「幼馴染み=負けヒロイン」と言う方程式は、俺の青春において絶対にあってはいけない!!

烏の人

第1話 負け組

「俺は幼馴染みのことが好きだ。が、そいつは別の奴のことが好きだ―――――。」


 よくあるようなすれ違い。よくあるような勘違い。そこから拗れる三角関係。誰にも言えずに秘め事になる。女々しいと言う自覚はある。だが、誰になんと言われようと俺は自信をもって言える。


「でもまあ、あいつが幸せなら俺はそれでいいよ。」


「先輩、女々しいっスね。」


 俺に火の玉のストレートを投げてきたのは後輩の荒川あらかわ 茉里まつりだ。訳あってつるむようになり、今ではこうして放課後の教室で話す程の仲になっている。


「なっ、そのくらい解ってんだよ!!でもしゃあないじゃん?あいつ別の奴のこと好きなんだから。」


 『あいつ』と言うのが件の幼馴染み。名前を七瀬ななせ 望結みゆと言う。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、と非の打ち所がない完璧超人…に見えて実は抜けてるところもある。そう言うところがどうしようもなく可愛い。


「解ってるんだったら当たって砕けたらいいでしょうに。ちょっとは楽になるっスよ?」


「頭じゃ解ってるよ。そんなこと。だけどさ、好きな人居るって明言されたらそりゃ応援するしかねぇだろ。」


「まあ、それに越したことはないっスけど…ちょっとは張り合ってやろうとか思わないんスか?」


「相手は九条くじょう れんだぞ?」


「あ、悪かったっス…。」


 九条 蓮。この学校で1番のイケメンであり、かなりの人格者。それ故慕う人も多いし無論モテる。そりゃ望結が惚れるのも納得って訳だ。だがまあ、接点は若干謎だがな。

 それでも奴に万人を惹き付ける魅力があるのは間違いない。そこで、俺の目標は1つだ。望結と奴をくっつける。それ以外ない。


「まあ、いいんだよ。俺は俺でのらりくらり生きてりゃさ。」


「高校生の悟り方じゃないっスね。」


「自覚はある。」


「じじ臭いっスよ?」


「…それは困る。まだ17なんだから。」


「ま、自分は先輩らしくて良いと思いますけどね。」


「君は俺を貶してるのかい?それとも慕っているのかい?」


「どちらかと言うと遊んでるっスね。」


「ひでぇ後輩だな。」


「まあ、楽しけりゃ良いんじゃないんですか?」


「それはそう。」


「まあ、良いっスよ。七瀬先輩と九条先輩。くっつけちゃいましょうか。」


「協力してくれるのか?」


「それが先輩の望むことなら、楽しそうですし。」


 その言葉に引っ掛かった。楽しいか楽しくないかで聞かれれば楽しくなんてない。だけどそうしたいのには理由がある。このままなんて苦しいし、好きな人が悲しむのも見たくない。とっとと遠ざけてしまいたいと言うのが本音だ。


 まあ、良いさ。負け組の青春。ここから面白くしてやろう。

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「幼馴染み=負けヒロイン」と言う方程式は、俺の青春において絶対にあってはいけない!! 烏の人 @kyoutikutou

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