第23話宣耀殿女御の怒り 弐
腹立ちが収まらない。
とんだ番狂わせだ。
その時だ。
「女御さま」と声がした。
振り向くとそこには弟の
「
「はい、女御さま。ご機嫌はいかがですか?」
「ご覧の通りよ」
機嫌など悪いに決まっている。
「それは失礼致しました。ところで女御さま、ここ最近、うちの屋敷の周りをうろうろしている者共がいるのですが、ご存知でしょうか?」
「何の話し?」
「その者共の話しでは、女御さまからの推薦を受けた、と。女御さまの指示で右大臣家に妻や娘が働きに出たと。なのに一向に連絡がない、と。身に覚えがありますか?」
「ないわ」
「本当ですか?女御さまは関りがないと仰るんですね」
「勿論よ」
「……そうですか」
追及しても無駄だと知っているからだ。
なりふり構わず命じたのだろう。
計画的なようで無計画。
姉の性格は知り尽くしている。
本当に知らないのだろう。
正確には「覚えていない」と言うべきかもしれないが。
大方、傍付きの女房に命令して後は結果待ちしているだけだ。
誰が誰に命じたのか、なんて知っている筈もない。
女房たちも心得たものだ。
この姉に余計なことを言えば、どんな目に遭うか理解している。
だから口を噤むのだ。
「ところで女御さま」
「何?」
「
「そう。何かしら?」
「今回の尚侍の御懐妊はまことに喜ばしい。久方ぶりにめでたきこと。ついては、女御さまは心静かに
「……」
「決して、以前のような暴挙は起こさぬようにと、釘を刺されました」
父・左大臣は、自分の行動を非難している。
間違っていると。
「左大臣さまも心配されているのですよ。
「……」
(白々しい。お父さまが心配?流産を信じなかったのは誰?想像妊娠だと言ったのは誰だったかしら?)
「女御さま、左大臣さまの仰る通り、今は静かに過ごされるのが一番です」
「そうね。その通りだわ」
「では、私はこれで」
女御とはいえ、父親には逆らえない。
元々、公明正大を旨とする左大臣。
彼は女御の行いを知り、
後宮の女たちが手をこまねいていた頃、一つの噂が都に広まっていた。
「尚侍の
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