第6話

「シズちゃん。寝ました?」

「もうぐっすりです。」

一つのライトしか照らされていないリビング。

洋式なのか和式なのか分からない部屋で私は昨日言っていた、お母さんの話を聞くところだった。

「それじゃあ、お母さん…その…魔法のこととか…教えてくれる?」

するとお母さんは次第に暗い顔になるが、言葉を一つ一つ口から放っていく。

「どこから話せばいいのかしら……………

あれは、雨の日だったと思う。




今から1300年前。

私は今で言う、京都のとある家に生まれました。

もちろんその頃は奈良時代の初めで、京都は元、日本の都でもあったため栄えてました。

そして私の家はその京都の中でも有数の富豪の家でした。それこそが今の時巻家で、その頃には時の魔王の存在が日本中に知れ渡っており、私たちはいろいろな方面の人たちから優遇されていました。

何一つ不自由のない時巻家。それが普通だったのですが、私が生まれて来た時は違いました。

「やめて」そんな言葉を聞いてくれないくらい、残虐。

時の魔王は世界を消すことのできる存在です。

それを封印するには必死に武術やら、勉学やら、いろいろなものを叩き込まなければいけない。

そのため、私は今で言う虐待のようなことを毎日されました。間違えれば、血が流れるのは確実で。

正解を答えても褒められないで。

私は奴隷よりも酷い扱いを受けていたのかもしれません。


そんな時の心の支えが、唯一の兄でした。


私は兄と一緒に日々の厳しい訓練を乗り越え、ついに100年に一度の時の魔王が封印から解ける日になりました。

私はその日、初めて魔法を会得できる水晶。「時巻会得魔法結晶」によって魔法を手に入れました。その瞬間。私は髪の色が青く変色しました。

そして、ついに時の魔王と対面し、私は時の魔王と決闘することとなりました。

時の魔王はとても強く、私は何度も腹を貫かれ、頭を潰され、四肢を千切られましたが、数秒後には完治していてこの時に私の魔法が不老不死だと分かったんです。

ですが、その能力を使っても私は兄の時の魔王に刃向かうことができず、時の魔王との決闘の結果は兄と時の魔王の相討ちという結果で終わりました。

兄は私の事を一度だけ撫でて、この世を去りました。

その時、私は英雄になったはずだったんです。でも、何かが欠けていて、何かが足りなくて、英雄として崇められて、本当に本当に不自由なく生活ができたはずなんです。でも、それでも、心の中心にあった何かがなくなっていて、私は生きることを諦めようとしました。

首を切って死ぬ。そんなことは1000年も前となれば容易く、私は刀を持って首を切りました。

しかし、私の魔法が死ぬことを拒絶したかのように、切った首は生々しく生きて、死ぬことができなかったんです。

でも、そんな絶望の淵にいた私に手を差し出してくれた男性がいました。それは、「阿太知久野麻呂」という男性で、私は彼と恋に落ちました。

彼は誰に対しても優しく、それに加えて私の事を「英雄」として見るんじゃなくて、同じ人間として見てくれる。

そして、私の事を好きと言ってくれた彼に、私は恋をしました。でも、私が不老不死な事から、彼は直ぐに寿命によってあの世へ行ってしまい、今度こそ、私は1人になりました。でも、私は彼が生前に言っていた事を思い出したんです。

彼が言っていたこと。それは時巻家は優処正しい家だから、見守っていて欲しいと。私は、虐待されていたこともあって、時巻家は好きではありませんでした。でも、彼が愛したこの家系を守ってみたい。なんで、彼が愛したのか。知ってみたい。

