第3話

遡ること、約40分前。

「とりあえず、シズちゃんとかくれんぼをすることになったけど、どこに隠れようかなー」

私はシズちゃんとマナと、かくれんぼをすることとなり、今、まさに隠れ場所を探している途中だ。

「てか、この家でかいなー。隣に武道場あるしなー」

私は廊下をなんとなく歩く。足を踏み出すと、ギシギシと床が鳴る。

「とりあえずどこに隠れようか。」

すると、私は下へと続く、暗い階段が目に留まった。暗い階段は、何かを封印する洞窟のような禍々しさを放っていた。

「な、なんだ…これ」

わたしはそれを見た瞬間、足が一歩、後ろへと退がる。

手が震えるが、恐怖の中にうっすらと好奇心もあった。なぜ、このようなオーラを放っているのか。単純に気になったのだ。

そして、段々とその好奇心は恐怖心を蝕んで、好奇心だけが、わたしの心の中を埋めつしていた。

「よし!行くか!」

わたしの右手はその時、震えることを忘れていた。


さっきの階段よりもギシギシと頻繁に鳴り、今にも木の板は真っ二つに折れそうだ。それは、ゆらゆらと揺れる古い時期に作られた吊り橋のように、いつ崩れるかも分からない程に年紀が入っていた。

「いけるかなぁ…」

こんな所、見つからないよな?なんかよりも、壊れないように、とだけを意識して、わたしは暗い階段のさらに暗い方へと進んだ。

階段はとても深いところでもなく、1階の景色が地下からよく見えるくらいの浅さのようだ。

「とりあえず、隠れ場所探さないと…」

と思っていたその時

「じゃあ、行くよ〜」と小さくて大きなマナちゃんの声が聞こえた。

まずい…!!!

わたしは地下と地上をつなぐ、階段の近くにあった適当な本棚の裏に隠れた。

ここならバレないんじゃないかなー

わたしはとりあえず、暗い部屋の隅から隅までジロリと見回す。

部屋の天井の角には埃が溜まり、部屋の中には、色々な大きさの和紙で包まれたような箱、他にも、古い人形をガラスの中に閉じ込めた箱や、紙に包まれた、皿のようなものまで、兎に角さまざまな物品が置いてあった。

「す、すごい埃っぽいな…ゴホ!ゴホ!」

と、ここでわたしの肘が本棚に勢いよく当たり、本棚全体が少し揺れる。

「あ」

本棚には、本以外も敷き詰められていて、ガラス玉のような物がグラグラと揺らつき始める。

「や、やば!」

やがて、ガラス玉は本棚の中で、転がり始める。

わたしはそのガラス玉をそーっと取ろうと、手を伸ばす。そして、わたしがガラス玉を触り、手に取ろうとした。

「痛っ!」

すると、手に静電気のような痛みが走る。それと同時にガラス玉が一瞬だけ、ピカっと光ったような気がした。

痛みはすぐに治ったが、わたしはその、触れた手に何か違和感を覚える。

「なんだったんだろう…」

わたしはもう一度、ガラス玉を手に取るが、静電気の痛みは走らなかった。

よく見てみると、ガラス玉には何かしらのお札のような紙が貼ってあり何か文字が書いてあるような気がしたが、遠くの方から、「ミナちゃんどこぉ〜」というシズちゃんの声で、わたしはすぐに、ピタリと動きを止める。

「ミナはどこだろうね〜」と続いてマナの声も聞こえた。

これは…マナはもう捕まったのかな…?

