第3話 初めてのレベルアップ
「いいから答えろ! 王都までの距離はどのくらいなんだよ!!?」
全身が熱くなるのを感じる。
救えないと分かっていても、このまま見殺しにしては気が治らない。
「早馬を走らせても2日はかかる。だがそれは天候も良く、魔物にも遭遇せずに行けばの話だ」
「……僕が連れて行く」
「何を言って――」
「僕なら彼女を救える!」
確信はない。確率で言えば半々といったところか。馬車で2日なら戦車のスピードなら、何もなければ半日ほどで着くだろう。問題なのは燃料だが、この車体はどうやって動いているのかよく分かっていない。
「ふん、勝手にしやがれ。途中で孵化したら責任を持って殺せよ」
「分かっている」
僕は少女を戦車の上に乗せて発進しようとした時。
「おい、どこへ行く」
「決まっているだろ、王都だよ」
「道は分かるのか?」
少女は小さく首を振る。
大剣の男は大きなため息を吐くと、僕の上に乗って地図を取り出した。
「な、なに勝手に――」
「道案内。要らないのか?」
誠に不本意ではあるが、彼も同行することとなった。別に車体に感覚があるわけではないが、搭乗員を乗せているとソレっぽくて良い。それに、旅は道連れなんとやらと――。
「止まれ」
「何だよ?」
「魔物の気配がする」
彼は立ち上がり、辺りを見回している。残念ながら今の車体には望遠機能は無いので、僕からはなにも見えないし感じることもできない。
「少し先にある湖にワイバーンの群れがいる。迂回するか、俺が先行して排除してくるしかない」
「できるの?」
「散らすくらいならな。だが、数が多いから襲われたら終わりだ」
具体的な距離が分かれば主砲をブッパできるんだけどな。どうやらこの世界では距離を測る単位は無いようだし、その手は使えないか。
【ポイントを10消費して『計測器』を獲得しますか?】
「うわあ! 何だ!?」
突然の機械音に思わず声を上げてしまった。
「どうした?」
「いや、何でもない」
どうやらこの声は僕にしか聞こえていないようだ。
それにしても計測器か。確かにこれがあれば距離計算の概念が存在しないこの世界でも役に立つだろう。だがこのポイントってのが気になる。残り何ポイントなのかも分からないし。
【残りポイント数は21です】
教えてくれた!
じゃあ、買いだな。
【10ポイントを消費して『計測器』を獲得しました】
おお、よく見えるぞ。でも望遠機能が無いと湖までの距離は測れない。
「もう少し近づいても大丈夫かな?」
「ああ、問題ないだろう」
計測器を使いつつ、距離の測れる地点までゆっくりと進んでゆく。
距離にして2キロ。ここが最大限の距離だろう。
「ちょっと君たち、今から大きな音がするから、岩の側まで行って両手で耳を覆ってくれる?」
「あ、ああ」
何とも訝しげな表情で、それでも素直に聞いてくれた。まあ、こんな訳もわからない物体の言うことだからな。
「よし、いっけええええ!!」
〈ドッゴオオオン〉
戦車の主砲が轟音を轟かせ、砲身から放たれる炎が空を舞い上げた。その一瞬、周囲の空気が振動し衝撃波が広がり、地面は震えた。砲弾は迅速に目標に向かって飛び出し、煙と破片が空を舞い、交錯した光と影とその力強い一撃が野原に響き渡った。
ひやああ、きんもっちいいい!
「何だ今のは!?」
口をあんぐりと開けるのは僕以外の2人。また、ワイバーンの群れも何が起きたのか分からぬまま、空高く飛び去って行った。
「よし、急ごう!」
僕の戦車としての異世界生活は、至って順調である。
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