第7話 最強の仲間が出来ました

「リリアナ様、私…」


「カーラ様、誰しもが幸せになる権利があるのです。その権利を、誰かが奪うなんて決してしてはいけないのです。どんな理由があろうと」


 だからどうか、私が幸せになる権利も、奪おうとしないでね。そんな意味を込めて、彼女に伝えたのだが…


「私にも、幸せになる権利があるのでしょうか?」


「ええ、もちろんですわ!ただ、幸せになるためには、努力しないといけませんね。その為にも、まずはご両親に今まで酷い事をされていたことを、全部話してください。もし私に何か出来る事があったら、協力いたしますわ。ただ、私は協力するだけ。結局は、カーラ様自身が、ご自分を幸せにしなければいけませんが」


「私自身が、私を幸せにする…その様な事が、私に出来るのでしょうか?」


「それはあなた様次第ですが、私はきっと、あなた様なら出来ると信じておりますわ」


 イザベルの為ならどんな苦労も惜しまなかった、根性の持ち主だものね。本当にあの執念はすごかったわ…あの根性と執念があれば、きっと自分を幸せにする事くらい出来るだろう。私はそう思っている。


「ありがとうございます…私、頑張りますわ」


 少し恥ずかしそうに笑ったカーラ。あら、笑うと可愛い顔をしているじゃない。


「その笑顔、とても可愛らしいですわ。カーラ様は、笑っていた方が可愛いのですから、どうか笑顔を忘れずに。それでは、失礼いたしますわ」


「リリアナ様、ありがとうございました」


 ペコリと私に頭を下げるカーラに、笑顔で手を振る…て、私は一体何をしているのかしら?


 カーラは私の嫌いなキャラナンバー2なのよ。そんなカーラを助けるだなんて、私はおバカなの?


 でも…


 あんなに辛い顔をしていたカーラが、最後には笑ってくれた。だから、まあいいか。


 翌日

「お嬢様、カーラ様がお見えになっております」


「えっ?カーラ様が?」


 昨日の今日で、お礼でもいいに来たのかしら?そんな思いで、カーラの待つ客間へと向かった。


「お待たせしてごめんなさい」


「リリアナ様!昨日は本当にありがとうございました。あの後、両親に昨日の事はもちろん、今まで兄にされた事をすべて話しましたわ。どうやら兄は、私の専属メイドたちを買収していた様で。激怒した両親によって、私の専属メイドたちは総入れ替え、さらに兄も、反省させるため、しばらく領地で暮すことになりましたの。両親からは、何度も謝罪されましたわ。全てリリアナ様のお陰です」


 嬉しそうに私に話しかけてきたのは、カーラだ。


「私は何もしておりませんわ。カーラ様が、ご両親に気持ちをぶつけたから、ご両親もあなた様の気持ちに寄り添って下さったのでしょう。それにしても、あのろくでなしカルロスは、領地に飛ばされたのね。いい気味だわ」


 ちなみに昨日、カルロスと一緒にカーラを虐めていた令息たちの家にも、改めて抗議文を書いておいた。今日くらいに、カーラの家に謝罪に行くだろう。


「本当に、いい気味ですわね。それもこれも、全てリリアナ様のお陰ですわ。リリアナ様、私をあのろくでなしから救って下さり、ありがとうございます。このご恩は、一生忘れませんわ。あなた様の為なら、この命を捧げても構いません。どうか私と、お友達になってください」


 ん?このセリフは確か…


 “イザベル様のお陰で私は、兄からやっと解放されましたわ。このご恩は一生忘れません。あなた様の為なら、この命を捧げても構いません。どうか私とお友達になってください”


 間違いない、カーラがイザベルに言ったセリフだ。その言葉通り、カーラはイザベルの手となり足となり、せっせと動いていたのだ。


 あら?もしかして私、カーラの心を開いてしまった?という事は、イザベルの右腕でもあるカーラは、もう私の味方って事よね。


 ただ…


「カーラ様、ぜひ私もあなた様とお友達になりたいですわ。でも、友達とは対等なものです。ですのね、私の為に命を捧げていただかなくても結構ですわ。どうかあなた様は、あなた様のお幸せを考えて下さい」


 私は腹黒イザベルの様に、彼女を利用するつもりはない。せっかくカーラの心を開く事が出来たのだ。それにカーラは、心を開いた相手を絶対に裏切らない。そう、貴族令嬢とは思えない程の忠誠心の持ち主なのだ。


 そんなカーラが私の味方になってくれたのだなんて。こんな心強いものはない。


 その後、カーラと色々な話をした。恐ろしい女だと思っていたけれど、話しをしてみればとてもいい子だった。この子となら、今後も仲良くやっていける、なんだかそんな気がした。


 漫画の中でのカーラは恐ろしい女だったが、もしかしたら彼女も、イザベルに毒された被害者だったのかもしれない。


 嬉しそうに話をするカーラを見つめながら、ついそんな事を考えてしまうのだった。

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