遠くからまた、会話が聞こえる。

「ねえ、次はどこ探す?」

「うーん…あ!地下室!地下室行こうよ!」

まずい!!地下室はわたしのいる所!2階へいってくれ!!というわたしの願いも儚く、1階から誰かが降りてくるサインの木のギシギシ音がした。

「いっぱい物があるね」

とシズちゃんの声。

来てしまった以上仕方がない。わたしは息を殺して、本棚の裏に潜む。運が良かったのは、管理者の内の1人でも電気をつけないことだ。

でも、しばらくすると、「それじゃあ、次は1階をもう一度探してみよ!!」というシズちゃんの声がした。

そして、急いだようにギシギシとなる音が起こった後にわたしは安心して、手の力を緩めた。

でも、手の中には、さっき手にとっていたガラス玉があったので…

とわたしは心の中で呟いた時には、ガラス玉の落ちた音が部屋の中に響いた。

まずい!と思って本棚の隙間から、ガラス玉の転がった方を覗くと、「なにこれ」と言いながらマナが床に手を伸ばす姿があった。

あ、やべ。と思った時には、さっきと同じようにピカッと光を放つ。

「痛っ……!!!」

まずい!!もしこれでバレてしまったらどうしよう…

とわたしはさらに息を潜める。

そんな時、わたしの耳の中に、シズちゃんの甲高い、鋭利な悲鳴が飛び込む。

そして、その悲鳴が聞こえた数秒後、高速で階段を上る足音が聞こえた。本棚の隙間から見るに、どうやらマナはどこかへ行ったようだった。

わたしは「ふう」と一息つくと、超がつくほど狭い本棚と壁の隙間から脱出する。

わたしは両手を合わせて「ふわぁー」と言いながら、伸びをした。

あたりを見回し、改めて散らかっていると再確認しあた後に、わたしはさっきの悲鳴がどうなっているのか、気になり一階へ駆け上がる。

一階に近づくにつれ、何か怒鳴るような声が聞こえ始める。一階につくと、何か「普通」という言葉が似合わないような雰囲気があった。

「な、なんだろう…この違和感…」

とりあえずわたしは怒鳴るような声の方に恐る恐る近づいて行く。

「この角の向こうから声が聞こえるな…」

わたしは慎重にその角から頭を出す。

そして、わたしはその角から驚きの光景を目にした。

それは、大男がマナの後頭部を特殊部隊が使うようなライフルで殴り、マナを床へと倒していた。

「え!?ど、どういうこと!?」

わたしは瞼と口を思いっきり開いて、その光景を見つめていると、その大男がこちらに気づいたようで、「おいおい、まだ誰かいるのかよ」と言いながら床をギシギシと音を立てて迫ってくる。

「み、ミナちゃん!に、逃げて!!!」

とシズちゃんの震える声がした。そして、「うるせぇ!!」と言って、シズちゃんに鉛のような銃がバットのようにして、後頭部を襲った。

「し、シズちゃん!!!!!」

とわたしはこいつらに一瞬で恐怖が、怒りへと変わる。

あんな小さい子供を鉄で殴ったのだ。残酷すぎる。もしかしたら死んでしまうかもしれないのに、それを考慮せずに殴ったのだ。シズちゃんも痛いのを味わせたくない。それに、シズちゃんだって、殺されてしまったら色んな人が悲しんでしまう。

マナだって。あんな明るい人だって、暗い暗い闇の中に放り出されてしまうかもしれない。

はらわたが煮え繰り、頭に血がのぼる。

わたしはあの、シズちゃんを殴った男を。

わたしはこの、マナを殴った大男を。


「本気の力で!!!殴ってやる!!!!!!」


と思った頃には、私の手はシズちゃんを銃で殴った男の顔面に拳をめり込ませていた。

男は血を撒き散らしながら後ろへと弾き飛ばされる。

「は?」

大男は後ろを振り返って、さっきまで自分の目の前に立っていた女が後ろに一瞬で回っていることに驚いた様子だった。

ま、私はこいつも殴るけど。

わたしは手の痛みを忘れて、2mもありそうな身長の高い大男の顔面を足の裏で蹴っていた。

こちらも後ろに弾き飛ばした。

どうやら一発で2人とも気絶をしたようだった。

「はあ、はあ、はああああ!!!!!!」

でも、まだ怒りは収まらない。それでもまずは、2人が大丈夫かの安否を確認しなければ!!

