第22話 ミルクティーが良い


「そういえば、この間石田さんと会ったんですけど」

「石田?アイツ捕まったんじゃなかったっけ?」


 黒田の話にそう相槌を打つと、呆れたように「捕まってないですよ……」と返ってきた。


「会社の金、横領して捕まったんだと思ってた」

「それやったのは、石田さんじゃなくて石田さんの同僚ですよ」

「そうなんだ。それで?石田がどうした?」

「それが、尿路結石で手術したんですって」

「手術?!!」


 昔のクラスメイトの意外な情報に、俺は思わず大きい声を出してしまった。


「はい。最初は薬で石を小さくして自然排出って話だったらしいんですけど、なんか大きかったみたいで、手術する事になったって話してました」

「え~……つーか、尿路結石で手術ってチ……イチモツ切り開いたって事……?」

「いやいや。聞いたら、体に衝撃波みたいなのを当てて、体内で石を砕いて自然排出させるって方法なんですって」

「衝撃波……」


 アクション漫画位でしか聞かないような単語に感嘆が漏れた。


「手術自体は1日で終わったけど、石が中々排出され切らなくて当分痛かったって言ってましたね」

「へぇ~……それはキツイな……しかし、なんで石なんか出来るんだろうな?」

「それがね、石田さんって紅茶が趣味だったでしょ?」

「あぁ……確かにアイツ、よく紅茶飲んでたな」


 前にダージリンだのアッサムだのと、熱く語っていた級友の姿を思い出す。


「紅茶に含まれるシュウ酸?って成分が体内のカルシウムと結合して石になるんですって」

「怖っ。じゃあアイツ、紅茶の飲み過ぎで石が出来たって事?」

「本人がそう言ってました」

「へぇ~……。……それさぁ、なんで今話したの?」


 俺はポットで蒸らし中の紅茶を指差し「飲む気失せるんだけど」と黒田を非難した。

 男は「見てたら思い出したから」と悪びれもせず言い放ち、アイスコーヒーに口をつけたのだった。

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