第15話 無力

王国から出たアルミニウスは凄惨な光景を目にした


「なんだ…これは…?!」


そこに広がっていたのは倒壊した木々、割れた地面、巨大なクレーター、大量の血、そして



四人の骸



「ああ…あ…ああああああああああ!!!!!!!」


彼にとっては四人は大切な部下であり、仲間でもある。そんな大切な仲間の死体の前で泣き崩れる。


「私が!!私が無力だったから死んだ!私がビクビクと怯えていたから死んだ!私は誰一人も救えない!!!すまない!!!私が…馬鹿だった…君達を死に送り込んだ私のせいだ…。」


自分の臆病さが、自分の無力さが四人を殺してしまった。


「私に…こんな状況を覆せる力があったら……。」


覆せるような力があったらと何度願ったことか。


「君達を…蘇らせるような力があったら…。」


何度も何度も願っても叶うことの無い願いを、何度も何度も繰り返す。


「本当に私は何もできない……ん?」


微かに声が聞こえたような気がした。


その声の元を探ると何か見えた。いや、見えてしまったのは



「ほらほらぁ、頑張れ頑張れぇ♡もっとぉ…もっとぉ…ボロボロなところぉ…見せてぇ?♡」



リリスが馬乗りになり、ガイアを痛めつけているところを。

顔は原型を留めないほどにボロボロにされ、歯は抜かれ、目は片方潰された。前の美貌はもう跡形もなく消滅していた。

服はボロボロにされ、半裸の状態。腹にはパンチをされたような跡がベタベタと付いていた。指は二十本全て折れ曲がっている


「ガ、ガイア…。」


心臓が高鳴り、これは夢だと頭が訴えるが目の前にある光景は夢ではなく正真正銘の現実。


「あんっ…また濡れちゃったぁ♡なんかアソコがぁっ…あんっ♡…ゾクゾクするぅっ…♡」


ボロボロの顔に自分の股を擦り付け、自分の乳房を乱暴に揉みしだく。


「ああっ…♡凄いいいよぉ♡…ねぇ、どんな気持ちぃ?こぉんなにボロボロにされて、顔をアソコで擦り付けられるの…♡」


そう言っても何も返ってこない。口でパクパクと何か言っているが声帯は声が出ないように潰されている


「あ、そっだった!スキルで声帯滅ぼしたから声出ないんだった⭐︎ちなみにそれで攻撃されたり傷つけられた傷は『治る』ことも滅ぼされるから絶対に治らないよ!法則とかだけじゃなくて概念とかもなんでもいけるからね!」


「うーん、多分聞こえてないみたいだけど…ま、いっか!」


リリスはガイアの再び腹に跨る。そして、手を首にかける


「じゃ、もう飽きたし楽〜に殺してあげるね⭐︎それじゃ、バイバーイ!」


首にかけた手に力をこめ、苦しんで死ぬように一気に強くせず、少しずつ少しずつ力を強くしていく


バタバタと足を動かそうとしているが、鎖で引っ張られいるためほとんど動けない


「あはっ♡凄いビクビクしてる♡かわいいねぇ…♡」


ゆっくりゆっくりと少しずつ動きが小さくなり、



止まった




その光景を見ていたアルミニウスは目の前にある光景に目を伏せている


「ああ…ああ…あなたまで……もうやめてくれ…私から大切な仲間を奪わないでくれ…。」


自分が仲間を死に追いやってしまった。自分のせいで仲間を守れなかった。色々な感情が彼の精神に蝕んでいく


「私は……何故守ってやれる力も何もない…こんな状況を覆せる力もあるわけではない…私は何も持っていないただの人間だ…ただビクビクと怯えて逃げているだけ……。」


耐えられずに泣き崩れ、自分を責め立てる。それを呪文のように繰り返した。恐怖が迫っていることを知らずに。



「あれ〜?まだ誰かいたんだ〜。」



「あ…」


見上げるとそこには五人を殺した憎き元凶、リリスがいた。


「遠くから見てたよね?ねぇ?」


目の前の恐怖に目を伏せてこれは夢だと心の訴える。だが


「ぐっ…。」


「…オイ、ちゃんと目ェ見て喋れ。」


永久凍土のような凍てつくような声が響く

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