Episode.15「戦う理由 前編」

1


「・・・?」

『カズキ』

「?、ミヅハノメ」


カズキが振り返った先には身長を5メートル程にまで縮小し、後頭部の襟足からアクアブルーの長髪を生やすミヅハノメが居た。

何度も来た事のある水縹色の空間で顔を合わせて居た2人は足音のする方を向いた。

2人の視線の先には、アサルトライフルをスリングで吊し、マークスマンライフルを背負った特殊部隊風の男が居た。


「君がハチロク、86番目の破壊者か....若いな。未成年か?」

『君と一体化した時、君も未成年だった』

「そういえばそうだったな」

「あの、貴方は一体?ミヅハノメの、....まさか貴方は、破壊者?」

「ミヅハノメ?俺の時は“シュリュクシオン”じゃなかったか?。てか、そう名乗らなかったか?」

『場所や時間軸が違えば変わる』

「ふ〜ん....」

「あの、貴方は?」

「カズキ君、だったか?」

「あっ、はい」

「俺は“ベルナール”。此奴と1番最初に一体化した、“最初の破壊者”だよ」

「⁉︎」


カズキは酷く驚くと一歩後ろへ下がった。

ベルナールは微かに笑みを浮かべるとミヅハノメの方を向いた。


「随分と外観が変わったものだな」

『何人もの人間と、一体化してるからな』


ベルナールは納得行った様な表情を浮かべながら数回頷くとカズキの方を向いた。


「カズキ」

「は、はい」

「君に1つ聞きたい」

「?」

「君が戦う理由は、何だ?」

「戦う、理由?」

「そうだ」


カズキは微かに表情を鋭くすると数秒考えたのち、


「破壊者として間違いを破壊」

「ダメだな」

「え?」


カズキの言葉を遮る様にベルナールはそう言うとより一層表情を鋭くした。


「“使命”で戦ってるうちは、君はこれ以上強くはなれない。それに、此処から先来るであろう脅威にも立ち向かえない」

「⁉︎」

「戦う理由っていうのはそれだけ重要なんだ。他には?」

「・・・俺は、俺は隊長として仲間を」

「ダメだダメだダメだ。誰かを護るってのも違う。・・・もっと根本的な理由が必要だ」

「根本的な?」

「与えられた“使命”や“役割”・“義務”・“立場”でもない。もっと言えば、“与えられた”ではなく“自分で見つけた”、が必要なんだ」

「・・・」

「自分で見つけた戦う理由。次に会った時に教えてくれ」

「ッ、待って!待って下さい!」


カズキの静止に聞く耳を持つ事なく、ベルナールは光の中へ消えた。







「ッ!」


カズキは毛布を蹴り飛ばしながら飛び起きた。

酷く息を切らした状態でカズキは顔を右手で覆うとそのまま俯いた。


「戦う....理由....」


そう呟きながら息を整えるカズキ。

ゆっくりと顔を挙げたのち目付きを鋭くしたカズキは声にならない声を小さく挙げた。


「・・・」


息を整えたのちカズキは大きく息を吸ってゆっくり吐くと手を顔から外した。


「ミヅハノメ」

『(どうした?)』

「ベルナールさんが言ってた“与えられた理由で戦うのは間違ってる”って、本当なのか?」

『(本当だ)』

「・・・他の破壊者は、どんな理由で戦ってたんだ?」

『(それを知るのはまだ先だ。今は、自分の理由を探すんだ)』

「参考にしたいんだが?」

『(こういうことは参考にしてはならない。自分の力で見つけ出すんだ)』

「・・・分かった」


カズキは軽く溜息を吐くとベッドから起き上がったのち身支度を整えようと洗面所へ向かった。


(戦う理由、か。....俺だけの、戦う理由。義務や立場、使命とは違う何か....)