ふとそう思ったんです。なので、私は、1300年間。ずっと時巻家を見守っていました。そして、私はこれまでに12回。12回も時の魔王の封印をみていました。

「そして、私はいくつかの共通点を見つけした。」

母はさらに暗い顔になった。

何かを察しながらも「そ、その共通点って…なんですか?」とリョウさんは問う。

「時の魔王と対峙することになる代。その代で生まれた子供の中の一番最初に生まれた子供が必ず時の魔王を封印するということです。」

「ん?ど、どういことっすか?」

「要するにその代で生まれた兄弟の中で一番上の子が必ず時の魔王を封印するということです。運命で、そう決まっているのです」

しばらく沈黙が続く。

「ちょ、ちょっと待ってください!その、時巻家の長男。もとい、時巻昴はす、すでに…」

「すでに?」

「…死んでいます」

すると、母は信じられないことを言った。

「時巻昴さんでしたよね。その上に兄弟がいることは知らないんですか?」

「え。」

兄弟が居る?ど、どういうことだろう…

「昴さんの上に兄弟が居るということです。」

「え」

「そ、それはど、どういうことですか!?!?」

リョウさんは机を叩いて前のめりになった。

「例えば、時の魔王を復活させ、時の魔王の力を使って世界を0に戻すことが目的のリロック団。そのリロック団の一番の敵は、時の魔王を再び封印させる事を目的とした時巻家ですよね。でも、時巻家の長男、長女が居なくなれば、封印される確率はなくなりますよね?だって、いっつも時の魔王を封印させるのは長男、長女なんですから。」

