第2話

2話


  気づいたら、自室ではないどこかの部屋にいた。


 「稲葉克五郎」

 「貴方は、オロチに勇敢に立ち向かって死んだのよ」

 「多くの弱き者達が貴方を称え信じた」

 「弱くはない者達が」

 「貴方の武勇伝に感化され」

 「歩みを進めた」

 「少ない強者達は」

 「貴方と共に肩を並べ歩を歩み」

 「オロチに向かっていった」

 

 女神のような存在が、何か言っている。

 言ってるんだけど。

 これ誰に言ってるの?俺?

 ははは。まさかぁ。

 稲葉克五郎?

 俺は宮本清二のはずだ。

 記憶が曖昧になっているが、俺は宮本清二のはずだ。

 

 きっと、俺は死んで異世界転生する前の状況なんだろう。

 俺、オロチと戦った記憶ないんだよね。

 強者達がオロチとの最終決戦のため進軍していく中。

 地元で幅きかせて俺TUEEEしてた矮小な存在だったという気持ちが残っている。


 「あのー」

 「俺は宮本清二ってもんでさ」

 「矮小な小悪党なあっしが」

 「オロチと戦うわけがないじゃございませんか」


 前世の俺は、どうしようもないクズだった。

 記憶がなくても、その気持ちがあった。


 「きっと誰かと事務手続きの間違いでもしてるんでしょう」

 「俺なんかが異世界転生しても」

 「オロチは殺せません」

 「裁きの時を待つとしたら」

 「やっぱ地獄っていうんだかゲヘナというんだか」

 「悪魔に食われるとかそんなんでしょうね」

 「それで、お願いしやす」

 「せめて」

 「裁きぐらいは受けたいんでさ」

 「パパママの所に帰れないとしても」

 「あ、これでも洗礼は受けてるんで」

 「洗礼してくれた牧師は」

 「兄貴の教えに背く程に」

 「俺にしつこく言葉をかけてくれました」

 「信仰の枠を超える程に良い人だった」

 「それで、俺が殺しました」

 「あの牧師は」

 「パパママの所に帰れるんでしょうかね」

 

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