第4話

「マナ!!逃げるぞ!!!」

その声が私の目を覚ます。そして私は心のそこから色々な疑問が噴き出た。

「え、ここ2階だよね!?どうやって来たの!?てか、その髪と目、なんか色違うくない!?」

明らかにいつもと違うミナ。ミナは何故か、それを自覚していたのかわからないが「そのことは後にしてくれ!!」と本当に慌てた様子で答える。

「いいキックじゃん。僕のこの能力がなければ、少なくとも気絶はしていただろうね」

と、ミナの足元から、好青年のような声がする。

ミナが蹴ったはずのスイロウは全てを見切っていたかのように、足は手のひらの中にのめり込んでいた。

「クソ!!!やはり効かないか!!!」

ミナはすぐに、重力を忘れたかのように後ろへ飛び、後退する。

「翼の魔法。まあまあ厄介だけど、所詮は飛ぶだけの能力。僕の未来の魔法には敵わないよ。」

魔法??私はこんな真面目で、万事休すな時に、いきなりファンタジーを持ち出され困惑する。

「ま、魔法ってなに?」

私はミナに小声で聞く。すると、スイロウが答える。

「魔法ってのは、神々の契約の元、発生する現象でね。人間が使う事のできる異能力の一つなんだよ。魔法結晶に触れると、発現することがあって、発言する際には髪色が変わったり、瞳の色が変わったりするんだよ。」

「例外…?」

「そう。例外もある。例えば、僕みたいにずっと魔法が発動しているものもある。僕の魔法は未来の魔法。未来がずっと見えていてね。さっきの蹴りも全てが見えていたよ。」

「チートじゃねえか…!」

「そう。チートみたいな能力。だから僕は…」と言いかけると、スイロウは腰に掛けてあった拳銃に手を掛ける。

「僕はこの能力を、世界をより良くするために、世界を絶頂へと向かえさせるために力を使う。そのためには道を阻む者は排除する。」

拳銃をこちらへ向け、私は足が震え出した。

「もう一度聞くよ。冥界の結晶、出してくれ。そしたら、命までは取らない。」

「すまんな。わたしにはさっぱりだ。これしか言えない」

スイロウは拳銃を握る手を弱める。その反応に一度だけ、ため息を吐いた

が、「じゃあ、俺の道を阻む者だな。死ね」と言うと同時に拳銃を強く握りしめる。

「え」と弱気な心が漏れると同時に、お腹に腕のようなものが周り、私は浮遊感を覚える。

「う」

下を覗くと、床が後ろから前方向へと高速で移動している。

「うわああああああ!!!!!!」

「このまま階段に突っ込むぞ!!!」

ミナとほぼ同時の声で、階段を高速で下りる。その時に足音はしなかった。

「止まるぞ!!!」

急ブレーキがかかりスピードが段々と緩くなる。

「う、うえええええ!!!!!!」

私は中にあった今日の朝ごはんを戻してしまった。

「酔ったあああああ…」

「と、とりあえず玄関を!!!」

ミナは玄関をガタガタと開けようとするが、なぜか鍵が掛かって戸が開かない。

「か、鍵はどこだ!!!」

鍵を探すがなぜか、鍵を開けるための掴む所が無い。

「残念だけど、私らもそんなに甘くは無いですよ?」

「クソ!!!!」

拳銃を向けるその男の目は見えないが、ギラギラと光っていることだけはわかった。

「それじゃあ、その翼の魔法の女は要らないな。」

そういうと、拳銃を持った男は銃口をミナに向けて、引き金を引いた。

パシュン!という何か蓋が抜けるような音が恐怖心を薄めていたが、すぐ横に立っていたミナが悲鳴をあげる。

「う…ぐ!!!」

それは小さな悲鳴だった。

「マ…ナ…逃げて…」

そういうと、ミナは静かに目を瞑る。

「え…」

私は不意にその言葉と涙が溢れた。

「待って!!行かないで…!!!!」

待って!!!行かないで!!!やだ。やめて!!行かないで、行かないで!!!!!!!

