第6話 出産を終えたばかりの妻にやめなさいと言われたらぶちきれて殴って ベッドから投げ飛ばすのがこの異世界の普通なんだろうか


  「文左衛門」


 「やめなさい」

 「貴方の赤ちゃんよ」


 「貴方が待ち望んだ男の子よ」


 「赤ちゃんだもの」


 「笑いもするわ」


 この異世界での俺の母親だろうか。

 この父親よりはまともそうだ。

 少なくとも人間ではあるようだ。

 いや、獣でも畜生でもああはならないよな。


 「うるせぇ」


 いや、ここでなんでそんな言葉が出てくるんだ。


 「うるせぇんだよ」


 「俺に指図するな」


 「お前は何様だ」


 父親は、女に近づき、髪を掴む。


 「俺に指図するんじゃねぇ」


 父親は、女を、殴る。

 殴り続ける。


 あー、だめだわこいつ。

 

 「やめなさい文左衛門」


 「まただ!」

 

 「また指図しやがったこいつ!」


 父親は、女をベッドから投げ飛ばす。


 うーん。

 前世の俺もクズだったと。

 記憶はなくてもそう認識してるがさ。

 ここまでのクズだったかな。

 ここまでではなかったと思いたい。

 記憶はないけど。

 そう思う。


 それとも、この異世界ではこれが普通なのか。

 生まれてきたばかりの我が子が笑ったらぶちきれて。


 出産を終えたばかりの妻にやめなさいと言われたら、ぶちきれて殴って

ベッドから投げ飛ばすのが。

 この異世界の普通なんだろうか。

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