第9話 2度目のレベルアップ
「血は繋がっていないのですけどね。そのあたり、リリアからは何も?」
「「はい」」
僕らは揃って彼女の方を向いた。リリアは罰が悪そうに目を逸らすと、話を変えた。
「それで、研究は順調なんですか?」
「もちろんさ……と言いたいところだが、日に日に謎が増えるばかりで何も解決しないんだ」
ジェラルドの話によると、遺跡内部の一箇所が以前よりも複雑になっているようで、その変化を探ろうにも変化する迷路が遺跡の内部まで入らせてくれないらしい。
「まるで生きているかのようですよ、あの遺跡は」
「私、この前の探索でね――」
ここから学者親子による専門的な会話が始まるのだが、僕らには理解不能だったのでカットする。
「そうか、リリアも頑張っているのだね。母さんには会っているのかい?」
「誕生日に会いに行ったわ。でも忙しそうだったからすぐに帰ったの」
なんだか複雑な雰囲気だ。
親子水要らずの中を壊してもアレだということで、アルフは村の宿に泊まり、僕はもちろん入れないので宿の外でエンジンを切った。そんな時、今日は静かだったナビさんが声を上げた。
【総走行距離が1000キロに到達しました。これにより、20ポイントを獲得しました】
走行距離でもポイントが貰えるのか。また新しい装備でも買うかなあ。
【現在のポイントで購入可能な装備リストを表示します。
〈30ポイント〉
機関銃 (7.62mm)
対空機関銃 (12.7mm)
装甲 (複合装甲、反応装甲)
〈20ポイント〉
煙幕発生装置
夜間視界装置 (赤外線カメラ)
〈50ポイント〉
対戦車ミサイル (TOW、Javelin)
通信装置 (無線、衛星通信)
火災制御装置 (レーザー距離計、弾道計算機)
残りポイント数は230ポイントです】
機関銃とかミサイルとか、買えなくはないけど燃料も心配だし……。夜間視界装置、か。これがあれば夜間の戦闘でも目が利くようになるし、ついでに逃走用の煙幕発生装置も買っておくか。
【計40ポイントを消費して、煙幕発生装置と夜間視界装置を購入しました】
ふむ、今日はエンジン切ったし、試すのは明日にしよう。
「ケンジ、起きて」
「僕はずっと起きているよ」
戦車は眠らない――が、なぜかこの美しい景色に見惚れ、ぼうっとすることはできる。リリアとアルフは早朝から僕を迎えに来てくれた。早くも遺跡の探索に向かうのかと思いきや、ふたりは深刻な表情を浮かべている。
「何かあったの?」
「実は村の中に遺跡があるんだ」
は?村の中?
確か遺跡はこの村の隣に位置していて、村人が作った囲いと遺跡自身が出す結界に守られているはず。
「遺跡って動くの?」
「いいえ、元々あったユリゴウリー遺跡は残ったままで、新しくできたみたいなの」
新しくできたって、一晩でええ?
どうにも信じられない僕は現場へ行ってみることにした。
昨晩まで何もなかったはずの場所に、異様な光景が広がっていた。薄紫の朝焼けが空を染める中、僕の目に飛び込んできたのは、石と苔に覆われた古びた遺跡であった。
その遺跡は、まるで時の狭間から引き出されたかのように、不意にその姿を現していた。巨大な石柱が立ち並び、その表面には無数の刻印が刻まれており、それらの紋様は、遠い昔の文明を物語るように、風にそよぐ草花と共に静かに佇んでいる。
集まった村人たちは驚きと好奇心に満ちた瞳で、その謎めいた構造物を見つめている。誰もが口を開くことなく、ただその場に立ち尽くし、空気には微かな緊張感が漂い、鳥たちのさえずりも一瞬止んだかのようだった。
「これは一体……」
「ケンジくんも来てくれたのか」
「ジェラルドさん、これはどういうことなんですか?」
「さて、私にもよく分からない。ユリゴウリーが広がったものなのか、あるいは新種の遺跡なのか……」
その道の専門家さえも首を斜めに振るレベルの奇跡。内部を調査しようにも、どんな危険が隠れているか分からず、ジェラルドさんは急遽冒険者ギルドへ依頼を出すことにした。
「申請を出して、審査が終わって、受理されて――となると王都の冒険者は来るのは早くても半月はかかるだろうな」
「じゃあ、私が行くわ」
リリアはその子どものような真っ直ぐな瞳で僕とアルフを交互に見たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます