第6話 ざまぁみろですわ
目を大きく見開き、信じられないと言った表情のミュースト侯爵と夫人。さらに話を続けた。
「まさか実の妹にあのような酷い言葉を投げかけ、さらに友人たちと一緒に暴力をふるっているだなんて…私は非常に不愉快でしたわ。それも王宮で、あのような外道な事をなさるだなんて!ミュースト侯爵様、どうかカーラ様のお話を聞いて差し上げて下さい。彼女は以前から、カルロス様に酷い事をされていたのではありませんか?そもそも、大人しいカーラ様が、どうしてドレスが汚れ、髪が乱れるのですか?おかしいと思いませんか?」
「父上、リリアナ嬢のおっしゃっている事は真実ではありません。彼女はカーラを庇って、嘘を付いているのです」
「私が嘘を言っているですって?それなら、カーラ様のこの傷は一体誰が付けたのでしょうね。体を調べれば、あなた様から受けた暴行の後が残っているはずですわよ」
「それは…その…」
「私が嘘を言っているとおっしゃるのなら、それで構いませんわ。ミュースト侯爵様が、どちらの言う事を信じるのかは、侯爵様に任せます。映像でも残しておけばよかったのですが…そうですわ、もしかしたら王宮使用人の中に、目撃者がいらっしゃるかもしれません。すぐに王太子殿下にお願いして、調査をして頂きましょう。そうすれば、私が嘘を申していないという事が、証明できますわね」
名案だと言わんばかりに、手をポンと叩いた。
「お待ちください、リリアナ嬢。その様な大事になっては、それこそ大変な事態になります。カーラ、リリアナ様がおっしゃっている事は、本当なのかい?」
ミュースト侯爵が、カーラに優しく話し掛けた。
「は…はい、本当です。ずっとお兄様から、暴力を受けておりまして…」
すっとドレスをめくると、いくつかのアザがあった。これは酷い…
「何だこのアザは!カルロス、これは一体どういうことだ!」
「可哀そうに、この様なアザが出来ているだなんて…今すぐカーラの専属メイドを集めなさい。こんなアザが出来ていたにもかかわらず、私たちに何も報告をしなかっただなんて!」
専属メイドたちは、カルロスに買収されていたから、カルロスに不利になるような証言を、侯爵や夫人に話す訳がないだろう。
「侯爵様、夫人、急に押しかけたうえ、色々と出しゃばった事を申してしまい、申し訳ございませんでした。ですが、どうかもう少し、カーラ様の事を見てあげてください。それから」
スタスタとカルロスの方に向かって歩いていく。そして
「カルロス様、もしまたカーラ様を虐めたら、私が許しませんから!それだけは覚えておいてくださいね」
にっこり微笑み、そう伝えてやった。なぜか腰を抜かすカルロス。なんて腰抜けなのかしら。
「それでは失礼いたします。カーラ様、何か困ったことがあったら、何でも相談してくださいね。それでは、私はこれで」
そう伝え、ミュースト侯爵と夫人に頭を下げると、そのままクルリと反対方向を向いて歩き出す。少しお節介だったかしら?でも、なんだかすっきりしたわ。
これであのろくでなしカルロスも、両親からこってり絞られるはずだ。ザマァあみろだわ。
なんだか心がすっきりしたし、家に帰ろう。
そう思い、馬車に乗り込もうとした時だった。
「リリアナ様」
声の方を振り向くと、そこにはカーラの姿が。どうやら走って来た様だ。
「リリアナ様、本当にありがとうございました。なんとお礼を申し上げたらいいか…」
「お礼なら必要ありませんわ。後はあなた様次第です。どうかご両親に、ご自分が今までされた事をしっかり伝えて下さい。きっと今のご両親なら、あなた様のお話を聞いて下さいますわ」
「あの…どうして私なんかを助けて下さったのですか?私は見た目も美しくないし、それに口下手で、人との付き合いも苦手で…本当にダメな人間なのです」
「あなたはダメな人間なんかじゃないわ。さっきだって、私に迷惑を掛けない様に、1人で屋敷に戻って行ったでしょう?あのろくでなしカルロスに酷い目に合わされるとわかっていたのに。あなた様は気遣いが出来る、素敵な令嬢よ。だからどうか“私なんか”なんて、悲しい事を言わないでください」
あのろくでなしカルロスのせいで、今まで散々傷つき、涙を流してきたのだろう。もうあんなクズの為に、泣く必要なんてないのだ。
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