可能性の原石

ここまで必死で進んで来た君の目の前には、突如として大きな壁が現れた。


山のように高く、見渡しても果ての見えない、とてつもなく大きな壁だ。


その壁は、今の君の限界を体現したものだ。


他者と比較して、自分には何も無いと挫折してしまった心の現れだ。


だが、君はその壁を前に成すすべなく立ち尽くすのではなく、つるはしやシャベルを使い果敢に穴を開けていく。


少しずつ、でも確実にその穴は広がっていく……


そう、君は知っているのだ……何もしない事の怖さを。


だからこそ、力の限り足掻いて見せるのだ。


どれぐらいの時間を費やしたのだろう……気が付けば君は、辺りが真っ暗になるほど奥まで掘り進んでいた。


自分が何処にいるのかも、壁が何処にあるのかも判断出来ないほど奥まで……。


そこで君はランタンに火を灯す……その灯りは希望だ。


真っ暗な中でも諦める事無く進んで行くために必要な情熱の灯りだ。


その情熱のおかげで君は、さらに奥へと進んでいく。


その時、振り下ろしたつるはしが何かを掘り当てた……それは大きな石だ。


だが、それは只の石ではない……磨けば光る宝石の原石だ。


この掘り当てた原石は、君が持つ無限の可能性だ。


何もしなければ只の石でも、磨くことで光り輝く……君を先へと導く可能性だ。


思わぬ副産物に喜びを覚えながら、君はさらに進んで行く。


可能性を手に入れた君は、こんな限界の壁の中に居る場合じゃないと必死になれる。


そしてついにその時は訪れる……つるはしが壊した壁の先から光が差し込んで来た。


そう、君は遂に出口をその手で掘り当てたのだ。


その差し込む光は、今の君とその可能性を祝福しているかのようだ。


しかし、君はまだ気づいていないのだろう……


君が掘り進めてきた穴は、しっかりとトンネルとして機能していて、次に進んで来る人に可能性の道を残したことを。


そして、ここまで来るのに必死になり諦めず、努力を怠らず、ただ前だけを見据えて進んで来れた君には初めからあったんだ……



他者にも負けない可能性が……諦めの悪さという最高の可能性の原石が。

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