とりあえず、一番近くに倒れていたマナに目をやる。

「ま、マナ!!大丈夫!?!?」

わたしの必死の声がけに応えるようにマナは「ふにゃあー…オムライしゅぅー」と答えた。

と、この声を聞き、わたしは目を濡らして、ちょっとだけ笑った。

「良かった…」

わたしはマナをその場にそっと、横たわらせる。

そして素早く、シズちゃんの安否確認もする。

「シズちゃん!大丈夫!?」

とわたしはシズちゃんを呼びかける。

すると、シズちゃんの目がうっすらと開き「み、ミナちゃん…?」と聞こえた。

「し、シズちゃん!!良かったぁ!無事で!」

シズちゃんはこの時、自分の小さな手を頬に当ててくれた。

そして、

「だいじょうぶ。だいじょうぶだよー」

と小さな声で呟いた。

そして、その声がわたしに届いた数秒後、涙が目から頬を伝り、顎から、床にポチャリとこぼれ落ちる。

「う、うぐっ!!!うぐぅ…」

と何故か急にわたしは安心をして、涙をこぼしていた。

なんでだろう。なんでこのタイミングでこんなに泣いてしまうのだろう。

わたしはそんな疑問の中で、涙を流していた。

なんで、こんなにも涙が流れているのかは分からなかったけど、多分記憶を失う前に何かあったのかもしれない。

もしかしたら、大事な仲間を失ったとか。

そんなことがあったのかもしれない。

多分ね。

わたしの涙が止まった頃、気づくと、シズちゃんは薄く開いていた瞼を完全に閉じていた。

「寝てる。」

その静かにすやすやと眠る寝顔は天使のようだった。

わたしはその天使を抱えて立ち上がり、布団へ移動しようとする。と、ここで初めてあることに私は気付いた。それは…

「あれ!?な、なんか髪色が…!!」

わたしはここで、自分の白い髪が水色に染まっていることに気づく。そして、ガラスに映った自分の瞳も、髪色と同じ色に染まっていることに気づいた。

とりあえず私は、二階の寝床にシズちゃんを届けると、改めて髪を私は手で撫でる。

質感もいつもと、変わらない。

目の前の鏡を見ると、自分の瞳も同じ水色に染まっている。

水のように透き通る目は、今日の朝、鏡に写っていた自分とはかけ離れていた。

「これ…わたし、なんだよな…?」

改めて、顔をべたべた触る。なんにもない。

「あ…」

ここで、殴り倒した男二人の事を思い出す。

私は急いで一階へと階段を下り、倒れている男二人をなぎ倒した場所に急いで見に行く。

そこには、男二人が眠り、それに加えて、グーグーとイビキをたてるマナの姿もあった。

「と、とりあえず、なんか縛らないとだよな…」

とりあえず、そこら辺にあった、ビニール紐を取り出して、たま結びでほどけないように固定する。

「よし!これでオッケー!とりあえず身ぐるみ剥ぐか。」

わたしはとりあえず、来ていた服の中にあった、ナイフや拳銃、バットのようなライフルを剥ぎ取る。

「マジで、凶器しかねえじゃん…まさか、立てこもり犯か?」

すると、わたしの髪は水色から、いつもの白と黒の髪色に戻る。

「あ、戻った。なんだったんだろうか…」

とりあえず、わたしは先程の怒りを全て出し切ろうと、小さい方の男を思いっきりビンタして目を覚まさせる。

「おい!起きてくれ!!」

小さい男の目はうっすらとだが、開き

「うぉ!!なんだこれは!?」と、大きな声をあげる。

まあ、もちろんビニール紐で手も足も、腕も縛っているし、わたしの片手にはナイフがあるわけだし、下手なことはできないでしょう。

「起きた?一体、お前らはなんなのか、教えてくれるか?」