「そ、それはそうですけど…じゃあなんで、僕たちから離すんですか!?」

「だって、自分の子供の命が狙われているのに、自分たちの手元に置いておいたらいつかは必ず殺されてしまう。これが一番ベストだったんだと思いますよ。」

「お、恐ろしく筋が通ってますね…でも、なんでそこまで詳しいんですか?」

「少し前のことなんですが、こんなことがあったんです…」


あれは雨の日。


その日は当時に雇っていたメイドがお休みで、私の家には私1人だけでした。

外では雨がひどく降っており、梅雨の時期を感じさせる天気でした。

そんな中、玄関の方でインターホンがなり、玄関の扉を開けると、そこには2人の男女が立っており、そのうちの女の人の手元には、赤ん坊と思わしき物がありました。

「ここが、時巻家の親戚の足立家であってますか?」

外では雨が強く降っていました。


「私の名前は時巻春菜。(トキマキハルナ)そしてこっちが時巻雄介(トキマキユウスケ)です。」

「え、貴方…時巻家の人ですか!?」

「はい。実はこの足立家というところに1300年も生きている人がいるという事を私の母から聞いたのですが…」

「多分それは私の事ですかね…」

「あ、貴方が!?そ、それじゃあ、折り入ってお願いがあるのですが…」

ハルナさんの言ったお願いこそが、一番最初に生まれた子を育てて欲しいというお願いだった。

私はそのお願いを承諾し、今まで育ててきた。






「そ、それって…もしかして…」

「…マナ。貴方は私の子じゃないわ…」

そ、そんな…

「貴方は時巻家の長女…時巻真奈。あなたこそ、時の魔王を封印することのできる英雄…勇者よ…」


「ゆ、勇者って…」


「時巻家に一番最初に生まれ、時の魔王の封印することのできる子供を勇者。そう呼ぶのよ。」


わ、私が…


「と、ということは、マナさんって僕達の姉!?」

「そういうことになるわ…」

私は言葉を失い、一言も喋れなくなる。

「じゃあ、本当にお姉ちゃんってことなんすか!?」

衝撃だったが、今はそんなことに声をあげている暇もなく、何故か私は口が開かない。

「あ、え、う、嘘…」

「いつか離れてしまう…そんなことが怖くて…いつまでも話せなかった…ごめんね」

「え、あ、い、いや、いいよ…」


沈黙が続くと、いきなりリビングの襖が開いた。

「うーん…」

襖から出てきたのは、目を擦って、眠そうにしているシズちゃんだった。

「お、はよぉー」

「し、シズちゃん…」

私はポツリと呟くと、シズちゃんは私の方を見て「お姉ちゃんどうしたの?」と言った。

そ、そういえば…

「ねえ、シズちゃん…ミナの事を呼ぶときはさ、なんて言うの?」

「シズちゃんが私のことを呼ぶときはいつもミナちゃんって呼ぶよな?」

「うん!そうだよ!」

じゃあ、なんで…

「じゃあなんで、私のことはお姉ちゃんって言うの?」

急な私からの問いかけにキョトンとする反面、少し焦っているような顔でシズちゃんは「え?」と言った。

「そ、それは…」

何故か急にシズちゃんが口籠った。

すると、急にシズちゃんは小声で、何かを喋り出すが、よく聞こえずに私は耳をシズちゃんに近づける。

「だ、だって…わかんなかったもん…え?自分が出るって…あ、待って!!!」

と言ったところで、シズちゃんはピタリと声が止まった。

「し、シズちゃん?」

と私が応答を確認したところで、急にシズちゃんの髪が上から赤く染まり始める。

「こ、これって!!!」

シズちゃんの髪はさっきまでの白い髪とは違い、キャンバスの色が赤く染まるように全てが赤色で塗り尽くされた。

「こんばんは。マナくん」

正面を向いたシズちゃんは瞳の色が完全に赤色になっていて、何歳か大人になったように感じさせる喋りだった。

「あ、あなた誰?」

その一遍変わった様子に私は驚きの言葉を放った。

「私は運命の神だ。ずっと話したかったぞ。マナくん。」

「う、運命の神…?」

私はシズちゃんの体と声で少しギャップを感じてしまったが、もう、とっくのうちに日常は捨ててるんだ。今は信じるしかない…

「そ、その…シズちゃんは?」

「シズは今、私のこの体の中で眠ってもらっている。」

すると、キリヤくんがここで静かに言う。

「そ、それってどう言う状態なんだ!?」

すると、運命の神は自分の手を見る。

「これは今、私が、この体を借りている状態になっている。この体の中ではちゃんとシズは生きているから安心しろ。」

「よ、よかった…」というとキリヤくんは胸を撫で下ろす。

「そ、その、運命の神が、なんで私なんかと話したいの?」

「このシズについて、話しておきたいことがあるのだ。」

私は首を傾げる。

「シズちゃんについて?」

「ああ。シズを、是非とも時の魔王との決闘に連れて行かせてくれないか?」

「それはダメだ!!!」

ここで間髪入れずに横槍を入れてきたのは、顔色の少し悪いキリヤくんだ。

「何故?」

「き、危険だからだ!!時の魔王に殺されてしまっては、俺が…」

運命の髪は、「はぁ」と息をわざとらしく吐いた。

「そこは安心しろ。運命の神がついてやる。私は都合の良い運命を創ることができるからな。私だってこの神を宿らせることのできる器を離したくない。」

「し、シズは神を宿らせる器?な、何を言っているんですか?」

リョウさんが困惑したような顔で、運命の神に聞く。

「シズは何かの神を体に宿らせることのできる体質なんだ。私もこんな貴重な人材を失うわけにもいかないからな。」

「し、シズってそういう体質なんですか!?」

「ああそうだ。その体質のせいで、人間の体に憑依しようと、魔物が夜になると襲ってくる。」

「た、体質のせいで…」

「まあ、ということで、よろしくだ。」

シズちゃんは倒れそうになったが、そこをキリヤさんがとっさに動き、キリヤさんはシズちゃん力の抜けた体を支える。

「あぶなっ!!」

すると、徐々にシズちゃんはいつも通りの白髪に戻り始めた。

「ど、どうする?シズは流石に連れて行けんぞ…」

すると、眠っていたシズちゃんがゆっくりと瞼を開けた。

「ど、どうだった?」

「あ、し、シズちゃん…」

「あの子ね…実はすごい力を持ってて、私、お姉ちゃんと最初に会った時に、お姉ちゃんがなんなのか…あの子のおかげで、わかったの…」

もしかして、シズちゃんは全てを知っていたから最初に出会った時、泣いていたのか…?

