第13話 何になるかな


 いつものファミレスへ行く途中、数ヶ月前に潰れたインドカレー屋が改装中なのが目に入った。

何になるんだろう?



「ジムじゃないですか?」


黒田に、ここに来るまでに見た改装の事を話すと、そう返ってきた。


「あの店、結構狭かったし、ジムって事は無いと思うんだよな~……」


 俺はアイスティーを飲みつつ、黒田の予想を否定する。

 一度カレー屋時代に行った事があるが、厨房とカウンターしか無いような店だった。


「うーん……じゃあ、おにぎり屋とか?」

「あ~。おにぎり屋……だとしたら、超強気だな……」


 元カレー屋の近くには、行列が出来るような有名なおにぎり屋があるのだ。そこに競合するような店を出すだろうか?


「それなら唐揚げ屋?」

「今から唐揚げ屋?ちょっとブーム廃れてきてね?」

「え~?……じゃあ、バナナジュース屋?」

「もう流行ってなくね?」

「それならタピオカ屋」

「もう流行ってないだろ」

「白い鯛焼き!」

「だからもう流行ってないだろ!つーか何年前のブームだと思ってんだ!」

「…………。レインボーわたがし……!」

「……すぐ潰れそう……!」

「あ~……じゃあ、ガチャガチャ屋」

「ショッピングモールの潰れた店の跡地じゃねーんだぞ!」

「いや、もう分かる訳ないじゃないですか。……案外、またカレー屋か、よく分からない多国籍料理屋になるかもしれませんよ?」


 黒田はそう言って、白ブドウジュースを飲み干した。



 後日、黒田の予想に反して、もうブームが去りつつあるというのに、高級食パンが売りのおしゃれ系パン屋が開店した。

今度の店も早めに潰れそうだ。


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