第7話

扉の開いた先には、石造の大きな部屋が広がっており、壁には蝋燭がかかっており、天井からは、蝋燭を刺したシャンデリアがぶら下がっている。

「意外と、おしゃれだな」

私はあたりを見渡すが、生物らしき陰は無く、普通の洋風な感じの部屋だ。

「時の魔王って…ど、どこにいるんだろう…」

私はさっきまで震えていた手がさらに震える。

すると、奥の方に置いてある勉強机の隣にあった、帽子かけから、一つのシルクハットが突如として落ちた。

「!?」

私達は急に帽子が落ちたことによって全員が、帽子に目をやった。

「な、なんだ…」

すると、急に帽子は落ちたところから回転をはじめ、やがて浮遊を始める。

「な、なに!?」

「ぼ、帽子が…」

帽子は部屋の中を一周すると、中央部で一度止まった。すると、帽子から灰色の液体が溢れ出した。

帽子は灰色の液体を床に垂らしていき、灰色の液体は何かを形作っていく。

「な、なんだ!?」

やがて、何かが出来上がると、灰色の液体は下から次第に色が浮かんでくる。

『獲物ガキタ…』

そして、一番下から頭のてっぺんまで、色が浮かび終わると、その中から声が聞こえた。

カタカタで、久しぶりに日本に来たような、外国人のような喋り方をしている。

「お、お前は…!!!」

『オレ…時ノ魔王!遊ビタイ!!!』

時の魔王は、時計板のような目をひと昔前のカラスの頭のようなガスマスクに埋め込み、その上からシルクハットをしている。胴体は白い布が広がっている。

手は単体で浮いており、腕という存在が見当たらず、ペンダント型の時計から指が生えているような見た目をしていて、どう見ても人間ではないことは確かだった。。

「それじゃあ、行きますよ!!!」

私達はその掛け声で、刀を両手に持ち、時の魔王に襲いかかる。

「オソイ…」

「加速の魔法!!!」

その言葉を言った瞬間、リョウさんの髪が碧色に染まる。

次に私が、目視できたのは、リョウさんの握っていた刀が、時の魔王の胴体の半分を切っていた所だった。

「や、やった!?」

『傷、浅イ』

私が喜んだのも束の間。時の魔王はリョウさんの横腹を殴り、横方向へ吹っ飛ばした。

「「リョウさん!?」」

「リョウ!!!」

『余所見ダメ』

私達はリョウさんの心配をしていることに夢中になってしまい、一瞬で時の魔王に後ろを突かれた。

後ろに回った、時の魔王は少し長めの右手の指を踵を返したキリヤくんの腹に突き刺す。

「グハッ!!!」

私とミナの横で、キリヤくんの血液が空中に散る。

「こ、このやろおおおおおおお!!!!!!!!」

キリヤくんは握っていた刀をさらに強く握り、時の魔王に思いっきり刀を振りかざした。

バキン!!!と頭に届くかのところで、刀は時の魔王の左手に止められる。

「ううおらあアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

『強イ…』

キリヤくんの髪がさらに蒼く染まる。

『神ニ、成リカケテル…!?』

「うおらあああアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

握っている刀は、左手にさらに食い込む。

『マズイ!!!!』

「わ、私たちも!!!」

「あ、ああ!!!」

マナは髪が水色に染まると、少し浮いて刀を時の魔王の背後から切りかかる。

『クソ!!!』

時の魔王はすぐさま、キリヤくんに刺さった手を抜き、私たちから一旦離れた。

『ジュウブン…実ニジュウブンだ!!!!!ウハハハハハハハハhahahahahahahaha!!!!!』

浮いた手を顔につけて笑う時の魔王は不気味の一言で表せた。

『血のオカゲで知能ヲ取り戻せタヨ…あぁ…賢いって憎たらしいナァ!!!!』

「ち、知能が取り戻せた…?」

『100年のブランクで、僕、バカになってしまウんだヨ。でも、人間の血を見ることデ久しぶりに過去の記憶が蘇ったんダヨ!』

「ふう…」

『ニシテモ…君、生命の神の契約者カ?』

時の魔王はキリヤくんを指差して言った。私はキリヤくんの方を見ると、お腹を抱えていたキリヤくんが立ち上がり、刀を両手で握り直した。お腹には空いていたはずの穴が無くなっていた。