(悩めカズキ。これに関しては皆んな迷う、悩む。だが悩んで足掻いて出した理由は、きっと筋の通った良いものになる)







2


「とは言ってもな〜」


部屋を出たカズキは食堂に向かって歩く道中でそう呟くと天井を見上げた。


「誰かを護りたいってのは、駄目なのか?」

『(1つアドバイスすると、それは間違ってはいない)』

「?」

『(それを根本から支えるモノが必要なんだ)』

「根本....」


カズキは口元に右手を添えて考えた。すると突然、誰かがカズキの背中を軽く叩いた。


「?」

「朝からそんな考え込んで、どうしたの?」

「マツリさん」

「色々考えるのは朝食終わってからの方が良いわよ。頭が回ってない状態で考えても、何も良い事ないわよ」

「・・・そう、ですね。そうですよね」


カズキは口元から手を離すと微かに笑みを浮かべながらそう返した。


(けど、考えちまうんだよな。これって、かなり重要な事だと思うから)


そう思ったカズキはマツリの後ろを歩くと再び鋭い表情を浮かべながら考え込んだ。

“根本的な何か”。それがカズキには分からなかった。


「何悩んでるんだ?」

「?、クラウスさん」


カズキ同様に食堂に向かおうとして居たクラウスはマツリ同様、カズキに声を掛けた。

カズキはクラウスに自分が今悩んでる事を掻い摘んで話した。


「成る程な。それは確かに悩むな」


クラウスは口元に手を添えると数秒考え、


「俺達含め、兵士なら誰しもがぶつかるであろう壁だな。確かに使命や義務などとは別に、自分で見出した理由が必要だ」

「クラウスさんは、何かあるんですか?」

「俺も今のところ使命で戦ってるって感じだな」

「そう、ですか」

「ありがとな」

「え?」

「俺も、自分の壁に気付けた気がする」

「・・・」

「さっ、朝食済ませて、やる事片付けよう」

「はい!」







朝食を済ませてトレーニングに入ってからも、カズキの頭の中は同じ事でいっぱいだった。


(理由....戦う理由....)


重りの入ったバックパックを背負いながら只管坂を駆け上がるカズキ。そんなカズキを後ろから見ていたシオリはある違和感を覚えた。


(何か考え込んでる?。うーん、こういうフィジカルトレーニングをしながら考え事をするのって、あまり良い事ではないのだけど....)


そう思いながらシオリはカズキの後ろを追走した。

坂を登り終え、緩やかな降りに突入した頃、カズキは目を鋭くすると若干ペースを上げた。


(見つからない答えたばかり考えても意味がない。今はとにかく、トレーニングに集中だ)


カズキは頭を切り替えると只管坂を降ると平坦に変わった道を駆け抜けた。


(ペースが上がった?。重り増やしたばかりなのに、大丈夫かな?)


シオリの心配を他所に、カズキはラストコーナーを抜けると下り坂を降った。

坂を暫く降ると、マツリとサトミの視界にカズキが映り込んだ。


「あの様子ならバックパックの重りを15キロから20キロまで増やして、足の重りを5キロずつまで増やしてもそれなりに走れるかもしれないわね」

「トレーニング開始からまだ1週間近くした経ってませんが凄い勢いで筋力やスタミナが付いてますね」

「恐らく、破壊者の加護があるのかもしれないわね」


そう言ったのち坂を降って来るカズキにマツリは鋭い目付きを向けた。

カズキは何も気にする事なく夢中で走っていた。


「これで4本目。流石に疲れが見え始めたしたね」

「・・・予定では6本だけど、今回は走れるところまで走らせてみましょ」

「え⁉︎」

「今は、下手に何かをさせるより、1つの事に集中させた方が良い気がするわ」

「・・・」


サトミは心配そうな目でカズキを見た。が、そんな事気にする事なく、カズキは最初の急勾配を登り始めた。


結構カズキは8周目を終わらせたところで膝から崩れた。それを見たマツリは、周回終了をカズキに伝えた。







3


2日後....


