第13話 魔王は厳しいって、危機k
王様ァァァァ!!??何言っちゃってんのォォォ!!!???
「いやいや!虫がいいとか悪いとかじゃなくて!なんで俺に吹っかけて来るんですか!?もっといい人…ほら!あの四人とかでいいでしょ!!」
「これしか方法がないのです!確かに四人も強い戦力ですが魔王はそれ以上の力を持っている!たとえ戦わせても四人だけでは時間稼ぎにしかならない!」
(嘘だろォォォ!?そんな強いのォォォ!?あんまり四人どれぐらい強いかわからんけど!)
「今まで積み上げてきたこの王国を壊されたくないのだ!どうかお願いします!」
確かに自分たちが積み上げてきたものを壊されて嬉しいはずがない。今まですごく強かったゲームのセーブデータを消されるようなものだ。いや、消されるであろうものは王国なのでそれ以上だ。
(う…そこまで言われたら流石にな…せっかくの異世界ライフ壊されたく無いしな…。)
「わかりましたよ!やりますよ!」
「ありがとうございます!こんな非力な私の願いを受け入れてくれて!」
「とりあえず俺に掴まれ!」
「なんでだ!?」
「それはいいから!」
「わかった!」
俺に四人が掴まるのを確認する。
(全知全能ならこれくらいできるだろ!『瞬間移動』!)
心の中で唱えた瞬間、五人はその場から消える
王は五人が去ったのを確認し、玉座に座る。そして、玉座をドンと叩く。
「何故だ…なぜこういう時に動けない…!私はただの何もできない木偶の坊で…臆病者ではないか…何が国王だ…!」
誰もいない、返事も返ってこない王室で自分の無力さを嘆いていた。
(動け…動け…!)
そう足に言い聞かせてもいうことを聞かない。死の恐怖、不安、心配など数えきれないほどの感情が頭の中を襲い、支配し、飲み込んでくる。
「くそ!」
また玉座を叩く。
「みんなはこんなにも勇敢に戦場へ向かっているのに…それに対して私は怯えてばかり…。」
先ほどの森の件も自分は直接行かず、四人に任せてしまった。なぜ態々四人に任せて自分は足を運ばなかったのだろう…。
その時、ふと昔を思い出した
私は兄弟はおらず、一人息子として生まれた。
学問や帝王学などは優秀だったらしい。
「凄いぞ、アル!もうこんなに早くマスターしたのか!」
父や母は私の成長ぶりをたくさん褒めてくれた。たくさん愛してくれたし、何不自由ない生活を送ることができた。
だがそんな私がいつまで経ってもできなかったことがある、それは…
「王子様、避けてばかりいるのですか!」
「ひぃっ…。」
「逃げずに打ってきなさい!」
剣術などの戦いの訓練だ。学問などはスラスラとできるようになったが、戦いなどは大の苦手だった。
「覇気も無い、勇気も無い。ただ学問ができるだけでは王は務まりません!」
師範から放たれる攻撃、逃げるなと言われることが怖かった。
訓練用の剣でも手に取ると無意識に手や腕が震え、心臓の鼓動がうるさくなる。
両親はそれでも応援してくれたが、他の者は私を陰で『臆病者』と呼ぶこともあった。
もちろん、できるようになるために努力をした。
だがそれでも、私の性格は克服することを許さなかった。
その後、王の座を継承した。当初は臆病者の王などと言われてきたが実績を立てることなどしてその声を打ち消した。
これでもう言われることは無くなった…そう思っていた。
今はなぜなのかもう一人の自分に言われているような気がしてくる。
『臆病者だ』と。
自分は今まで戦いに逃げてきた、だがもうそろそろ終わりにしよう。
もう誰にも言われたくない、他の人間にも自分にも
そして決断する
「私は非力だ、だがせめて…せめて何か…非力なりに何か行動しよう。」
覚悟を決めたアルミニウスは後を追うように王室を出る
「今度はなんなんだ!」
「おいあれ!まさか!」
「リリスだ!」
「なんだって!?」
「なんでここにいるんだ!?」
民衆の声が王国の全ての場所から聞こえる。当然鳴り止む様子もない。
俺たちはスキルで城の外に到着した。