私は目を瞑って、眠っているミナの片手を握る。

重力に沿って、涙は床に落ちた。

「ま、待ってよ!!!」

拳銃を持った男は次に私に向けて言う。

「それじゃあ、お嬢さん。今死ぬか、冥界の結晶の居場所を吐くか。どっちが良い?」

階段から、聞こえたその声に。もう、好青年代表でも何でもないその声に。

憎悪が走る。

「お前のせいだ!!!!!!!!!!!!!!!」

私は手を強く握り、爪が食い込んだ。その、手から拳となった物を私は、男の頬に力強く、ぶつけた。そして、男は床に倒れた。私は腹に跨いで、次々に拳をぶつける。男は両手を組んで拳を受け止めていたが、私は怒りをぶつけるように殴り続けた。

「死ねよ!!!死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ!!!!!!!!!!」

そして、男はしばらく殴られた後、私をいとも容易く後ろへと突き飛ばす。

「だっあ!!!」

「はあ…これだから人間は…まあ、いいや」

「なんで…」

「ん?」

「何で、お前らは簡単に人に武器を向けるんだよ!!!!!何で、簡単に引き金を引けるの!!!!!!教えてよ!!!!」

男は少し笑って、言った。

「別に、意味なんかないよ!!人の絶望する顔が見たいだけ。ほんと、この国の連中は本当の絶望がわかってない。だから叩きつけてやるんだよ。どうしようもない絶望をね!!!!!」