「そ、そうなんだね。」

「うん!」

すると、シズちゃんを抱えていたキリヤくんがシズちゃんを抱えたまま立ち上がる。

「それじゃあ、シズ寝るぞ。」

「わかった。おやすみ〜」

と言いながら、シズちゃんとキリヤくんはリビングの奥へと向かった。


「け、結局どうするんですか…?」

「シズを連れて行くわけにもいかないんですよね…かと言って、何故、運命の神とやらもシズを連れていかなければいけないのか…」

運命の神…それって要するに、運命に干渉する神ってことなんだろうか…だとしたら…

「もしかして、シズちゃんが冥界に行かないと、時の魔王を封印できなくなるかもしれないんですかね…?運命の神ってことはこれからの運命とか分かったりするかもしれないですし…」

「シズが居ないと時の魔王が封印できない?そんなバカなことがありますかね…」

でも、実際にシズちゃんと初めて出会った時に、運命の神が何も言わなかったら、私が時巻家の長女だったことも、大阪に来る事も、時の魔王がなんなのかも、まるで知らなかったのかもしれない…

いや、運命ってそういう物ではない気がする…

さっき、運命の神は、都合の良い運命を創ることができる。と言っていた。運命はもしかしたら、最初から決まっているのかもしれない。

「もしかしてだが、運命の神って都合の良い運命に無理矢理する魔法とかなんじゃないですか?」

「ま、まあ、本人もそう言っていたが…」

「だったらシズちゃんを無傷の状態のままにするっていう都合の良い運命も創り出せるんじゃないですか?」

「だ、だが、シズちゃんのことをあいつが心配するのか?」

「でも、実際にシズの体質を狙って魔物が襲ってくるのであれば、シズがそうそう居ない体質ってのはまあ、信憑性があるのだがな…」

でも、やっぱり…

「ちょっと良いかしら?」

急に横から手を挙げて抗議する母の姿があった。

「私、思うんだけど…どんな理由があってもたった1人の少女は戦場に行かせない方が良いと思うわ…どんな理由があっても。」

少しだけ間合いが空いた後、リョウさんは安心したかのように言った。

「まあ、そうですよね。シズはまだ、子供ですからね。」

「だな!」


時刻は12時51分。

外には人気がなく、道端の電灯が暗闇の中で光っている。

私はその、外が見える窓のついた廊下でお母さんと私だけだった。

私はお母さんが自室に向かおうとしているところだった。

「それじゃあ…おやすみ」

「うん。おやすみ」

お母さんはそのことを言うと、廊下の向こうにある、自室に向かっていく。

私はいつの間にか、走り出して、お母さんを後ろから抱きしめていた。

「私は、お母さんの子供だよ。心配しなくても、大丈夫だからね。」

「・・・」

「じゃ」

そのことをいうと、私は自分の自室に向かって大急ぎで走った。赤くなっていた頬を隠して。

その日の夜の廊下では、しばらく誰かが泣いている声も聞こえた。

「さてと。行きますか」


「私の家の地下にこんなところがあったなんて…知らなかったな…」

薄暗い部屋の中、湿った空気を吸いながらも、私達は冥界の結晶に手を伸ばした。

「それじゃあ、行ってきます。」

私は地下室の入り口に立って、背中に光を浴びているお母さんに言った。

「気をつけてね…ぜ、絶対に死なないでね!!!!」

涙をたっぷりと垂らし、手で涙を拭うお母さんに私は抱きつく。

「大丈夫だから。心配しないで…」

私は手を離し、後ろに下がる。

「それじゃあ、シズをお願いします。」

リョウさんが静かにそのことを言うと私

「それじゃあマナ、行くぞ。開門。」

ミナがその言葉を言うと、ミナの握っていた冥界の結晶が蒼く輝き始める。

やがて冥界の結晶は前方に大きな光の渦を作り出した。

「じゃあ、行ってきます!!」

私達は光の渦の渦の中に入り込んだ。


光の渦を抜けると、そこは地下室となんら変わりない暗さで、どんよりとした空気が広がり、空は雲が一面に敷き詰められ、昼のようだが、夜のように薄暗かった。