わたしの直球な質問に小さい男は少し、迷ったような顔を見せるが、すぐに理解したようで

「お、俺らはだなぁ…この家にあるって言われてる、冥界の結晶を奪いに来たんだよ。」

「冥界の結晶?なんだよそれ?」

男は口角を少し上げて微笑しながら言う。

「冥界へとつながるための次元だよ。これがあれば、時の魔王に会いに行ける!!!」

わたしは男の胸元を両手で掴み、顔を一気に近づける。

「そ、それってどこにあるんだ!?!?」

男は余裕の表情を浮かべた。

「さあな。俺らも知らねえ。どこにあるかはわからないが、この家のどこかにあるんだとかな」

「んな!?」

「おっと、喋りすぎたようだ。じゃあ、眠ってもらうぜ」

眠ってもらう?

とここで、何か大きな影が、背後に迫っていることに気づき、わたしはさっき、この男を殴った位のスピードで横に避ける。

バアン!!!と鉄の重い音がした。

「よく気づいたな。」

わたしは先ほどまでにはいなかったもう1人の男が現れていることに疑問を抱く。

「ど、どこから入ってきた!?」

「そんなのはどうでもいいだろう?3人もいるんだ。そのうちの1人が死んだって構いやしねえよな?」

男はビニール紐をちぎって立ち上がる。

なんだ。解けんじゃん。

「俺はボスじゃねえ。ま、俺がこの組織のボスだったら、良いって言うけどな。」

小さい男は手にバットのような銃を持ち、こちらへと銃口を向ける。

「じゃあな」

その言葉と同時に引き金を引き、爆発音を連発させた。わたしはスパイのように、横の通ろへと飛び込み、全力で階段を上る。

一階から「ふうー。やっぱ銃は良いなああああああ!!!!!開放感がたまらねえぜ!!!!!」という歓喜の声が響く。

クソッ!!!

「待ってよ、お嬢ちゃあん!!!」

大きな足で床を踏む音が鳴り響く。

私は階段を上った後、廊下を右に曲がり、和室へと逃げ込む。

「こ、ここだ!!」と私は物置の中に隠れた。

時計が時を刻む。

「さあ、さあ、どこにいるんだ?」

「隠れてないで出でおいでー」

背後が天に引っ張られそうになる。

私は息を殺して、静けさを保つ。

いやまて。何でわたしはこいつらから逃げなければならない?

「どこにいるんだ?さっさと出てこいよ!!」

わたしは隠れていた和室から出て、銃を抱えた男二人の目の前に立つ。

「はは!馬鹿な奴め!!!」

男はわたしの事を睨み付け、銃をしっかりと握る。そして、わたしに向かって撃とうとしたその瞬間。わたしは後ろの方に走り、右へと廊下を曲がった。

「おい!待て!!」

と、男達が走る音が廊下中に伝わる。

わたしは全力で走り、もう一度、右へ曲がり、廊下を全力疾走、もう、一度右へ。そして、次に見えた角を右へ曲がると、男たちの背中が見えた。

警戒もしないがら空きの背中に、わたしは蹴りを入れた。

わたしは先ほど気付いたことだが、階段を上り、どちらかの方向に四回曲がれば、最初いた、階段へとつく。

要するに、丸のように、スタートがゴールなわけだ。

なので、高速で走れば、前に居たと思った敵が、いつの間にか後ろに回っている、なんてことが出来るわけだ。

わたしは男1の後頭部に飛び蹴りを食らわせる。

「おまえ!!」

わたしは、すぐにしゃがんで、銃を乱射する男2の攻撃を避ける。

「倒れろぉ!!!!」

足を床で引きずって、男の体制を崩そうと試みる。が、わたしの力ではどうやら、力が弱いようで、男はもろともしなかった。

「いってぇ〜!!!でも、今すぐにお前も痛くしてやるよ!!!」

男は銃口をわたしの頭に向けて引き金に手をかける。

し、死ぬ!!!!