「そうだ。俺の魔法は生命の魔法。一般人よりも力は強く、再生能力も桁違いだ。」

「そして、俺が、加速の魔法。時を加速させることができる。」

土埃の中からは、刀を光らせたリョウさんが血気に時の魔王に迫る。

『なんだオメェ?』

「時の魔王。お前は俺ら、時巻家が封印させてもらう!!!!」

リョウさんは少し間合いを取り、刀を構える。

『加速の魔法!!!!』

リョウさんは髪を再び、碧に染まらせると、時を加速させて、時の魔王の反応できない速度で、頭向かって一直線に突き刺そうとした。

しかし、あとちょっとのところで、時の魔王の手に止められた。

『残念な奴ダナァ!!!!!!!』

「俺は、自分を信じて、魔法を使ったんじゃない。」

私達は、移動を加速させて、時の魔王に刃を向ける。

「俺は仲間を信じて魔法を使ったんだ。」

「加速は早いな!!!時速80キロは出てるぞ!!!」

「「「「うおおおおおオオオオオ!!!!!!!」」」」

狙うは頭!!!!!!


『本当に…残念な奴だなぁ!!!!!!』

クロノワールド・ホイヘンス。


「うわ!!!」

気づくと、私達の振っていた刀は空を切っていた。

『俺が時を操レないとデも思っていたのカ?』

「まさか…」

『試シに時を止めてミタ。どうだ?全員をミナゴロシにしても良かったんダゾ?』

口も無く、一つしかない目では表情はわからないが、声色的に激怒している。

「じゃあ、今使えばいいじゃないか…」

息を切らしながらも、リョウさんは挑発をするが、なにも起きない。

「なにもしてこないということは、インターバルが必要なのだな?それも、回避するしかできない位までに、体力の疲弊する技。そういうことだろ?」

『チ。バレたカ。』

「同じ、時を操る者同士、気が合いそうだな!!!!」

『ウルサイゾ!!!!』

クロノワールド!!!!!


「加速の魔法」

光の速度まで到達させれば、時を止められるんだぜ?

『クソが!!!!!』

「逃さねえ!!!』


今、何か、一瞬止まったような…?

「みんな!行きましょう!!!今、時の魔王は疲弊しています!!!!」

「え、あ、うん!!!!」

私は両手で刀を握り直した。

『クソ!!!!』

「私が行く!!!」

そう言って時の魔王に向かったのは、髪が水色に染まったミナだった。

ミナは上から時の魔王の頭に向かって、刀を振り下ろすが、時の魔王は左手で、止める。

『この小娘ガ!!!!』

そこにすかさず、キリヤくんが斜め下から、斬りかかるが、今度は左手で止められる。

『ガキイイイイイ!!!!!!!』

「終わりだあああああああ!!!!!」

私とリョウさんは右と左に分けて、両方から刃を走らせる。


『こ、コでは終わらセン!!!!!!!!!』

クロノワールド・ジェラルド・ジェンタ!!!!!!!!


時の魔王が一瞬にして、消える。

またもや私の刀は空を斬った。

そして、私は信じられない物を目にした。

「う、浮いている!?」

私が目にしたものとは、さっきまで足がついていた地面が無くなっている。

「ど、どういうこと!?」

『ふふふ…』

突如として、その声は頭の中に響くように聞こえた。

『ハハハハハハハハハハハハハハはははハハハハハhahahahahahaha!!!!!!思い出したぞ!!!!この感覚!!!実に1300年以来だ!!!』

「な、なにこれ!?」

『教えてやろう。これは私の最終奥義。時の監獄だ!!!!』

「と、時の監獄?」

『この技は君を永遠に閉じ込める奥義だ!!まだ不完全だが、貴様を閉じ込めるには丁度いい!!!それじゃあ、永遠にそこで、彷徨ってろ!!!』

「おい!!待て!!!」

しばらくすると、その声はどこかに消えて行ってしまった。

「ど、どうやったら…」

は、早くいかないと早くいかないと早くいかないと!!!!!!!

