Episode.17「進化する者達」

1


次の日....


「合同で、ですか?」


カズキの発言にクラウスは頷いて返した。


「アルファ・ブラボー・デルタの3チームで深層に潜り、出来るだけ奥地を目指す」

「チャーリーは?、レナードさんのチームはどうするんですか?」

「彼奴は、少し頭を冷やさせるべきだろ」

「確かに。今の彼奴じゃ闇雲に突っ込んで怪我するのが目に見えてる」

「・・・」


カズキは2人に何も返せなかった。何故なら昨日の戦闘で自分自身も感じていた事だったからだ。

だが、妙にレナードに対して冷たい2人に何かを言うべきだと、カズキは感じてはいた。


「明日、朝食が終わり次第行こうと思う。どうだ?」

「俺は問題ない」

「俺も、いけます」

「決まりだな」


ヴィクトルは鋭い表情のまま数回頷くと寄り掛かっていた机から身体を離して立ち上がるとクラウスの自室から出ようとした。するとクラウスはカズキの方を向くと若干表情を和らげた。


「カズキ。お前、俺達がレナードに冷たいと思ってるだろ」

「ッ!。....はい」

「・・・確かに、少し冷たいかもな。だが、彼奴は子供じゃない」

「⁉︎」

「自分で自分を制御できない様じゃ、ここから先は戦えない」

「それは、そうかもしれませんが....」

「・・・」


ヴィクトルはドアノブから手を離すと2人に背を向けたまま、


「カズキ。レナードの魔力は膨大だ。多分俺よりもかなり多い魔力を保持している」

「・・・確かに、あんなに凄い技を使えるんですから、保有量は多いかもしれませんが....」

「だからこそ、今のレナードには、自分を制御する事が必要なんだ。厳しい事言ってるかもしれんが、これが現実だ」


そう言うとヴィクトルはドアノブを捻ってクラウスの自室から退出した。


「・・・」

「本当、ヴィクトルは何でも分かってるんだな。だが、言ってる事は正しい」







『(ヴィクトルの言う通り、レナードの魔力は膨大だ)』

「え?」

『(膨大且つ強力。だが今のレナードには自分の欠点しか見えていない)』

「ミヅハノメ....」

『(自分の欠点を見つめ、克服する事は大事だ。だが見つめるだけでは、自分の欠点に嘆いているだけでは、何も変わらない)』

「・・・」

『(人を測る物差しは、1つじゃない。まずはそれを自覚する事だ)』


カズキは僅かに表情を険しくすると通路の窓から今にも沈み終えようとする夕日の断片に顔を向けた。


「晩飯の時間か。ミヅハノメ、定食なら何が良い?」

『(定食なら、唐揚げを)』

「了解だ。俺も丁度そう言う気分だったよ」

『(・・・カズキ)』

「?」

『(君はまず、自分を過小評価する癖を治した方が良いぞ)』

「突然話題が変わるな⁉︎。・・・過小評価も何も、周りが凄いんだから」

『(そこだそこ。君も自分を1つの物差しで測りすぎだ)』

「そう、....かも、・・・んん⁈」


ミヅハノメに言われた事にイマイチ納得が出来ないまま通路を歩き始めたカズキはいつの間にか食堂に辿り着いていた。

米のブースに並び、兵食班の班員に注文を済ませ、定食を受け取ったカズキは窓際の2人掛けに座ると唐揚げ定食に箸を付け始めた。


「なぁミヅハノメ」

『(ん?)』

「俺って、左手に武器を装着するって出来ないの?」

『(出来る)』

「あっそうなの?」

『(今の君なら左手に武器があっても充分に戦えるかもしれないな。次の戦闘から解放しよう)』

「ところでどんな武器だ」

『(拳銃と盾の複合武器だな)』

「拳銃と盾?」

『(実際見た方が早い)』

「わかった。楽しみにしてるよ」


そう言ったのち窓の外に広がる景色に目を向けながら定食を食べ進めた。そんなカズキの脳裏に1つの考えが過った。


(過小評価、か....此処に来る前の自分もそうだった気がする。記憶が無くなっても、身体に染み込んだものは、消えないんだな)







