第16話 武器を取れ


「竹中さんならゾンビと戦う時、何を使います?ちなみに銃は禁止で」


 黒田が鉄板の上のハンバーグを切り分けながら、そう訊いてきた。

『あんま、肉食いながらする話じゃねーだろ……』と思いつつ


「じゃあ、弓」


と答えると、予想外だったのか


「弓っ?!」


と、目の前の男は驚いた様子だった。


「何?駄目なの?」

「いや、駄目じゃないですけど……初手で最適解出たな……」

「そんな感心する?」

「だって飛び道具に有りがちな『弾をどうするか問題』も矢なら解決するじゃないですか。ギリ木から作れそう」

「まっすぐ飛ぶかは、また別の問題だけどな」

「うわー……こりゃあ1本取られたな……何を武器にしよう……」


 そう言って、黒田がハンバーグを口に運んだ。

しばらく咀嚼してから


「じゃあ、俺は包丁にします」


と言ってきた。


「接近戦過ぎねぇ?絶対刺す前に噛まれるだろ」

「でも、我が家にある“武器になりそうな物”って包丁かバールしかないんで……」

「別に俺ん家も弓と矢がある訳じゃねーからな。つーか、ならまだバールの方がマシだろ!距離感的に」

「えっ。竹中さん、弓持ってないのに弓って答えたんですか?!!」

「触れるとこ、そこじゃねーんだよ!こういうのって“もしも”の話だろ?!!なら良いじゃん、実際に持ってなくても!」

「そんなん言ったら、俺はライフルが良いですよ!」

「お前が最初に『銃は禁止』って言ったんだろうがっ!!!大体『弾はどうするか問題』解決しねぇし!」

「予備の弾は街を徘徊してれば、落ちてるんじゃないですか?」

「ゲームじゃねーんだぞ!?ある訳ねーだろ!」

「そっちが『もしもの話なんだから何でも良い』って言ったんじゃないですか!」

「何でもは良くないだろ!大体、お前『ライフルが良い』って、安全装置外せるのかよ?」

「外せますよ!あれでしょ?レバー的な奴を“off”って書いてある方に倒せば良いんでしょ?」

「絶対違う……!お前、もう安全装置外せずに噛まれる運命だわ」

「良いですよ!ライフルで殴るから!」

「結局接近戦じゃねぇか」


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