「これで移動の手間ら省けたね。」
「ああ、そんなことよりまずはあいつをなんとかしないとな。」
ベルフの指を指す方に俺たち目をやるとだいたい60〜80mくらい先のところに魔王リリスがいた。
そいつは首をブランブラン揺らしながら立っている。
「リリスっていうのはあいつか…。」
「ああ、あいつがリリスだ。」
「死と破滅の魔王ね…大層な異名持ってんなぁ。」
リリスの周りにはさっき見た通り花や木は枯れ、動物は骨になっている。
クロトが考え込んでいる。
「あいつの周りの生き物とか死んでるから、おそらく近づいた者を殺すスキル持ってると思う。私はスキルでなんとかなるかもだけど後の四人は近距離で戦うのは無理かもね。」
なんだよそのスキル…めっちゃチートじゃん…俺も大概だけど。
「いや、多分俺もスキルでなんとかいけると思う。」
「まじで?!」
「俺のスキルの中にそういうスキルの耐性あるから。」
「さすが神…ほんと強いね…。」
(ま、そういうスキルどころか全部のスキル効かないけどな…。)
「そんなに褒めるなって。」
「それではベルフ、アフロディ、私は遠距離か」
「ねえ…何話してるのぉ?僕も混ぜてェ?」
アインが振り向くとそこにいたのは
『死と破滅の魔王』リリスだった。
「「「「!?」」」」
俺はすぐにみんなに叫ぶ
「お前ら!!今すぐ離れろ!!!!」
次の瞬間、俺たちは最速で後ろに飛んであいつから距離をとる!
だが、それと同時に奴は俺のすぐ目の前に来ていた
「ねえ、なんで逃げるの?」
「ガイアさん!」
「まじかよ!!??」
前髪テールの金髪。垂れている前髪の左右にみえる赤紫色の目は光が宿っておらず、ホラーな雰囲気を醸し出している。
「なんで近づいても死なないの?」
「知らねーよ!!」
俺は横の腹に蹴りを入れる。同時にやつは弾丸のように横に飛んでいき、地面にドガァァンと激突する
当然あいつは死んだ訳では無く生きている
「痛いよぉ…なんでそんなことするの…?」
寝転がったまま無表情で聞いてくる。
(怖すぎだろ!ハイライト無い目も相まって余計に怖いぞ!)
そしてふらりと立ち上がり、一瞬で間合いを詰めてきた。
「お返しだァ…。」
ニタリと笑いながら右手を伸ばしてくる
「ちぃっ!!」
俺はそれを避けた直後、奴の右手首を左手で掴み空いた方の腕で鳩尾に叩き込む
「かは……。」
(どうやら効いてるみたいだな。)
「お前ホラー映画にでも出たらどうだ?結構売れるかも…よ!」
掴んでいた手を離し、左足を軸に回転して右足で後ろ蹴りを叩き込む
「ごはぁ!」
やつは勢いよく吹き飛んでいき、その衝撃で木が薙ぎ倒される
「うわ…またやっちゃった…だけどなんか体が動くぞ?」
前世では全然こういった動きができなかったが今ではすんなりとできる。
(身軽さも強化されてるのか?前世なら多分さっきの蹴りなんて足上がらずに股関節痛くなってるだろうな…。試しにi字開脚でもしてみるか…いや、やめとこう…恥ずかしいし今着てる服スカートあるからパンツ見えてしまう…後で何色なのか見とこ…。)
「ガイアさん!」
「アイン!無事だったんだな!」
「はい!他のみんなも無事です!」
「無事だよ…ってそれより!あのリリスをスキルを使わずに素手で圧倒するってガイアほんと何者なの?!あ、でも神だから当然か…。」
「ま、まあ落ち着けよ…。」
「落ち着ける訳ないでしょ!?だってリリスって神の軍を返り討ちにするぐらい強いんだよ!」
「嘘…そんな強いの?あいつ。」
「それぐらい強いんだよ!あいつ!」
「お、おう…とりあえずわかった…。」
(はあ…なんか色々疲れた…とりあえずかえ)
グシャッッッ
その音が聞こえた瞬間、俺の頬に鮮血が飛び散る
「!?」
音が聞こえた方を振り返ると
首から上のない四人の姿があった
「ごめんねぇ?殺っちゃったぁ…♡」
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