2


「何処も人手不足っのはわかりますが....」

「昨日の戦闘で3人殺られた。あと1ヶ月、持つかな」


ジョッキを置いたジョルジュはそう言うとツマミの刺身を口に運ぶアーロンの方を向いた。


「破壊者が現れたのを機に、向こうも本気を出して来たってところですかね?」

「まっ、そう考えるのが妥当だろうな」


そう言いながら串に刺さったねぎまを口で挟んで串から引き抜いたジョルジュは何処か悲しげな表情で噛み締めた。


「すみません」

「はいよ」

「ねぎまと皮2本ずつ、あとつくねも1本」

「あいよ。今焼いてるからな、少々お待ちを」


ジョルジュは頷いて返すと再びジョッキを手に持ち二口飲むと長めに息を吐いた。


「まぁ呑んでる時ぐらい、戦い事は忘れようぜ」

「それもそうですね。あっ、大将」

「はいよ」

「生1つと刺身の盛り合わせ追加で」

「あいよ」

「・・・にしても、」

「?」

「防衛隊ってこんなに福利厚生が充実してるのに、人増えないのなんで〜」

(アーロンの奴、酔い始めたな)


ジョルジュは苦笑いを浮かべながら何も無くなった串を置くと再びジョッキに手を伸ばし「なんでだろうな〜」と返したのち中身を飲み干した。


「なんかビール飽きたな。大将酒瓶2本、熱燗で」

「あいよ」

「ジョルジュも飲む気か〜。お互い、明日休みだもんな〜」

「だから誘いに乗ったんだろうが。非番の前日じゃなきゃ呑みには行かねぇよ」


酒がいい感じに入り始めた2人はそんな会話をしながら居酒屋の雰囲気に飲まれていった。







一方で....


夕食を終えたカズキは外灯に照らされる庭園のベンチに座りながら夜空を眺めていた。明るい外灯に照らされるせいか、夜空の星々は霞んで見えていた。


(俺の故郷、見えるのかな?)


そう思いながらそっと夜空に手を伸ばしたカズキは何処か悲しげな表情を浮かべた。


「カズキさん」

「?。あっ、サトミさん」


サトミは微笑むとカズキのもとへ歩み寄った。カズキは伸ばしていた手をそっと下ろすといつもの表情に戻った。


「隣、良いですか?」

「アッ、どうぞ」


サトミは再び微笑むとカズキの隣に座ったのち同じ様に夜空を眺めた。


「カズキさんって、別の惑星から来たんですよね?」

「多分、そうだと思います」

「どれが、カズキさんの故郷ですか?」

「・・・わかりません」

「そう、ですよね」

「でも、それで良いんだと思います」

「え?」

「過去なんて、忘れてしまったものは、どうでも良いんです。今此処で生きてるって事が、大事なんだと思います」

「カズキさん....」


夜空を眺めながら自分の考えを話したカズキは顔を降ろし、下を向くと自分の手の平に目を向けた。


「その通りだと、思います」

「え?」


自分の手の平から目を背けたカズキはサトミの横顔に目を向けた。


「この地で生き、私達と共に戦い、共に過ごしてる事が、大事なんだと思います」

「サトミさん....」


サトミは夜空から顔を逸らすとカズキと顔を合わせた。


「何だか、落ち着きますね」

「え?」

「サトミさんと一緒に居ると、心が落ち着きます」

「そう、ですか?」

「はい」


カズキの返事を最後に数秒の沈黙が2人を包んだ。

するとサトミの笑いを皮切りに2人は笑い合った。







「明日の深層は、どうなってるかな?」


資料室でマルールビーストのデータを漁って居たクラウスは端末と睨めっこしながらそう呟いた。


「お疲れ様です。クラウスさん」

「アニエス?」

「これ、差し入れです」

「ありがとうございます」


クラウスはアニエスから淹れたてのコーヒーを受け取るとじっくりと香りを楽しんだ。


(良い豆だ。しかも、丁寧にドリップしてる)


