第23話 間取り


 スマホを片手に、氷で薄くなったコーラをストローでチビチビ飲みながらネットニュースを流し見ていると、メジャー野球選手の大山がビバリーヒルズに買ったという豪邸の記事が目に入った。見出しには【12億円】とある。


「なぁ。大山の家、12億だって」


 同じようにメロンソーダをチビチビ飲んでいた黒田に、大山の家の値段を言うと「大山?知り合いにいましたっけ?」なんて、すっとんきょうな答えが返ってきた。


「野球選手だよ。三刀流の」

「あぁ……キャッチャーとコーチもやってる……それで、それって12億円ですか?12億ドルですか?」

「円だよ、円!分かるだろ、何となく」

「12億円……それは大豪邸ですね」

「な~。スゲーよな~。『何LDKだよ!』って感じだわ」

「そんなの、LDKどころかLLLDDDKKKKKみたいな感じじゃないですか?」

「キッチン多くない?」

「でも、トイレとかは家族の人数分にありそうじゃないですか?」

「一人1個?……ありそう」

「取り敢えず大山と奥さんと、犬のピンフの分で3つ?」

「そら、ピンフの分は別だろうよ」

「ピンフも個室で」

「逆にピンフ困るだろ」

「あとは、お風呂も多そう」

「風呂~?あっても家族用と客用位じゃねぇの?」

「じゃあ、家族用が凄い広いとか?」

「それありそうだな」

「テニスコート1面分とか?」

「広すぎるだろ。それもうプールじゃん」

「あっ、プールありそう!」

「ある!確実にある!」

「ジャグジー付き!」

「風呂とプールの役割逆じゃね?」

「あとはパーティールームもありそう」

「あ~。アメリカ人、パーティー好きだっていうモンな」

「天井にはミラーボールで、壁には光る星のシール」

「それ、ミラーボールが星のシール食っちゃってないか?」

「しかし、それだけ広いと掃除が大変そうですね」

「確かに」

「ルンタ何台要るんでしょうね?」

「ロボット掃除機には荷が重すぎるだろ」

「……維持する事も考えると、やっぱりそれなりの広さが丁度良いんですかね……」


 黒田はそう、しんみりと言うとメロンソーダを飲み干した。


「まぁ、ハウスキーパー雇ってるだろうけどな」


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