第8話 季節の果物
メニュー表のデザートのページを見ている時、俺は冷蔵庫の中身について思い出した。
「そういやお前、桃好き?」
同じページを見ていた男にそう訊くと「まぁ、それなりに」と返ってきた。
「じゃあ、桃何個かやるから、この後ウチ寄れよ」
「はぁ……有難う御座います。……でもなんで?」
「それがさ、この間の休みに妹が桃狩り行ってきたらしくて。で、お裾分けにスゲー貰ったんだよ。一人じゃ食いきれねーし、お裾分けのお裾分け」
「なるほど。イマジナリー妹さんが……」
「イマジナリーじゃねぇよ!つーか、お前会った事あんだろうが!」
「あぁ、覚えてますよ。竹中さんにまっったく似てない妹さんですよね」
「あんま似てない事って言及しなくね?」
「あんまりにも似てないんで『複雑な家庭なのかな……』ってドキッとした記憶があります」
「そんな事思っても言うなよ!本当に“そう”でも違っても、角が立つだろうが!」
「でも桃なんて久しぶりに食べますよ」
「そうか?この季節になるとフェア商品でよく売ってんじゃん」
実際、目の前にあるフェア商品用のメニューには、デカデカと桃が入っている事を宣伝したパフェの写真が載っている。
「いやいや。こういうのじゃなくて“そのままの桃”っていうか……スーパーであんまり買わなくないですか?割りと高いし」
「まぁ、言われてみれば確かに買わねぇな……」
そもそもフルーツ自体、他よりちょっと安いキウイ位しかここ数年買ってないかもしれない。
「そう考えると“果物狩り”ってブルジョアの遊びですよね……」
「そういう視点で見た事はないけど……まっ。レジャーだよな。遊園地とかと一緒つーか」
「なるほど。…………。それなら、遊園地の方が行きたいかな……」
「なんだお前」
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