じっくりと香りを楽しむクラウスを見たアニエスは優しく微笑むとクラウスの隣に椅子を移動させるとゆっくりと腰掛けた。


「ジャイアントの上位互換でギガント級ってのも居るんだな」

「ギガント級は、強いです。ストライク1チームじゃ、到底太刀打ち出来ません」

「そんな怪物が居るとはな....ジャイアントですらかなり苦戦したのにな」


そう言ったのちカップに口を付けてゆっくりとコーヒーを1口飲んだクラウスはゆっくりと息を吐いた。


「カズキがこんな話をしてた」

「え?」

「“使命や義務で戦うのは違う”ってな」

「・・・」

「カズキは昨日の戦闘で、何か掴んだみたいだ」

「クラウスさんはどうです?」


クラウスは難しい表情を浮かべながらコーヒーを飲んだのち水面に写る自分と無言で目を合わせた。


「“尻尾を掴めた”。ってところかな?」

「え?」

「何となくなんだが、俺は此処に来る前、“偽り正義”で戦ってた気がするんだ」

「偽りの、正義?」

「上から押し付けられ、反論することも許されない“偽りの正義”。俺は表では従っておきながら、心の中は疑いと疑問が溢れて居た」

「・・・」

「だから俺は、此処に来た以上、偽りたくない。“自分だけの正義”を見つけ、それを貫く為に戦う。俺はこれまでの戦闘を振り返って、そう思った」

「・・・クラウスさん?」

「?」

「それって素晴らしい理由だと思いますよ。けど、なぜ“尻尾”なんですか?」

「“自分の正義”を見つけられてないからだ」


そう言うとクラウスはコーヒーを数口飲んだ。


「自分だけは、もう騙したくない」

「クラウスさん....」

「なんか暗い話になってしまったな」

「いえいえ。クラウスさんとお話しでき、クラウスさんの考えをしれるだけで、嬉しいです」

「そうか。ならよかった」


2人はコーヒーカップ片手に笑い合った。

本来なら何処か重苦しい筈の資料室の雰囲気が、何処か和やかだったのを笑い合う2人は感じて居た。







3


次の日....


濁流を降り、深層へと入り込んだアルファ・ブラボー・デルタの3チームは目の前に広がる風景を目に焼き付けた。


「渓流、ですね」

「前回よりも明るく、滝が多いな。こんなの初めてだ」

「確かに、深層にしては妙に明るいな」


そう言ったヴィクトルは目線をクラウスに向けた。カズキも同様にクラウスに目を向けるとクラウスは何かを察した様に頷いた。


「カズキ。チームを率いて先頭を頼む。俺のチームは最後尾から行く」

「了解」


カズキはチームを率いて前に出た。少し感覚を開けてヴィクトルのチームがそれに続いた。


(先頭って事は俺が道を決めるのか?)


表情を鋭くしたカズキは後ろを振り返るとサトミを呼んだ。


「サポートを頼む。どう進んで良いかよくわからん」

「わかりました。基本的には降ればOKです」

「了解」


(下に行けば行くほどビーストは強くなる筈。いきなりジャイアントなんかが現れたら面倒だぞ)


そう思いつつ辺りを目視で警戒するカズキ。そんなカズキの目の前に分かれ道が現れた。


「平坦な道か緩やかな降りか、急な降りか....」

「安全に行くなら緩やかな降りですね」

「うーん....」


(さっきは面倒とか言ったけど、少しでも奥に進むにはリスクを背負うべきか?)