「人間のクズが!!!!」

普段からは絶対に出ない言葉。出ない言動。出すのに抵抗がある言葉。でも、今だけは自然に出てきた。こいつらの前では自然に出てしまう。

本当に

「死ねよ!!!!!!!」

私のまとめられてない髪が一斉に、赤色に染まる。

「何?君も魔法使いなのか?」

その声は私の耳には届かず、私は鬼の形相で、この拳銃を持った男に襲いかかる。

拳を頭より、後ろの方向へともっていき、そこから振り下ろす。

パアン!!!と廊下に甲高い音が伝わる。

そして男は玄関近くに倒れているミナをじろりとみる。

「そんな無駄なことしてて良いの?そこのお嬢さん、もう、死にそうだよ?」

私は踵を返し、玄関に倒れているミナへ歩み寄る。

「み、ミナ!!!!!」

私は手を取り体温を確認した。ミナの体は少しだけ体温を失っていて、今にも死んでしまいそうだ。

「馬鹿だなあ」

私の声と同時に、プシュウといった力の抜けたような音がした。これは消音器をつけた銃の銃声だ。

私の視界の下の方で、赤い液体が飛び散る。それはまるでガラスが割れるかのように飛び散る。

しばらくして、お腹あたりに今まで感じたこともないような針を貫いたような痛みが広がり、私は膝をついて、悶える。

一気に恐怖が満ち溢れる。顔が歪む。

私は必死に痛みに耐えようとするが、今まで感じたこともない痛みだ、そう簡単に受け入れられず、すぐに立つことができなかった。

「これで最後ですね。それじゃあ、さようならです。勇者様」

「ゆ、勇者様…?」

銃口が私を指す。背中を何かが走る。

スイロウは引き金に指を掛け、力を入れる。

私は目を瞑って、ミナの手を強く握った。

この時、時がゆっくり流れるように感じ、しばらくした後に、さっきと同じ、パシュンという力の抜けた、殺意のこもった音がなる。


でも、お腹の痛みより、そこから痛みが広がることはなかった。

「え?」

私は、ゆっくりと目を開けると、そこにはリョウさんの後ろ姿があった。

「マナさん、大丈夫ですか?って大丈夫なわけないですよね。今こいつ片付けますんで」

リョウさんは後ろを振り向かず、正面に立っているスイロウだけを視界に留めていた。

すぐに鉄が落ちる音がした。

「弾丸なんて鈍いもんよ」

どうやら、その鉄というのは銃弾のようだ。

「お、お前!!!!!時巻亮!!!!」

どうやら相当動揺しているらしい。スイロウは震えた声で言った。

「久しぶりじゃあないか。兄貴の時以来か?」

「まさか、帰ってくとはね…」とリョウさんが言うと玄関の戸が開き、そこからキリヤくんが現れる。

「時巻霧矢か…揃いも揃ってオールスターってわけですね…まさかこうなるなんて…」

「ミナさんが空を飛びながらバイト先に来たんですよ。家に強盗が来たって。まさか、リロック団の皆様とはね。」

キリヤくんは開き戸に寄りかかりながら言った。

「まさか…そんなことが…やはりあの時、仕留めておけばよかった…」

「ミナさんには時間稼ぎをしてもらったんですよ。僕の魔法はリョウの魔法とは違いますからね。」

キリヤくんは立ち直ってポケットに手を入れる。

「それじゃあ、とりあえずお前からだ。スイロウ。」

リョウさんは背中に担いでいた黒い袋から、細い棒のような物を出す。

中から現れた、黒い棒。刀だ。それも真剣。

そして、刀に映ったのは髪の色が碧色に変化したリョウさんの姿。

その碧は濃く、エメラルドのような色を輝かせていた。

リョウさんは鞘から刀身を引き抜く。

「まあ、そうくると思ってましたよ」

スイロウは拳銃の持ちてから弾薬を落とし、新たな弾薬を詰め、カチャリと銃をずらしてすぐに打てる状態にする。


2人の間がシンと静まる。


次の瞬間、パシュンと銃声が響く。

「見えるぞ!!!リョウの動きが!!!」

スイロウはリョウさんに向けて銃を構え、引き金を引いた。

でも、リョウさんはそのまま、スイロウの横を通り過ぎる。

そしてすぐにスイロウの両腕は床に落ち、数秒後には、上半身がポトリと落ちた。

「俺の魔法は加速の魔法。俺と俺の触れている物の時を無限に加速させられる。」

リョウさんは何もなかったかのように、スイロウの死体の上を通り過ぎて、私の方へ歩み寄った。

「大丈夫ですか?今治療しますんで。」

当然かのようにリョウさんはその言葉を放った。

でも私は、出血していたことと、スイロウが床にぶちまけた血と内臓のおかげですぐに気絶してしまう。


そして、次に目が覚めたのは暗い夜の中だった。

「またここ…」

布団を退けて、起き上がると、お腹にあったはずの傷は無くなっていた。でも、その痕跡があったかのように、お腹には傷の跡があった。

私は立って、階段を目指す。廊下には、ガラスの割れた後とミナが空を飛んでスイロウにドロップキックをかました痕跡が残っていた。

「夢じゃなかったんだ…」

私は階段を降りると、リビングから漏れ出す光を見つける。私は暗闇の中で、リビングへとつながる引き戸を開けようとすると、少しだけ、躊躇した。

でも、私はすぐに、引き戸を片手でゆっくりと開けた。


「お、起きたかマナ!」

リビングに居たのは、先ほどまで顔面蒼白だったミナとは大違いの、とても元気そうな顔をしたミナだった。

私はその彼女の笑顔を見た途端、溜まっていた物が一気に噴き出す。

私はミナの胸元に飛び込むと、涙を流しながらミナに抱きついた。

