第30話本邸の女房 弐
それでも評判が芳しくないことは知っていた。
美女揃いの女房。
気位の高い女房。
出自の高い女房。
機転の利く会話すらない女房。
取り次ぎの機能すら果たしていない女房。
「姫君たちの集い」「姫君のサロン」と揶揄される所以だ。
彼女たちは、
恐らく、本邸からきた者たちも……。
その発端となったのは父・
自分たちの運命を百八十度変えてしまった男の娘。
それが
恨みたくもなるだろう。
(
自分たちが妃として存在していたかもしれない場所。
そこに女房として納まっている現実に複雑な思いを抱いたはずだ。
「お義父様はあの女房たちをどうするつもりなのかしら?」
「さてな……。彼女たちを最初に雇ったのは父上だが、今は本邸が面倒を見ている。本邸から彼女たちの実家になにかと贈物や金品が届けられているらしい。そういう援助があるから、彼女たちは女房として仕えているんだろう。残された家族が生活に困ることなく暮らせるようにな」
時次は複雑そうな表情をした。
「でも彼女たちは働く気は全くないようだけど?」
「だから問題なんだろう」
「本邸は何も言わないの?」
「言うも何も、本邸は彼女たちを受け入れている。それに、仕事といっても奥方と世間話に興じるだけだ。あれでは『客人』だな」
「そう……」
仕事を覚えない理由が分かった。
本邸の奥方さまが甘やかしているんだろう。
ならば、彼女たちだって仕事を覚えないのは当然だ。
「彼女たちは奥の部屋に押し込めておく。その方がいいだろう。下手に顔を合わせると、
「そうね」
時次の言葉に
出産も迫っているというのに余計な問題を持ち込んでほしくないものだ。
こうして本邸から来た女房たちは
軟禁状態だが、「客人扱いを徹底するように」と、右大臣と時次の両名から通達があった。
「お姫さま扱い」で彼女たちは納得した。
本邸とほぼほぼ変わらない生活に満足していたらしい。
「出産に彼女たちを立ち合わせるな」と言う右大臣の命令によって、彼女たちは
「客人扱い」になれた彼女たちは最後まで違和感に気付かなかった。
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