし、どこか抜けてる感じもするが。

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