「そうか....」


ハーシュルから報告データを受け取ったアーネストはホログラムデータを閉じるとハーシュルに目を向けた。


「先日討ち漏らしたグリードワン級捜索の為にストライクチャーリーチームが連日深層に潜ってますが、痕跡すら見つけられない様です」

「休息を終え次第、午後も出撃するとあったな」

「はい。・・・少し無理をし過ぎな気もしますが....」

「奴らはもう子供じゃない。自分で考えて行動出来るはずだ。ただ、1つ言えるのは」

「?」

「敵は二頭身のグリードワンだけじゃないって事だ」


そう言うとアーネストは椅子から立ち上がり数歩歩くと窓から外を見た。


「1つの事に囚われていては、見えるモノも見えては来ない。奴らがそれに気付けるかどうかだ」


アーネストが放った言葉を前に若干俯いたハーシュルは自分の端末に新たな連絡メールが届いた事に気が付くと中身を確認した。


「指揮官。ストライクアルファチームが午後一で深層に出撃するとの事です」

「約1週間ぶりか?。そこまでカズキが出来てきた、と言う事か」


アーネストは静かに煙草を取り出し、口に咥えるとほんの一瞬、僅かに表情を鋭くすると咥えていた煙草を指で摘んで口から離すとハーシュルの方を向いた。


「ストライクの事は現場に任せる。ただ、訓練科の方で何かあればすぐに報告しろ」

「わかりました」

「行って良い」

「ハッ」


ハーシュルはアーネストに敬礼したのちドアを開けると静かに退出した。

それを見送ったアーネストは再び煙草を咥えると火を付けた。







「クラウスさん。ジャイアント級の討伐、お見事です」

「アルファチームがラージ級率いるミディアム級の大群を対処してくれたお陰だ。ありがとうな」


深層から帰還した彼らは放水路に似た防衛ブロック内部を歩きながら深層から遠ざかった。


「ジャイアント級を倒したあの炎を纏った弓。力が底知れませんね。ところでガエルさん」

「?」

「良い加減、自己犠牲に走るの辞めてくれませんか?」

「別に悪い事はしてないつもりだが?」

「・・・」


ストライクブラボーチームを見送ったカズキは後ろから着いてくるマツリらに顔を向けた。


「貴方ももう少し自分を大切にしなさいよ〜」

「多少力に慣れて来たからって、無理は禁物ですよ」

「わかってるつもりではいる」

「つもりでしょ?つもりじゃダメ」

「・・・」


カズキは僅かに考え込む様な表情を浮かべると「地上に、戻ろう」と言ったのち彼女達の前を再び歩き始めた。


「・・・」

「今日のカズキさん、なんだか少し様子が変ですね」

「今日だけじゃなくて3日ぐらい前からだと思うけど」

「やっぱり、マツリさんも気が付いてたんですか?」


マツリはシオリの方を向くと静かに頷いて返したのちゆっくりとカズキの方を向いた。


「・・・兵士なら誰しもが当たる壁、それにぶち当たったってところかしら?」

「壁?」


サトミの問い掛けを前にマツリは敢えてそれ以上何も言う事なくカズキの後を追った。それに続く様にシオリ達も歩き始めた。

するとレナード率いるストライクチャーリーチームも深層から帰還した。


「クッソ。ダメか....」

「レナードさん....」


先日討ち漏らしたグリードワン級を見つけられない事への怒りを抑え切れないレナードは荒い息を吐きながら歩き始めた。


「聞く耳持たずね....グリード級3体倒しただけでも充分な戦果に思えるけど....」

「1つの事に囚われ過ぎね。・・・昔の自分を見てる気分ね」

「どうするの?」

「・・・」


僅かに呆れた表情を浮かべながら溜息を吐いたセシリアはゆっくりと歩き始めた。


「・・・」


ソフィアも溜息を吐くとセシリアに続く様に歩き始めた。







その日の夜....


ガヤガヤとにぎあう居酒屋のカウンター席でアーネストは盃、ミッシェルはジョッキを片手に持つと酒を吸う口呑んだ。


「ストライクは順調ですか?」

「そうでもねぇ」


そう答えたアーネストは盃を置くとツマミの刺身を箸で摘むと醤油に付けたのち口の中に入れた。

ミッシェルはジョッキから手を離すと唐揚げを箸で摘み、口の中に入れた。


「ブラボーとデルタは比較的マシだ。まぁデルタに関しちゃもう少し深層に出ろって気もするがな」

「ヴィクトルだけは、何考えてるのか掴めないですね」

「ディフェンスの指揮官が何言ってんだ」

「問題はアルファとチャーリーですか?」

「アルファもマシな部類だ。チャーリーが、ちょっとな」

「?」

「脅威を排除しようとするのは結構だが、....」

「ん?」


アーネストは酒瓶の中身が少なくなってる事に気が付くと、


「すみません」

「はいよ」

「酒瓶2本と天ぷら盛り合わせ追加」

「あいよ。少々お待ちを」

(話の途中にツマミと酒の追加かよ)

