幕間
珠菜が天界に行った頃
和華国と隣国で同盟国ー子葉国ーにて
城内は、つい先程まで男の怒声が響き渡り、女子どもが恐怖や不安で震えていたのが嘘のように静まりかえっていた。
「
戦国の世は負けた国が賠償だけで済むほど甘い世界ではない。
後の戦の種にならないよう、負けた国の当主と家督を継ぐ男子は少なくとも殺される。
ひどい時だと一族の女や子ども、領民も皆殺しにされる。
綾の父で当主の
「いやです。私もこの城で死のうと思います」
先日、兄と別れたとき胸が張り裂けるような思いをしたばかりだった。
もう一度そんな思いをするくらいなら、大好きな両親と死ぬのが本望であると考えていたが、いきなり目の前が暗くなった。
「綾は私たちに構わず逃げなさい。まだ若いあなたまで黄泉の国への旅には連れていけません」
虎白の正室で母の春が抱き着いた。
「藤、綾を頼む」
真虎は綾の乳母の藤を呼んだ。
「この命に換えても」
「綾、達者でな。天から見守っている。白夜に会った時はよろしく頼む。それとこの文を真虎殿に」
虎白は綾の髪を優しく撫でた 。
そして、綾に文を託した。
「そなたの母に慣れたことは誇りです。身体に気をつけてね」
「姫様、この藤の背中で申し訳ありませんがお乗り下さい」
「分かった。私も父上と母上の娘としてこの世に生を受けて幸せでした」
綾は一度だけ真虎と春を見て、二度と見るなく奥へ進んで行った。
もう一度見てしまうと、真虎と春に会いたくなってしまうからだ。
城と外に出ると
「落ち武者狩りに合わないよう急ぎましょうか」
藤の言葉はもう二度と故郷に戻ることが出来ないのを感じた。
ふと後ろを見ると、紅蓮の炎に包まれている生まれ育った城が見えた。
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戦国姫の巫 夜桜海月 @missuu
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