私がそんなことを考えていると、後ろから知らない人の声がした。

「こんなところに人が来るなんて…思っても居なかったな。」

「え、えっと…どちら様って…え!?」

私が後ろを振り返ると、そこには文字通り上半身だけの男の人が居た。

「え!?こ、ここってもしかして天国!?」

「さっき、時の魔王が言っていたけど、ここは時の監獄。僕は時巻シュウ。もしかして、君、捕まったのかい?」

淡々と喋る下半身のない男性に私は少し戸惑いながらも、頷いた。

「そうか。君も僕と同じか…」

「その…あの…なんで下半身が無いのに生きているんですか?もしかして幽霊…」

男の人は少し目を広げたあとに、優しく笑う。

「あははは!!違うよ違う!僕は元々勇者で、時の魔王を封印しにきたんだけど、最後の最後で、僕は時の監獄に閉じ込められたんだ。その時に、僕は運命の魔法の力で、自分の体を全て捧げる代わりに、時の魔王を封印したんだ。でも、僕の体の半分が崩壊した時に、時の監獄の中に閉じ込められたから、時の監獄は時間の進まない世界で、時間の全てがここにあるとされている世界だから、運命による体の崩壊も無くなったし、生理的に死ぬことも無くなったんだ。」

「え、えっと…ということは亡霊みたいな感じですか…?」

「うーん…ちょっと違うかな…それよりさ、君、外に出してあげようか?」

私はここから脱出する方法を考えていたところ、シュウさんは驚くべきことを言った。

「そ、そんな簡単にできるんですか!?」

「まあ、できるっちゃできるよ。君の時の監獄はまだ、不完全みたいだしね。」

「な、なるほど…ちなみにどうやってするつもりなんですか?」

「僕の残りの体を使って外に出させる。」

「え?さっき使えないって言ってたような…」

「さっきのは、僕が完璧な監獄に閉じ込められているからであって、君に関することなら、できそうなんだよね。」

私はシュウさんに駆け寄り、「お、お願いします!!」とはっきり言った。

「う、うん…わかったよ!!」

シュウさんは目を瞑り、何かを唱え始めると、シュウさんの髪が赤く染まり出した。

しばらくすると、私の近くに、青い何かの裂け目が現れた。

「そこに入れば、脱出できると思うよ。不完全だからね。」

「あ、ありがとうございます!!!」

私がショウさんにお礼をすると、ショウさんは上半身の一番したの部分から、千切れた紙のようになって、空中へ散って行く。

「こ、これって…」

「僕の魔法で、代償として上半身全てを消すことにしたよ。」

「そ、それって要するに…」

「し!」

ショウさんはそう言いながら私の口を人差し指で抑えた。

「そ、そんな…じゃあ、私に何かできることはありませんか!?ショウさんの代わりに何か!!」

ショウさんはしばらく考え込むと、やがてある一つのことを言った。

「それじゃあ、君の母のことを…いや、妹の事を大切にしてやってください。お願いしますね______」

「い、妹って…まさか!!!!」

私はショウさんの左手を掴もうとしたが、掴んだと思った瞬間、その左手は紙吹雪のように散っていった…

「ショウさん…いや!ありがとう!!ショウさん!!!」

私は裂け目に手を入れて、吸い込まれるように入っていった。


『おかえり。女。』

「こ、これって…どういうこと!?」

石造の大部屋。壁には一つ、リョウさんの叩きつけられた跡が残っている。

そして、さっきまで、私がいた、時の魔王を追い詰めようとしていたところには、マナ、リョウさん、キリヤくんの3人の時間が止まったように静止していた。それも、石のような色に染められて。

『僕の技。クロノワールド・ジェラルド・ジェンタは生贄を1人だけ、時の監獄の中に入れることによって、自分の周りにいる人間全員の生きる時間を止めるという技なんだ。』

「つ、つまり、私を生贄にして…みんなの時間を封印させたってこと…!?」

時の魔王は少しばかり笑って『そういうことだ』と言った。

「解く方法はあるの!?」

『他の人間が触れれば、その効果を触れた人間に移すことができる。』

「じゃあ、触れればいいんだね!!!」

私は本気のダッシュで、時の魔王を避けながらリョウさんに触れようと手を伸ばした。

『甘いなあ』

次の瞬間。私は思いっきり、横方向にぶっ飛ばされる。

「ぐは!!!!!!」

壁に勢いよく激突し、私は地面に倒れる。

まずい!!!失敗した!!!受け身できなかった…!!