「敢えて急で行くか。接敵に備えた方が良いな」


それを聞いたマツリらはデルニエフォルトを取り出すとすぐさま変身した。

後ろからそれを見て居たヴィクトルは軽く頷いた。


「リスク承知で近道を行くか。それはそれで面白い」

「面白いん、ですか?」

「俺はビーストを叩けるに越した事は無いからな」


カタリナにそう言い返したヴィクトルはほんの微かに笑みを浮かべた。







急勾配を降り、5分ほど坂を降るとカズキやヴィクトルの予想通り、マルールビーストの大群と接敵した。


「面倒なところにジャイアントが居るな。20、いや25メートルってところか....」


岩陰からマルールビーストの大群を見下ろすクラウスは頷きながら再び岩の裏側に隠れるとチームメンバーらと顔を合わせた。


「避けるのは無理ですか?」


カタリナの言葉に頷いて返したクラウスはカズキの方を向いた。


「増援が来る前に片付ける。援護するからジャイアントを叩いてくれ」

「了解。俺がジャイアント付近に奇襲を掛ける。俺とジャイアント、1対1の状況を作ってくれ」

「またそのパターンですか?」

「それだとカズキさんの負傷するリスクが」

「・・・良いんじゃない」

「え?」

「マツリさん?」

「何か考えがあるんでしょ」


カズキは頷いて返すとゆっくりと立ち上がり、崖上から移動中のマルールビーストを見下ろした。


「俺の班はビーストの先頭に奇襲を掛けて群れの動きを鈍らせる。先頭を歩く5メートルのグリードワンは任せろ」

「よし。ガエルとエルザはカズキのアルファを優先して支援。俺はヴィクトルのデルタを優先して支援する。他の3人は臨機応変に頼む」

「了解」

「了解です」


ヴィクトルは全身から魔力を放出すると両手に投てき用サイズの“シルバーダガー”を持ち、クラウスは同じ様に全身から魔力を放出すると【遠距離用の弓“ロングボウ”】を左手に構えた。

それを観たカズキは数回頷くと全身から魔力を放出し複合剣の“ミディアムソード”を右腕に装着し、ハンドル型グリップを握るとそれを構えた。







カズキが脚に魔力を溜めたのを合図にヴィクトルは崖から飛び降り、足の裏に貯めた魔力を使って空中ダッシュするとグリードワン級に向けて2本のシルバーダガーと投てきし、頭部と心臓に命中させると“ヴァーチェランス”を召喚し両手に構えるとグリードワン級の頭部を斬り飛ばし、絶命させた。


(今だカズキ。殺れ)


ヴィクトルの思いに従うカズキは仕掛けた。

複合剣のレールに装着された単発式のランチャーがジャイアント級に向かって放たれると同時に弾頭がジャイアント級の頭部に命中した。

するとカズキは魔力を使って急降下すると3体のミディアム級を素早く上下真っ二つに斬り裂いた。


「ミヅハノメ。いけるか?」

『(ああ)』


カズキは左腕に【拳銃と盾の複合銃“ノーマルピストル”】を装着するとスモール級の頭部を撃ち抜いた。


「!」

「カズキさんって左手にも武器を⁉︎」

「身体を鍛えてたから、扱える力が増えたのかもしれないわね」

「カズキさん、いえ破壊者達の力は、奥が知れませんね」


ミサキ達の反応に耳を傾ける暇もなく、カズキは右腕に装着された複合剣の盾でミディアム級の弾幕を防ぎながらノーマルピストルでスモール級の頭部を撃ち抜くと両腕から武器を消滅させたのち魔力で高速移動するとジャイアント級の脚を駆け上がったのち胴体をジャンプで登った。


(これでも喰らえ)


そう思いながら左腕に“リボルバーショット”を装着すると盾の先が打突兵器の様に尖ってる事を利用してジャイアント級の右眼に突き刺し、自分の腕ごとジャイアント級の右眼に押し込むと弾が切れるまで引き金を引いた。ジャイアント級の両手を避ける様に左手を引き抜き、真上に飛び上がったカズキは右腕に“バスターソード”を装着するとジャイアント級の右腕を肩ごと切断したのちレールにランチャーを装着させ、切断口に弾頭を撃ち込みジャイアント級を絶命させた。


「凄い....」

「あのジャイアント級を、あんなにあっさりと....」


マルールビーストを下敷きにしながら倒れるジャイアント級に背中を見せながら着地したカズキは右腕に“ノーマルソード”、左腕に“ノーマルピストル”を装着するとマルールビーストに斬り掛かった。