「ゔゔゔ!!!!!会えなぐなるど思っだぁぁぁぁ!!!!!」

ミナは少し驚いたかのように、瞼を広げた後、にっこりと笑って

「そうか…よしよし…!!」

と私の頭を撫でながら「よしよし」とだけ言って抱きつかせたままにしていた。


「落ち着いたか?」

「ゔん…!」

私は心が落ち着くと、リビングの中央にあるテーブルにティッシュが置かれた。

「大丈夫っすか?」

「まあ、ほんと、無事でよかったですよ…本当に」

忘れていたが、リビングにはリョウさんとキリヤくんもいたのだった。私は頭から、ボシュン!!となりそうなほどに、顔は赤く染まっているだろう。

「い、居たの!?」

「ま、まあ、ずっと最初っから…」

リョウさんは何かを察したように遠慮がちに言う。

「すごかったっすね。意外と大人でも泣く事はありますよね」

その遠慮をすぐさまキリヤくんがぶち破る。

私の心にはその鉛のような棘が、溝落ちにぶっ刺さった。

「そ、そうだね…へへへ…」

私は恥ずかしさで頭がパンパンになり、目線を下へと落とした。

そこでミナが話を切り替えるようにある話題を切り出した。

「そういえば、聞きたいことがあるんだが…」

「どうしたんですか?」

ミナは正面に向き直して、

「リロック団と、魔法の事について…教えてくれ。まだ何か隠し持ってるだろ?」

「え、どういうこと…!?」

テーブルを挟んで、向かいにいるリョウさんとキリヤくんは目を合わせ、私たちの方に向き直る。

「わかりました。正直に話しますよ。全ての事を。」


「まず、リロック団は、僕たち時巻家と対立している少人数で結成された組織です。リロック団の目的は世界を無の状態に戻して、1からやり直すという目的を持っています。魔法。魔法とは、異能力の総称です。魔法とは、冥界にいる神と契約することによって得ることのできる力です。契約の内容はさまざまで、基本的には外の世界、現世を見たいという神が行う契りなんです。そして、僕の魔法は加速の魔法。僕自身と、僕が触れている物の所要している時を加速させる。本気になれば光と同じ速度で歩けます。そんで以って、こいつキリヤの魔法は生命の魔法。大量のエネルギーと大量の筋力を常時持ち合わせていて、車一台を片手で押すことは余裕らしいです。僕たち、時巻家の一族は時の魔王を封印をするための一族で、文献にも記録がないほど前から封印を続けていました。そして、地下室はそういう文献とかがたくさんあって、その中に時巻会得魔法結晶という水晶があるんですが、それに触れると、時巻家は100%、一般人は10%の確率で魔法を得ることができます。まさか、ミナさんがその10%の中に入るとは…」

長い文章を一斉に出したことによってリョウさんは一度、空気を全部出してから、もう一度、深呼吸をする。

「え?え?え?ということは、時巻家って人たちは世界を救うための一族ってこと??」

「まあ、そういうことになるっすよね。」

「そして、冥界の結晶も、僕たち、時巻家の一族しか、開門できません。もし、リロック団の連中にそのことが知れ渡ってしまったら、僕は良いとしても、シズがどうなるか…」

「昨日は、もし私たちがリロック団だった事を恐れて、冥界の結晶の居場所を昨日は教えなかったのか…」

リョウさんは頭を縦に振った。

「でも、今日、スイロウというリロック団のボスを殺しました。残党は残っていますが、多分、悪あがきもしないでしょう。」

リョウさんは目を薄めて少し微笑みながら言う。

「シズのこともあります。でも、無理にとはいません。ある事をお願いしたいのですが、いいですか?」

カタコトな日本語でリョウさんはその話を言った。

「時の魔王の暴走を一緒に止めて貰いたいのです。ここまで魔法の事について話しました。それにミナさんの覚えていたことが時の魔王ということは、何かしら因縁というのはあると思います。なので、少しでも考えていただけないでしょうか!?」

真剣な目つきで、リョウさんは身を乗り出して、言った。

私たちはお互いの目を見つめあった。

「ほ、報酬はいくらでも差し上げます!戦力が欲しいのです。僕の兄、時巻昴が死んでしまった故、戦力が足りないのです…」

「リョウ…」

私はテーブルの板を見つめているリョウさんにある事を伺う。

「その…2人だけでは戦力が足りないってどう言う事ですか?それに、暴走って…暴れ出すならわかるんですけど、暴走って…我を失ったみたいな言い方じゃないですか」

リョウさんは顔を上げると、落ち着きを取り戻して言った。

「そうですね…僕の魔法、加速の魔法は、時を操る魔法です。契約した神は、時の神。時の神は僕に契約をする際に、条件としてこう言いました。「僕の中にいる時の魔王を封印してほしい。」と」

「ど、どういうことだ??」

「ある言い伝えに、こういうのがあります。「昔々、10000年も前の話。時の魔王という、神の世界を荒らす者が居た。神たちは困り果てて、何か解決策を考えた。すると、私の中に封印してはどうでしょう?と、手を挙げ、名乗り出る者が居た。それは、暴れ者の実の兄だった。兄は時の魔法を使い、荒くれ者を無限の時の中に封印した。だがしかし、その封印された荒くれ者は、無限の時の中で、時を操れるようになった。そのため、100年に一度だけ、無限の時の中から、目覚めることが出来たのである。」と、まぁ、こんな感じで時の魔王は昔の荒くれ者だったんです。でも、それを時の神が封印したため、時の魔王が誕生したのです。」