『弱いな…お前…その状態で、立ち上がれないなんて…お前は俺の討伐に来る人員じゃないな。』

「……ぐぅぅ!!!!!!」

『所詮は口だけか…』

時の魔王は手を上げて、助走をつけるための距離をつける。

『お前を殺せば、俺は運命に勝てる。絶対に封印されるという運命に!!!!…じゃあな!!!」

私が目をぎゅっと瞑ったとき、私は聞き覚えのある声を聞いた。

「お姉ちゃん!!!!」

私はその声に瞑っていた目を開かせられ、うつ伏せのままその声の方向を向いた。

「え…し、シズちゃん!?」

『なんだアイツ?』

シズちゃんの髪はそこから一瞬で赤く染まり、口調も変わった。

「おいマナ!!!私は今からこの3人に触れるけど…時の魔王を封印したら、私の生きる時間は動くから!!!」

「それって…どういうこと…?」

「とにかく!!!絶対に時の魔王を封印しろよ!!!!」

私は声を張りながら、時間の奪われた3人に触れ、石のように静止するシズちゃんを眺めていると、シズちゃんが触れた3人の色が鮮やかに戻っていく…

『運命の神め!!!!!』

時が戻ったマナとキリヤくんとリョウさんは目をパチクリさせた。

「し、シズ!?」

力を振り絞って、時の魔王の目の前で立って見せた。

「それは…時の魔王を封印したら…戻ります!!!早く…」

と言いかけた途端、リョウさんは瞳を碧色に染めて、時の魔王の頭目掛けて刃を振るう。

『クソが!!!!!』

時の魔王はすぐさま私たちと距離を取った。

「大丈夫ですか!?マナさん!!」

「わ、私は大丈夫…まだ…行ける!!!」

私はリョウさんの肩を借りながらもきっちりと、起立した。

『そんな体で行けるかな!!!』

「お、お前!!!」

まずい…少し目眩が…

〔……おいマナ!!!〕

目を開けると、そこには暗闇が広がっていた。私は空中に浮いていて身動きができない。

「え!?ここってもしかして…時の監獄!?また…!?」

〔違う!!ここは私の空間だ!!手早くすませるぞ!!〕

「え!?だ、誰!?」

〔私は運命の神。シズに宿っていた神だ!!〕

「う、運命の神!?ここはどこなの!?」

〔ここは私の空間だ!!お前は少し前に時巻会得魔法結晶に触れ、魔法を会得している!!〕

「う、薄々気づいてはいたけど…やっぱそうなんだ…」

〔お前は今、流れ星の魔法を使えるんだ!!〕

「な、流れ星?なにそれ…」

〔3回願いを唱えることによって、大事な物を失う代わりに運命を操作できる!!しかし、現実的に無理なことは無理だが…〕

「そ、そんな…大事な物って…」

〔その代わりに強大な引力を惹きつけることができる!!流れ星の魔法で、時の魔王を封印しろ!!〕

「そ、そんなこと言われても…できるかどうか…」

〔シズが危ないんだ!!!頼む!!!〕

「…わかった。私、時の魔王を封印してくる!!!」

そして、気づいた時には、私はリョウさんの肩を借りずに立っていた。

目の前には、空中から時の魔王を襲いかかるマナと、キリヤくんの捨て身の攻撃の連発。そして、高速で刀を振るうリョウさんの激しい戦闘が行われていた。

それも、隙を作ったら一発で終わりって位まで、お互いに切羽詰まった状況だ。

『クソがよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!』

時の魔王は3人との戦いに2つの手では苦戦を強いられていたようだ。

「今だ!!!リョウさん!!」

リョウさんはあともう少しで、時の魔王に触れるという所で、牙を剥く。

「いけえええええええええええ!!!!!!!!」

そして、突然、リョウさんは刀を斜め上に。

時の魔王の頭に向かって、弧を描いて、素早く、音もなく、斬りかかった。

『クロノワールド・ホイヘンス!!!』

次の瞬間。私が、気づいた頃には、リョウさんは私の後ろの方にある壁に思いっきりぶつかった。

「リョウ!!!」

『次はお前だ!!!!』