「んで?」

「チャーリーがどうしたんだ?」

「んああ、それか。カズキは乗り越えなきゃならない壁に気が付いただけマシだ」


そう言いながら酒瓶から盃に酒を注ぐとアーネストは酒瓶を置き、盃の中身を1口呑んだ。


「レナードはそれにすら気付けてない。チームメイトも手を焼いてる様だ」

「ほお〜」

「アルファとチャーリー、状況的に似てはいるが正反対だな」

「確かにな。カズキは身体は出来てないが精神は出来始めてる。レナードは逆に思えるな」


アーネストは盃を置いてツマミの刺身を口に運ぶと僅かに難しい表情を浮かべた。


「まっ、ストライクの事は現場に任せるさ。問題は」

「訓練科の方か」

「ああ。ジェームズが煩くてな。あと、アーロンとエイハブからも増員要請が止まないらしい」

「そうは言ってもな〜。今防衛隊は、何処も人手不足だからな〜」


そう言ったミッシェルは空になったジョッキを置くと何処か寂しげな表情で天井を見上げた。


「まっ、なる様にしかならねぇだろ」

「ですね」







一方で、


ベッドに横たわったカズキは天井を見つめてながら考えていた。


「根本的な、か....」

『(ずっと悩んでるな。今だに糸口すら見えないか?)』

「ああ。“仲間を護りたい”・“使命を真っ当したい”ってのはあるんだが、これを根本から支えるモノって言われてもな〜」

『(・・・どうやら、ヒントを掴める時が来た様だ)』

「え?」


カズキは目を見開くと身体を起こし、扉の方を向いた。それと同時に扉がノックされた。


『カズキ、居る?』

「マツリさん?。空いてます、どうぞ」

『失礼するわ』


そう言ったのちマツリは扉を開くとカズキの自室へと入室した。


「どうしました?」

「貴方、随分と何かに悩んでる様ね」

「あっ、....はい」


マツリは部屋のソファに座るとベッドに座り込むカズキと目を合わせた。

カズキは何をどう聞くべきか考えると僅かに表情を険しくしたのち、


「あの、マツリさん」

「?」

「マツリさんの弟さんは、訓練兵だったんですか?」


マツリは僅かに眉を顰めると静かに軽く息を吐いた。


「そうよ。私を追って、....正確には私がデルニエフォルテの適応者になったから、....防衛隊に入隊した」

「そうだったんですか。・・・弟さんは、入隊する際に、理由か何か言ってましたか?」

(・・・成る程。やっぱりカズキも“あの壁”に当たったのね)


マツリはそう思いながら静かに天井を見上げたのちゆっくりと目を瞑ると、


「“姉さんだけに戦わせる訳にはいかない”。だったわね」


そう言ったのちマツリは再びカズキと目を合わせた。


「カズキ。貴方、私達が思ってるよりもかなり早い段階で“壁”に当たったわね」

「早いん、ですか?」

「そう思うわ。まぁ遅かれ早かれ、乗り越えなきゃいけない壁だから、早いに越した事はないのだけどね」

「・・・」

「まっ、悩むだけ悩んでみなさい。貴方なら、きっと自分らしい答えを見つけられるわ」


そう言うとマツリは静かにソファから立ち上がると部屋の扉に向かって数歩歩くと、


「義務や責任で戦う者から、死んでいったわ。貴方は、そうならないでね」


カズキに背を向けたままそう言ったマツリは部屋の扉を開けると部屋から出て行った。


「・・・」

『(何故、マツリに戦う理由を聞かなかった)』

「話さずに立ち去ったところを見ると、ミヅハノメと同じ考えな気がして、な」

『(そうか)』

「・・・マツリさん....」







4


次の日....


午前中の訓練と昼食を終えたカズキは午後のトレーニングの準備の為、通路を歩いていた。


(流石に、20キロはキツいな....)