そして、周りには、崖のようになっており、山の頂点のところに、ぽつりと大きな城が立っており、本当に魔王城のような見た目をしていた。

「こ、ここが冥界…」

「な、なんか、和風というよりも洋風に近いんだな…」

「多分、あそこが時の魔王がいるところっすよね?」

「まあ、多分そうなんだろうね…」

「それじゃあ、歩を進めしょう」

と、私たちが魔王城へ向かおうとした時だった。

『こんばんは。お待ちしていました。』

急に後ろから声がしたような気がした。

「え!?」

私達は後ろを振り向くと、いかにも人間ではない異型の形をした人形の生物?が立っていた。

『私は案内人の黒薔薇です。』

人形のその生物は頭以外は豪邸の執事のように、タキシードを着込んでいたが、頭だけは黒いバラが飾ってあり、一見見ると人間のような頭がないことは確かだった。

「え、えっとこんばんは」

『主人様に何かの御用ですか?』

私達は目を合わせた後に、礼儀正しくお辞儀をしている黒薔薇に今回の用件である、時の魔王について聞いた。

『そうですか。時の魔王の封印に…よくぞいらっしゃいました。それではこちらへどうぞ。』

と言いながら、黒薔薇は魔王城らしき場所に向かって歩き出した。

『みなさまついて来てください。』

「ついていくしかないみたいだな…」


黒薔薇はストストと前を歩く。

そこから距離を取りながらも私たちはついて行く。

すると、あるはずのない口から言葉が飛んできた。

『本当は良い人なのです。主人様は。』

「え、えっと…本当ってどういうことですか?」

『時の神こと、主人様は、大昔に暴れていた荒くれ者を封印するための器として、自らが買って出ました。ですが…』

黒薔薇は1秒置いてから、話を続けた。

『ただ、時の魔王が暴走をするようになってからはすっかり魔物も支配下の中から出て行ってしまって…』

「支配下?どういうことですか?」

『主人様の支配していた国から魔物が1匹残らず他の国に行ってしまって…そのおかげで、ここら辺には魔物1匹もいません…』

どうやら、冥界では、神と呼ばれる種族が魔物を支配しているようだが、時の神は時の魔王のせいで、支配していた魔物が次々に自分の領土から出て行ってしまったらしく、ここの地域には黒薔薇と時の神しか居ないようだ。

『そんな事もあり、主人様は時の魔王に困り果てているんです。』

「そうなんですね…」


私達は黒薔薇との喋りに夢中になってしまい、いつの間にか城の門の付近まで近づいていることに気がつかなかった。

『ですが、今私たちにできることはせいぜい時の魔王を再封印すること。それでは、今回もお願いします』

そう言いながら、黒薔薇は白い手袋の上から指をパッチン!とならし、門を開く。

『それでは、行きましょう。』

私達は背中に背負っていた細長い、黒い布で包まれた棒状の物を下ろした。

細長い黒の布からは、黒く光る刀が出てきた。

「昨日の内に教えたこと。忘れないでくださいね」

「うん…わ、分かった…」

実は昨日、この日のために刀や刃物の扱いを教わったのだ。

「確か、持つときは刀の鍔を上に。先を下に向けて、持つ。」

「そうです!」

私は刀を握ると門をくぐった。

「にしても本当にデカイな。この城は」

『大昔に建てて大事に使ってるだけですよ。昔はそれなりにここら辺にも魔物は居たんでね』


しばらく、城の内部を歩いていると、ついに闘技場への入り口のような大きな木製の扉が現れた。

『ここから先が主人様の部屋です。今現在は、時の魔王と化していて、気性が荒くなっているので、私はここまでしか案内できません。』

私は頭を下げた。

「案内ありがとうございました。」

『いえいえ。それじゃあ、ご主人様をお願いします。健闘を祈ります。』

私は刀の柄に手を当てる。

「えっと…抜く際には、鞘を動かすようにして刀を抜く。」

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