その次に、心配をしていたキリヤくんが時の魔王によって殴られ、10mほど遠くに吹っ飛ばされた。

『虫のように小賢しい小娘め!!!俺に敵うと思ったか!?』

次に時の魔王が狙ったのはミナだ。

「ミナ!!!!!!」

時の魔王は右手を碧色に輝かせて、ミナに向かってミサイルのように発射する。

ミナは体を一瞬のうちに捻って、時の魔王の右手をギリギリの所でかわすと、力を使い切ったように地面に落ちる。

「あ、危なかった!!!」

『これだけで済むと思うなよ!!!』

時の魔王は続いて左手を碧色に輝かせて、ミナに向かって、撃った。

「危ない!!!!」

私がそう言うと、ミナは目の前にまで迫ってきた左手を見つめることしかできなかった。

でも、そこに血だらけのリョウさんがミナを押しのけて、左手の進行方向に割り入る。

「さようなら。」

そう、いいながら微笑むと、目元に涙を溜めたリョウさんは左手が腹部に刺さり、緑色の光に包まれて、灰色の砂となった。

「え」

ミナはその場に倒れ込み、砂の上にヒラリと乗った、リョウさんが着ていた服を見つめる。

『ハハハ!!!!!面倒なやつを1人文字通りの塵と化してやったぞ!!!』

「リョウさん…!!!!!」

「た、立て!!!」

そう言ったのはキリヤくんだった。

『まだ生きていたのか…まあ、お前には完全に目覚めた俺には勝てん。』

「そう言っても、リョウの死を無駄にするわけにはいかない!!!」

そうだ。なにやってんだ私は!!!!

こんな所で突っ立て!!!!

さっきの3人と時の魔王との激戦で、怯んだばかりに…リョウさんが…!!!!!

刀を…刀をまず握らなければ!!!!

「リョウ…これ使わせてもらうぜ!!!!」

キリヤくんは、リョウさんの片身の刀を握ると、時の魔王に向かって投げた。

時の魔王はスラリと避けると、刀は壁に刺さる。

「マナさん!それを!!!」

私は涙ながら、その壁に刺さった刀を両手で握った。

「3対1だ!!!」

今こそ!!私の力を!!!!

時の魔王を封印する。時の魔王を封印する。時の魔王を封印する!!!!

ヒラリと舞う私の髪が赤色に染まっていく…

どうやら、魔法の効果が発揮するらしい。

「ま、マナ!!それって…!!!!」

「行くよ!!!!!」

私は刀の刃を横に向けて、勢いよく走り出す。

「これで決める!!!!」

キリヤくんも低い姿勢をとり、足に溜めた力を一気に放出して、時の魔王に急接近し、刀を真上から振り下ろす。

『右手!!!!』

キリヤくんは後ろから飛んでくる右手に背中を貫かれるが、生きる力の全てをもって、刀を振り下ろした。

「お前は絶対に封印する!!!!!」

時の魔王は右手だけで、刀を止める。

『クロノワールド・フィリップデュフォー!!!​​​​​​​​​​​​​​​​​​』

時の神は再び、右手を碧色に光らせる。その途端、刀は砂のようになって、地面に向かって落ち始める。

そして、時の魔王の右手は碧色に光ったまま、キリヤくんの頭に向かって迫った。

そして、ある事を察したキリヤくんはニッコリと笑った。

「あとは任せるぞ!!!ミナマナ!!!!」

その言葉を最後に、キリヤくんも砂へと還る。

私は震えた口を食いしばりながらも、刀を強く握って突進する。

だがしかし、時の魔王は私を蠅を手で払うかのように、返ってきた左手で、数m飛ばす。

私は刀を離してしまい、刀はそのまま地面に突き刺さった。

「マナ!!!」

『これで最後だ。女!!!』

部屋には二つの人間の砂の溜まり場と、石像のように静止したシズちゃん。

惨敗を意味するように無惨なこの部屋は最低の墓場だ。

『これで俺は勇者の運命から打ち勝つことができる!!』

時の魔王は自身の勝利を祝うかのように、両手に碧色の光を纏う。

「マナ!!!」

ミナは、力尽きたのか、さっきからほとんど動けていない。

『それじゃあな!女ァ!!!!!』

こんな所で…!!!!

