第20話 契約の対価


「そういえば。母が洗剤の箱を送ってくれたんですけど、竹中さん、またいります?」

「おう。いつも悪いな」

「いやいや、いうて景品ですからね」


 半年に一度、俺は黒田家の新聞契約更新の際に貰う、景品の洗濯用洗剤を貰っている。

 黒田の母曰く、その洗剤の香料は好きな匂いじゃないとの事で、代わりに俺と黒田で消費している。


「しかし、なんで洗剤なんですかね?」


 黒田が少し薄くなったホワイトソーダをストローで混ぜながら言った。


「別の物だったら嬉しいのに……大体、社員さんも運ぶのも大変でしょうし」

「でも、食いもんは嫌だろ?」

「確かに口に入る物は怖いですね……。竹中さんなら何が欲しいですか?」

「ん?金」

「いや……俺も欲しいですけど。それはなんか、法に触れそうじゃないですか?」

「触れるのかな?ん~……ならゴーゴープレイカードは?」

「あー!良い!」

「良いよな?」

「あっ、でも値段が……」

「値段?」

「ほら、洗剤一つが400円位と考えると4つで1600円?いや……ああいうのってまとめ買いで安くなるから1400円とかになるんじゃないですか?」

「あっ、カードの値段?」

「はい。まぁ、間を取って1500円分のゴーゴープレイカードが、契約更新すると貰えると想定しましょうか」

「……1500円分か……まぁ、悪くないんじゃないか?」

「でも、新聞ひと月4000円ですよ?」

「えっ」

「半年で2万4000円です。2万4000円のキャッシュバックが1500円……」

「1500円……」

「元の1割も無いですけど、竹中さんなら新規契約します?」

「…………しない……」

「でも、洗剤よりかは良い?」

「う~ん……洗剤よりかは……。でも、一周回って洗剤の方が満足度が高い気もする……」

「まぁ。使えれば、ワザワザ買いに行かなくて良い訳ですもんね」

「やっぱ、洗剤なのかなぁ……」

「結局洗剤になるんですね……」


 黒田はそう言って、神妙な面持ちでジュースを飲んだのだった。


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