ふーんと私が、理解したように言うと隣では、ミナは首をかしげたような顔をしていた。

「その、ちょっといいか?」

「あ、はい。なんでしょうか?」

「これ、話が切れ悪くないか?」

「気づきましたか…実はこの言い伝えが書いてあった書物。奈良時代に書かれたと推測されたいるのですが、ボロボロすぎて、途中のページが切られていたのです。その書物が地下にあるのです。でも、途中千切られていて、何が書いてあったのか、わかってないのです…」

「そうなんですか!?じゃあ、もしかしたら、その途切れている部分に何か謎があるのかもしれないんですか?」

「そういうことなんですよね」

「なるほど…」

私は体を引き、相槌を打った。

「それで、時の魔王を封印するという話は…」

「うーん…」

私は必死に頭を抱えて考え込む。

確かに、今死ぬとしても、別に失うものは何もない。

でも…


「ごめんなさい…少し考える時間を与えてもらってもいいですか…?」

私は目を瞑りながら、言った。

「わ、わかりました…まあ、考える時間は必要ですよね…仕方ないです!!」

リョウさんは一回落ち込んだかのように見えたが、すぐに明るい声に戻した。

「あ、別に無理しなくてもいいですからね!!全然、大丈夫なんで!!」

リョウさんはいい人だから、今、嘘をついているということがすぐにわかった。でも、多分だけど私はこの人たちに協力すると思う。ある事を済ませたら…

ゴーンと重たい鐘の音が部屋に響き渡った。時刻はどうやら12時のようだった。まあ、こんな時間だからこそ、シズちゃんの居ない時間だからこそ、この話ができたのか。

「そういえば、お腹、大丈夫でしたか?僕の魔法で、無理矢理繋げましたけど…」

心配そうな顔で、リョウさんが私を覗き込んだ。

「あ、はい。大丈夫みたいです!痛みも全然ないですし…」

「それはよかったです!!僕の魔法で、自然治癒の速度を一時的に上げたんですけど…普通だったら、エネルギーを使い果たして死んだりしてしまうんで」

「まじすか」

「すごいっすよ。ほんと。人間じゃねえみたいです」

そう言ったキリヤくんはリョウさんから肘打ちをくらった。

なんだろう。もしかして怪物呼ばわりされてる???

「とりあえず、僕たちは寝ますんで、電気よかったら消しておいてください。あ、寝る場所はさっきと同じ所ですよ」

そう言いながらリョウさんはリビングの襖を開けて出て行った。

「おやすみなさーい」

「おやすみー」


そして、リビングには私とミナだけが残った。

「時巻家の人たちってあんなすごい感じの人だったんだな。」

「うん。ほんとすごいよね。何年も何百年も世界を守ってきたんだから。」

私とは大違いだ。あんな、ミナをも守れなかった私とは…

今日のミナが目の前で、出血をして、倒れた時…私はとてつもない恐怖感を覚えた。


守らないと。


「じゃあ、私は、ミナのこと、守ってあげるよ。時巻家の人みたいに。」

その言葉を言うと、ミナは一瞬ぽかんとした感じだったが、しばらくして、その言葉を理解したかのように、プシュウと煙を上げて、顔を赤く染めた。

「え、あ、わ、分かったよ!あ、ありがとう…」

ミナはそっと私から目線を外す。私はその可愛いミナを優しく見つめていた。

可愛いなぁ…


****

「なあ、キリヤ」

俺は暗闇の廊下の中でキリヤに話しかけた。

「何?」

周囲を見渡すと、穴が空いていたりして、だいぶ酷い状態だった。」

「あと何日だ?」

「あの日までか?」

キリヤはポケットからスマホを取り出して、答えた。

「あと…4日だ。」

俺はその言葉を聞いて、少し沈黙した後に、決断をした。

「そろそろ行かないとだな。あそこに。」

「母さん達が言ってた場所か?」

「ああ。そろそろ、時が近いからな。明日行く。準備をしておいてくれ。」

「分かった。」


俺とキリヤは魔物が舞う空を見ながら寝室の中に入って行った。

今日も遠くで魔物は鳴く。

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