2人の死を無駄なままで終わらせるわけにもいかないのに…!!!!!!

クソオ……………

『死ねぇ!!!!クロノワールド・フィリップデュフォー!!!!!!!!』

「やめろおおおおお!!!!!!!!!!!!」

その言葉と共に、私の前に飛んできたのは、翼の生えたように髪を水色に染めたミナだった。

ミナは飛んできた時の魔王の手を両方、刀で斬る。

でも、それでも、衝撃は抑えられたものの、碧色に光った右手の一部が、ミナに触れる。

ミナはその場に倒れた。

「み、ミナ…大丈夫…?」

ミナは明らかに疲弊していて、瞼の閉じる寸前だった。

「マナが生きていて…良かったよ…」

やだ。1人にしないで…

「待って、行かないでよ…」

そんな私の言葉を無視して、ミナは自分の言葉を続ける。

「マナは…絶対行けるよ…ミナは多分…ここでって時に本気を出せる…」

私はミナの左手に涙を零す。

「そんなことないよ…!!わだじ…わだじ…!!!!」

マナは私の頬を、涙で濡れた左手で、そっと撫でる。

「頑張って…あなたなら行ける…」

そう言いながらミナは私の目から溢れ出す涙を左手で拭う。

「私の代わりに…世界を…救って…」

弱々しくも、頬をミナは撫でる。

「私の…勇者さん…」

ミナはその言葉を言うと、左手の力が抜け、その左手が砂になる。

私はしばらくそのミナだった物を見つめた後に、ミナが最後まで使っていた刀を握る。

私は両手で涙を拭い、目の前にある、砂と、ミナの着ていた服を見つめた後、立ち上がり時の魔王へ向き直した。

『どうだ?仲間が全員死んだ気分は?』

私は両手で刀を強く握り、体の正中線に沿って刀を立てた。

「私は、時巻家長女の時巻真奈!!!今から時の魔王を封印する!!!」

私は赤く染まった髪を横目に、真正面に進む。

『馬鹿め!!!俺は死なない限り、体のどんな所でも再生する!!!クロノワールド・フィリップデュフォー!!!!!』

時の魔王は体の中から新しく手を生成させると、碧色に染まらせて、まずは右手を撃ち出した。

私はその右手を体ごと回りながら、かわす。

『もう一発!!!!』

今度は左手を碧色に染まらせて撃ち出したが、その手は私の目の前に来る前に、上から落ちてきた、レンガにぶつかって、私の横を素通りするように起動をずらした。

『なんだと!?こ、これが運命なのか…!?』

私は斜め上から、助走をつけて刀を振り下ろすが、次に新しく生成された右手によって止められる。

「絶対にいいいいいいいいい!!!!!!!敵をううううううううううううつ!!!!!!!」

またさらに、刀を強く握り、右手に刀を食い込ませる。

『クソオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』

「おらあアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

私は力一杯に刀に力を乗せ、右手を真っ二つに切断すると、その勢いで、時の魔王の頭を真っ二つに切断した。

か、勝った…!!!!!!!

『クソがアアアアアアアアアアアア!!!!!相打ちだァァァァァァァァァ!!!!!!』

私が油断していると、時の魔王は真っ二つに斬ったはずの手を再生させて、左手を生成する。

『これで永遠に閉じ込められてろ!!!!​クロノワールド・ジェラルド・ジェンタ!!!!!!!』

時の魔王は両手を碧色に光らせると、私をまた、あの世界へ放り出した。

「ここって…時の監獄…」

浮遊間のある時の監獄での浮いた感覚は、多分10分ほど前のはずなのに、等の昔にあったことのように感じさせる。

「うう……ミナぁ…」

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