ヴィクトルとカズキが順調にマルールビーストを狩る中、支援に特化しようとして居たクラウスは別働隊に包囲されて居た。


「クラウスさん!」

「大丈夫だ。問題ない」


そう言うとクラウスはロングボウを消滅させると両腕に装着された“アローアームド”から魔力製の矢を出現させると下投げで投てきし、スモール級の頭部に命中させるとその隙をついてアローアームドから“マジックブレイド”を出現させると二刀流で次々とマルールビーストを焼き斬って行った。


「ブレイドの展開が前より早い」

「攻撃スピードも、上がってる」

「凄い....」

「なんて戦闘力」


ストライクブラボーの面々が驚きの声を挙げる中、クラウスは次々とマルールビーストを焼き斬った。

そしてマジックブレイドを消滅させたクラウスは右腕に装着されたアローアームドに埋め込まれた球体状のクリスタルと左手の平で転がし、炎を右腕に纏わせると真上に飛び上がったのちラージ級の顎にアッパーを喰らわせたのち身体を回転させたながら炎の勢いを強くすると回転の勢いを利用してラージ級の頭部を思いっきり殴ったのち内部に炎を注入させ、ラージ級の頭部を内部から焼失させるとラージ級を絶命させた。


「こんな攻撃法があったとはな」

『(色々試してみると良い)』

「サンキュー」


カズキやクラウスが次々とマルールビーストを狩る中、ヴィクトルも自身の獲物を探して動いて居た。

既存の戦力を他の奴に任せ、新手で迫るマルールビーストの群れを目の前にしたヴィクトルは召喚した魔導書片手に右手を前に出し、呪文を唱えると自分の周りに複数の砂嵐を起こした。

砂嵐の砂粒は互いにくっ付くとヴィクトルが呪文を唱え終わる頃には石となって居た。

ヴィクトルは右手を伸ばし切る様に前に出すと自分が魔力で生成した石をマルールビーストの群れの頭上に移動させると右手を振り下ろした。


「“ストーンレイン”」


呪文名を唱え、右手が振り下ろされると同時にマルールビーストの群れに降り注ぐ石はマルールビーストの皮膚を破壊し、身体の内側に入り込み、血飛沫を上げさせた。


「何あれ⁉︎」

「新しい、魔法?」


ヴィクトルを追って来たストライクデルタの面々は何十体ものマルールビーストが石の雨になす術なく血塗れになるのを観て驚きを隠せなかった。


「・・・」


ヴィクトルは魔導書を消滅させると跳躍でチームメンバーと合流するとカズキらの方を見たのちクラウスらの方を見た。


「俺達の仕事は、終わりだ」


何処か冷たい声でそう言ったヴィクトルは無表情のまま坂を降った。







4


「「「・・・」」」


アルファ・ブラボー・デルタの副リーダーは無惨に転がるマルールビーストの死骸や残骸を見て言葉を失った。


「全員無事か?怪我した奴は居るか?」

「平気よ」

「大丈夫です」

「問題ありません」

「大丈夫です」

「大丈夫です」


カズキは頷いて返したのちクラウスのストライクブラボーの方を向いた。


「凄いな。クラウスさん」

「貴方も充分凄いですよ」

「・・・今更ながら思ったよ」

「え?」

「コイツは途轍もなく危ない力だ。使い方間違えると、ヤバい」


真剣な表情に悲しさと恐怖心を混ぜた様な顔を浮かべたカズキは僅かに俯いた。


「これから少しずつ学んでいけば良いのよ」

「そう、ですね....」

「折角これだけの戦果を挙げたんです。もっとシャキッとして下さい」


ミサキの発言に苦笑いを返したカズキはクラウスと目を合わせたのち頷き合うと深層の奥に向かって歩いた。


(“破壊者”。奥が知れませんね。・・・間違いなくカズキは、)

(限界ナシの力....クラウスさんは)

(まだまだ力を出しきれてない感じ、ヴィクトルは間違いなく)

(((“進化”している)))


3チームの副リーダーは各チームの破壊者の背中を見ながら同時にそう思った。


限界を見せずに“進化”し続ける存在、

破壊者はそう言うものかもしれない。とも、彼女達は思った。

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