わたしが思いっきり、目を瞑った時、どこからか声がした。

「やあ、切羽詰まってるみたいだね」

その声は何故か、頭の中に響くような感じだった。

目を開けると、そこは暗闇。暗い部屋といった感じだ。周りには建物から、地面、重力という概念がないように感じた。

「こ、ここはどこだ!?」

その暗闇に響くように謎の声がした。

「ここは冥界の片隅。君は今、魔法使いになったんだよ。」

姿もなく、轟く声は青年のような声色だった。

「め、冥界…?どういうことだ!?」

「君はさっき、魔法を会得することができる、魔法結晶に触れただろ?だから、翼の神の僕が、君に力を与えることになったんだ。だから僕は君に翼の魔法をあげることにしたんだ。翼の魔法は空中を自由に飛ぶことのできる魔法なんだ!便利だろ?」

「その、すまないが、わたしは話が飲み込めていないのだが…?」

下がり気味な声で、

「えー!!まだ何にも知らないの?要するに魔法が何かも知らないわけー?」

「あ、ああそうだが…」

自称翼の神は「はあ」とため息をつくと続けて説明を始めた。

「いい?魔法ってのはね、要するに異能みたいなもんで、1人1個!これ原則ね!自分の体に神を宿らせることによって獲得できる異能なんだよね。異能を獲得できるのは、特別な素質を持った人だけ!要するに君は選ばれし1人なんだよ〜!!そして、魔法を使うときは、自分に宿らせた神に体の性質を近づけるために髪の色とか、瞳の色が限りなく近くなるんだよね!ちなみに、魔法使った数分後にはなおってるけど。」

「だからあの時に!!!」

「そう!そして、君に今あげた能力は空を飛べる能力!その名も翼の魔法!時速60キロまで出せるよ〜!」

「時速60キロだと!?」

「そう!時速60キロ!!これで悪者をぶっ飛ばしちゃおー!!」

魔法、なんとも奇妙なものを何故かわたしは獲得してしまったな…

「そういえば、なぜ、こんなことをしてくれるのだ?」

「ん?それはね、僕に限ったことじゃないけどさ、冥界って何にもない場所でさ、神を宿らせてる魔法使いの見ていることって、僕たち、宿らせた神自身も、魔法使いの視界で見られるんだよね。だから、見せて欲しいんだ。君の人生ってやつをさ。あ、そろそろ時間だね!じゃあねー!」

「あ、そ、それじゃあな!!」


感覚が戻る。わたしの五感は現実世界に吸い寄せられる。さっきいた場所、冥界の片隅から体が離れ、今度こそ、目を開けると、わたしは天井に手をついて浮いていた。

「う、浮いている!?」

私は天井に張り付き、その目をカッと開いている男を上から眺める。

「ほ、本当に浮いてる…」

翼の神ってのはどうやら建前とかではなかったようだ。わたしは足を向けて、空中から一蹴り、奇襲を仕掛ける。足は男の顔面にヒットし、男はその場に倒れた。わたしはすかさず、追撃、空中から、腹に向かって拳を突撃させると、男はたまらず、ぐふ!と声をあげて、気絶した。

「ふう…翼の魔法、意外と使えるかもな。」

わたしは男たちを念のためにビニール紐で、10回ほどまきつけてから、2階の和室の一室に投げ込む。

「よし!これでオッケー!」


「あなたはこの家の住人ですか?」

耳元で男性の呟く声がした。

「う、うわあ!!!」

わたしは素早く男のいる方とは反対の方に退いた。

「すごい!運動神経がいいんですねぇ!あ、別に驚かそうとか、そういうのじゃありませんよ?」

白と黒の入り混じった髪。片目を髪で隠し、片目を眼帯で隠すという独特なファッションだった。髪色は茶髪と金髪を混ぜたような髪だった。

そして、両目を隠しているこの男からは異常な雰囲気を放っていた。

「あの、冥界の結晶って知ってます?この家にあるって聞いたんですけど。あの、冥界とこの世を繋げる奴」

「え?」

どういうことだ?今こいつはこの家に冥界とこの世をつなげる奴があるっていったのか?

