第49話春の日
翌年の春。
後宮は平穏な日々が過ぎていた。
「ひま……ねぇ」
後宮の西に位置する飛香舎の一室で、局の主人である尚侍・
庭に咲いている藤の花を眺めながら、ごろりと寝そべる。
“もう三年”と評するべきか、それとも“まだ三年”と評するべきか。
「早いわねぇ」
世間では五節舞で帝に見初められ、「女御として入内するには時間がかかる」の一言で尚侍として入内した寵妃として、
今では妃として遇されている
「最近、嫌がらせもないし……」
二の宮を産んで早々に、
やられっぱなしは性に合わない。
ヤられる前にヤれ、を信条とする右大臣家。
当然、右大臣家の血を引いている
ヤるならヤり返す。
十倍返しだ。
そんな精神で、嫌がらせをしてきた女たちに
苛烈極まる報復は、女たちの精神を疲弊させ、恐怖させた。
心を病んで実家に帰った妃は多い。そして二度と戻ってこない。
(内裏の掃除ができて風通しも良くなったから。平和だわ……)
それを狙っての行動である。
相手は大貴族の姫なので本当に殺すと後が面倒なのでヤらなかっただけの話し。
代わりに妃経由で各家の弱みをしっかりと握っている。次の世代、更にその次の世代までは逆らわないだろう。
「でも、暇だわ」
一年目は、初めての仕事に慣れるのに必死だった。計画通りに帝の御子を懐妊して、時次に恩赦を出してもらった。
二年目は、皇子を産んで、後宮に大掃除に邁進した。おかげで愚かな妃は減った。
三年目の今、
平和、大いに結構。しかし、暇だ。
もっとも、この平和を壊す輩は一定数いそうだが。
その筆頭は
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