「あっ、カズキさん」

「?。ああ、サトミさん」


カズキを後ろから呼び止めたサトミがカズキに何かを言おうとした瞬間、建物内に警報が鳴り響いた。


「防衛ブロックから応援要請⁉︎」

「・・・」

「カズキ!」

「ッ!ヴィクトルさん」

「既にストライクブラボーとディフェンスアルファが防衛ブロックで交戦してる。すぐに行くぞ」

「わかりました」


カズキはヴィクトルに続いて通路を走ると自分のチームメイトに招集を掛けた。


(クラウスさんとマナミさんのチームが交戦している状態にも関わらず応援要請。ビーストは大群と見た)

(来るな。先日討ち漏らしたグリードワンが。これは少し厄介だぞ)

「ミヅハノメ、行けるか?」

『(使う気か?)』

「多分使う事になると思う」

『(私はいつでも行ける。君次第だ)』

「了解ッ」







ヴィクトルからの提案でカズキは地下の防衛ブロックには潜らず、地上に居た。


「凄い反応....」

「グリードワンの中でも強い反応ね」

「・・・」


カズキは全て察するとウォーターグリーンカラーの魔力を身体に纏わせた。

そして地面にひび割れが入った瞬間、カズキは覚悟を決めた様な表情を浮かべた。それと同時に指先や爪先、頭部などから朱色の光が紋様の様な物を描きながら血管を辿る様に胸元に集まった。


「カズキさん⁉︎」

「まさか....」


カズキはシオリらに頷いて返した。

すると朱色の発光体を吸収した事で胸元に出現したY字の発光体が点灯すると瞳をアクアグリーン色に輝かせた。

それと同時に2頭身のグリードワン級が床を突き破ると咆哮を挙げたのち地上によじ登ろうとした。


「アレは⁉︎」

「レナードさんのチームがずっと捜索していた、グリードワン級!」

「行けるか?ミヅハノメ!」

『(勿論だ)』

「よし、なら行くかァッ!」


カズキがそう言った瞬間、高濃度魔力の塊であるY字の発光体が点滅する度にアクアグリーンの発光体を血管を辿る様に全身に送り出した。その度に身体を包むウォーターグリーンカラーの魔力を強くしつつ、発光体が腕を通過する度に両腕にアームドスレイヤーを具現化させていった。


(見つけてやる。戦う理由を!)


そう思った瞬間、カズキは一瞬だけ強く輝いた。

そしてカズキは変身すると同時に49メートルまで巨大化した。







グリードワンは地上に登ると同時にカズキと目を合わせた。カズキは勢いよく走り出すとグリードワンに体当たりを喰らわせた。が、グリードワンは体当たりを喰らった瞬間、カズキの腹部に膝蹴りを喰らわせたのち右手でカズキの顔面を叩いた。


「流石に強いわね」

「私達も援護するわよ」

「・・・?、待って下さい」

「え?」


何かを感じ取ったサトミはグリードワン級を見上げながら表情を鋭くした。

するとグリードワン級の左頭部がクルッと左に向くと壁にある兵器や壁にいる兵士に向けて火炎ブレスを吐いた。そして右頭部がカズキを睨み付けるとカズキに火炎ブレスを吐いた。


「右と左で、別々の動きを⁉︎」


驚くナナミを他所にミサキは足音のする方を向いた。視線の先にはレナード率いるストライクチャーリーチームがマツリらのもとに駆け寄っていた。


「見つけた!」


レナードはマツリらと合流したのちそう言い放った。

するとカズキは左後転でグリードワンから距離を離すとアームドスレイヤーに埋め込まれた水縹色のエネルギー発生源“リベレーション”同士を接触させる様に腕と腕を重ね合わせるとアームドスレイヤーをエネルギーで包み込んだのち両腕を外側にバッと広げるとエネルギーの塊をグリードワンの足元に飛ばした。


「アレは....」

「確かに、此処で戦うと被害が出ますからね」


グリードワンの脚元が泥沼に変わると同時にグリードワンの脚は泥沼に埋もれた。泥沼は徐々に広がっていくとカズキを飲み込んだ辺りで止まった。


「ストライクアルファ。援護の為に、突っ込むわよ」

「「「「了解!」」」」


泥沼の外側から岩壁が出現した瞬間、マツリらはそれを飛び越えて泥沼の中に着地した。


(アレは俺が倒さなければならない相手だ)


そう思ったレナードは勢いよく走り出した。


「レナードさん!」

「待って、私が行く!」


セシリアを止めたソフィアはレナードのあとを追う様に岩壁を飛び越えると泥沼の中に着地した。

カズキが腕を上げ切ると同時に岩のドームが完成するとカズキは腕を振り下ろすと同時にドームを泥沼に沈めた。

岩のドームを沈めた泥沼は閃光と共に跡形もなく消えた。

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