第5話 オチ

「お前はここで待っていろ」


 当然、この身体では王都エリシアの街中に入ることはできず、文字通り門前払いをされてしまった。


「頼んだぞアルフ」

「だからその名で……はあ、まあいい。ここまできたからにはまかせてくれ」


 何とも頼り甲斐のある男だ。

 神官のいる教会は王都の大門をくぐってすぐの所にある。


 残りの燃料はどのくらいだ?


【はい、走行可能距離はあと10キロです】


 意外と結構あるな。でも、車で言ったらそこまででもないか。

 ということで、僕は彼らを待つ間、王都外壁の周辺で燃料補給をすることにした。狙うのは弱めで魔素量が多いやつ。ナビさん(色々と教えてくれる謎の声の主)に聞きながら周辺の魔物を狩った。

 

 まずは林の中にあったゴブリンの巣。


〈ドゴオオオン〉


【経験値500を獲得】


 放たれた砲弾は直撃。火だるまになって消滅していく緑色の友に心の中で敬礼をする。

 続いては空を飛んでいたワイバーンと思われる魔物。再び砲弾は命中、これが何とも気持ちがいい。


【経験値1800を獲得】


 こんな調子でしばらくの間狩を続けていたのだが、燃料も結構溜まったし、そろそろ飽きてきたので一旦大門の前まで戻ることにした。大門近くの林に停車すると、目の前には武装をした兵士や冒険者と思われる者たちが集っていた。まるで、何かの討伐に向かうように。


「先の大きな音で我々が把握していたゴブリンの巣が破壊され、また王都に近づいてきたワイバーンも撃ち落とされたと報告があった。これは未確認の魔物の仕業であると考えられ、危険が伴うことが予想されるので各員は一層気を引き締めるように!」


 討伐対象は、まさかの僕自身だった。

 逃げるにしてもアルフとリリアはまだ帰ってこないし、ここに居てもいずれは見つかることだろう。散々迷った結果、僕が出した答えは――。


【ポイント20を消費して『拡声器』を獲得しました】


「あ、あのお……」

「何だ?! どこからか声が聞こえるぞ!」


 すぐ近づくのは良くないと思ったので、ポイントで買った拡声器で話しかけて見たのだが、これがかえって警戒心を焚きつけてしまったようだ。


「実は皆さんが集まった原因は僕だと思いまして……」

「どこから話しかけている! 男なら堂々と姿を現せ!」

「いや、それなんですがね、僕の姿を見たら攻撃されるんじゃないかと怖くて」

 

 ここは「悪いスライムじゃないよ」的な雰囲気で優しく諭すように訴えかけてみる。


「いいだろう。そちらに交戦の気が無いのなら、こちらから手を出すことはしないと誓おう」

「では……」


 ガタガタとキャタピラを回し、彼らの目前に姿を現す。


「見たことのない魔物、いや亜人の類か……?」

「まあ、そんなところです。この身体を動かすには魔物を倒す必要がありまして、友人を待つ少しの間、狩をしていたのです」

「ふ、ふむ」


 腑に落ちない様子だが、その気持ちも分かる。なので懇切丁寧に事の経緯を説明した。


「なるほど、大変だったのだな。ではその友人とやらが戻るまで私が側にいてもよろしいか?」

「ええ構いません」


 部隊の隊長と思われるイケオジが話の分かる人でよかった。当然、まだ警戒はしているようで「どこから来たのか」「君は何者なのか」とマシンガン並みに質問を投げかけ続けた。

 それから1時間ほどが過ぎた頃、アルフとリリアが戻ってきたのが見えた。


「君たちが彼の友人かね?」

「え、ええ、まあ」


 2人に再度説明をし、隊長さんはやっと納得してくれたようで、討伐部隊を引き上げてくれた。そして、肝心の教会でのことだが――。


「それが、その、ただの胃下垂だとよ」

「はい?!」

「気持ち悪かったのは馬酔い、というかケンジ酔い? だったようで……」


 何だよ、そのしょうもないオチは。

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