第11話 2度目の遺跡探索

「はあ……はあ」


 僕たちが戻ってから3時間半後、遺跡から戻ったジェラルドは深いため息を2度吐くと、溶けるように椅子に腰下ろした。察するに遺跡内に宝のひとつも無かったことがショックなのだろう。


「まあまあ、遺跡で何も見つからないというのは、特段珍しい話ではないのだろう」

「そうよお父さん。そこまで落ち込む必要はないわ」

「ん? 何の話だ?」


 アルフとリリアの言葉に目を丸くしたジェラルドに、僕たちも同じように首を傾げた。


「新しくできた遺跡のことですよ。何も見つからなかったでしょう?」

「いいや、あったぞ」


「「「へ?」」」

「それがとんでもなく“とんでもない代物”だったから困っているんだよ」


 まさかの展開だ。

 いやしかし、僕たちが遺跡に入った時には“とんでもない代物”と言えるほどのものは何も無かったはず。あったものといえば、古代神の石像があったくらいで――。


「あの古代神の石像、それも4柱全て揃っているなんて聞いたことがない。どうやって学会に報告すべきか……」


 アレ、そんなに凄いものだったのか。でも、リリアは何も言っていなかったような。


「そ、そうですよね! 私もそうかと思ったのですけれど、あまりに現実味が無くて、その――」


 あ、これ嘘か。

 ともかく、伝説級のお宝が見つかったわけなのでこの件は終わり。

 

「それで、リリアがここに来たのはもうひとつの遺跡が目当てじゃなかったか」

「そうでした。お父さん、ユリゴウリー遺跡の方も探索したいのだけど」

「ユリゴウリーか……あそこはとても危険なモンスターが湧いていてな。とてもじゃないが、お前たちだけでは」


 と、彼はそこまで言うと僕の方を見た。

 何かとても偏見めいた視線だが、きっと気のせいだろう。


「……まあ、大丈夫か」


 そんなことだろうと思ったよ!どうせ僕は人外ですよおだ!


 と、出ぬ涙を拭ったところで、僕たちは早速、前人未到のユリゴウリー遺跡踏破を目指して歩き出した。

 先導はもちろんこの方、ジェラルド先生。続くは目を輝かせるどころか涎を垂らしている娘のリリア、その背後には大して遺跡に興味のないアルフと、遺跡内の幅員は大丈夫だろうかと心配をする僕が続く。


 新しくできた遺跡とは違い、ユリゴウリー遺跡内はとても明るく視界も良好だった。しかし、もっと違うのは道が真っ直ぐではないということ。それは道が何方にも分かれているのみでなく、地面そのものが歪んでいてとても歩き辛く、その凹凸のせいで揺れているような錯覚に陥るのだ。


「厄介な遺跡だけど、聞いていたよりは魔物が出てこないな」


 そりゃまだ入ったばかりですからねえ。それに、そんなフラグを建てると――。


「お待ちかねの魔物よ、アルフ」


 ほら見たことか。

 現れたのはどの遺跡にも必ず存在すると言われている守護者、ゴーレムだった。


「2人とも気をつけて。ゴーレムは魔法攻撃に強いわ。私の魔法で少しでも鈍らせるから、その隙に斬って」


 リリアは素早く詠唱を始めた。彼女の手から放たれた氷魔法がゴーレムの脚を包み、動きを止めた。


「ああ、了解だ!」


 アルフは大剣を構え素早く前に出ると、その風の如くスピードで重厚な大剣で一閃を喰らわせた。


『グゴゴゴ……』


 ゴーレムの片腕はアルフによって大根のように切り落とされ、次の瞬間には巨体がガタガタと音を立てて崩れ落ちていった。


 僕の出番はナシ。だけど、この狭い場所で主砲を放とうものなら、爆風と弾丸やその他の破片が周囲に飛散したり、音や煙の影響で生身の2人に被害が及ぶだろう。

 

 もしかして、この遺跡探索で俺のやる事って無くね?!

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