第24話胎の子は姫宮 壱
「
「え、ええ。大丈夫よ」
だが、顔色は悪い。
うぷ、と口を押さえた。
「
「だ、大丈夫よ……。ちょっと吐き気が……」
「お辛いなら、横になった方がよろしいのでは?」
「いいわ。横になったら、却って辛くなるもの」
「ですが……」
この会話だけを聞けば、
「甘い物ばかり食べたせいで胃がムカムカするわ」
蜂蜜をたっぷりかけた焼き菓子、砂糖菓子を主に食していた。
甘いものの食べ過ぎである。
へたり込んでい
相当参っている様子である。
なら、甘未を食べるのを止めればいいのだが、実はそうもいかない事情があった。
「
「これは?」
「時次さまからの差し入れでございます」
「お義兄さまからの?」
「はい」
時次からの差し入れ。
「また甘未ですか」
無理もない。
げんなりする
「あら、これは甘未じゃないわ」
「っ……これ梅干しだわ」
甘未ではなかった。
「梅干し……ですか?」
「そうよ」と、
「まあ、本当に!梅干しの味がします」
菓子に似せて作られているだけだ。
中身は梅干しや漬物類である。
他にも甘辛い佃煮や酢漬け。
「まあまあ、時次さまは気が利かれますこと。流石ですわ」
さっきまでの気分の悪さが嘘のように晴れやかな表情の
けれど腑に落ちない。
「
「なあに?」
「お腹の
「何故って……。
「茶化さないでくださいませ。わ、私は真面目に聞いているんです」
「ごめんなさい、つい。
「はい」
どうしても納得ができなかった。
それというのも、通常なら「
これが他の女御やその親族なら間違いなく「次期東宮を身籠った」と吹聴していることだろう。また「皇子出産」のために、万全の体制を敷くはずだ。だが、
「私はね、この子を無事に産みたいのよ。無事に、ね。今の内裏では、懐妊しただけで妃たちの嫉妬の的だわ。恨まれるだけなら兎も角、攻撃対象にされているのが現状。せっかく身籠った子なのに、殺される可能性が高いのよ」
「
「最近はマシになってきているけれど油断は禁物だわ。隙をついて仕掛けてこないとは限らないもの。用心に越したことはないわ。私は内裏に入ってまだ日が浅い。味方になってくれる者なんて、貴女が思っている以上に少ないのよ。警戒しておかないとね」
「
「それが狙いよ。
自分が思っていた以上に、
「そこまで考えていらっしゃったのですか」
「そうよ。貴女には迷惑をかけるわね」
元々、
時次が推薦してきた女房で、
胎児の乳母にと、選んだ女房だ。
彼女の母親が帝の筆頭女房・
その縁で
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