「そ、そんなのがこの家にあるのか!?」

「ええ。もちろん。ここはなんつったて時巻家じゃないですか。」

ニッコリとした表情で男は言った。

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私は時見水浪。まあ、冥土の土産にでもどうぞ」

ニッコリとした表情の男はその言葉を言うと、どこからか拳銃を向ける。

拳銃はどうやら、わたしの頭を狙っているようだ。

わたしは反射的に「翼の魔法!!!!」と大声を出した。

わたしの髪色が変わる時にはわたしの手は拳銃の銃口を押さえていた。

「何故か覚えていたことなんだが、拳銃は銃口を少し押すと、トリガーを引けなくなるってな!!!!」

わたしは銃口を押さえ、拳銃の発砲を抑えた。

「へー意外とやるじゃないですか」

次にわたしは目の前のガラスに目を向ける。

「一旦、逃してもらうぜ!!」

わたしは銃口を押さえていた右手で、銃を掴み、右の方向へと投げた。

そしてわたしは翼の魔法で、時速60キロのスピードで、障子を突き飛ばし、ガラスを破って外へ逃げた。

ここは2階のこともあって、下を向くと、コンクリの地面だったが、この翼の魔法には関係ない。わたしは速度をあげて、真上に広がっている空に体を向け、急上昇をしようとした時、唐突に右足に痛みが広がる。

「い、痛だ!!!!」

右足に目を向けると、3mmほどの傷があった。そして、足の前には血のついたナイフが宙を舞っていた。

「こ、これって!!!!」

破った窓から、家の中を覗き込む。

そこにはさっきとは全く違う、エメラルドのような色をした髪色の男が居た。

「僕、実は魔法使いでね。未来の魔法。時の魔王の一部を体に宿しているんですよ。だから、未来に何が起こるか、わかるんです」

だから、時速60キロのスピードに!!

「僕は将棋とか、チェスとかのボードゲームが好きでね。とりあえず、逃してあげますよ。あ、警察がここを通った場合には、この家に残っている人を全員殺しますから。あなたが直々に来てください。」

「人質か!!!」

男はまた微笑した。

「戦略ですよ。まあ、早くしないと拷問をして冥界の結晶の居場所を吐かせますけど」

「クソ野郎!!!!」

わたしはその言葉を言うと、急上昇をして、家の屋根に着地した。

「痛ったあああ……」

わたしはかすった所を手で抑える。屋根には濃い血液が飛び散る。

「ああああああ…………!!!!」

我慢できずに、涙が溢れてしまう。痛すぎる!!!こんなことがシズちゃんやマナにもやられるのかと思うと心配になる。

とりあえず、血液をどうにかして止めなければと、思いひとまず応急処置をしたいところだ。

「絆創膏でどうにかできる物じゃないな…」

すると、屋根から銃弾のようなものが上へと向かって突き出てくる。

「あれ?外した?」

どうやら、あの男が…スイロウという男が天井に向かって銃を撃っているようだ。

「クッソ!!離れなければ!!!」

わたしは翼の魔法を使って、空を飛ぶ。

「とりあえずは脱出成功…あそこ…行くか…」

とりあえず、あの性格だと、警察のサイレンを聞くだけでシズちゃんとマナを殺しかねない。警察に頼るのはNGな訳か。

ということは、隠密作戦が妥当か。いや待てよ?この翼の魔法があるじゃないか!!!

要するに空からの奇襲もできるわけか!!とりあえず、わたしは休憩できる場所を求めて、翼を広げた。

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