第14話 猫カフェ


「今度、駅前に猫カフェ出来るんだってよ」


 ソフトクリームをチマチマと掬いながら、先日知った情報を口にすると


「何かの隠語ですか?」


と、同じくコーヒーゼリーをチマチマと掬う黒田がそう言ってきた。


「なんでだよ。猫カフェは猫カフェだろうが」

「いや……人前で言うには憚られるような店の話でもする為に、敢えて“猫カフェ”って言ってるのかなって……」

「そんな話、ファミレスでする訳ねーだろうが!流石にそれ位の分別はあるわっ!」

「だって竹中さん、猫好きでしたっけ?」


 そう言って、黒田がスプーンの先をこちらに向けた。行儀わりぃな。


「別に嫌いじゃねぇよ。婆ちゃん家では猫飼ってたし」


 今はもう(どちらも)鬼籍に入っているが、かつて祖母の家で飼ってた猫は、歳の割に甘えん坊で、撫でられるのが好きな猫だった。


「だから、たまに触れあいたくなるんだよな~」

「“触れあいたく”って……猫からしたら一方的に触られてるだけなんじゃ……」

「人を痴漢みたいに言うんじゃねぇよ。大体、別に撫でるだけが触れあいじゃねぇし。一緒に遊んだりしたいって事!」

「でも、撫でたいですよね?モフモフしたいですよね?」

「まぁ……そりゃあ……」

「……やっぱり、身体が目当て……」

「だから嫌な言い方をするなよ!」

「そもそも、猫カフェって結構お金掛かりますよ?」

「そうなの?」

「はい。滞在時間によって変わるし、店によっては滞在費に飲み物代が含まれてない場合もあるし、おもちゃも、店によっては無料で貸し出してる所もあるけど有料だったりするし、猫のおやつ代に関しては確実に別で取ってるし」

「それは別におやつとかを買わなければ良いんじゃ……」


俺は思った事を言うと、黒田はキッパリ


「おやつもおもちゃも無いのに、猫が寄ってくる訳ないじゃないですか」


と言い切った。


「…………」

「良いですか?竹中さん。猫カフェはね、猫がキャストの水商売みたいなモンですよ……」


 そう言って黒田はニヒルに笑った。俺はそんな目の前の男に


「……なんか、偏見が凄い割には料金体制に詳しくねぇ?」


と気になってた事をぶつけてみた。


「…………」

「お前、猫カフェ行った事あるだろ。しかも、複数店」


 そう問い詰めると、黒田はその場から逃げるように、そそくさとジュースのお代わりを取りに行ったのだった。


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