花嫁衣装

茶々

花嫁衣装

そうだ、昔、白無垢の真似をしてビニル袋を被って遊んだことがあったろう。


ええ、あったわね。


あのときの君は世界一綺麗だったよ。いや、本当に。お世辞じゃないぜ。


いやぁねそんな昔のことを。忘れてよ。うん、忘れないでいいわ。


忘れないさ、忘れたくとも。そうさ本当に綺麗だったなあ。


なんで急に思いだしたのよ。遠い昔のことじゃない。


そりゃあ君ね、今君に白無垢を着せているからに決まってるだろう。


あら、そうだったの? あなたにもそんな情が残っていたのね。意外よ。


君が思っているより、君のこと想っているのさ。


そう、


ねぇ、綿帽子がないわ 寂しいじゃないの。


あぁ、今被せてやるさ。あのときみたいにビニルでできた綿帽子。


大き過ぎよ、馬鹿。顔まで隠れるじゃあないの。


そりゃお前、顔を隠さないと意味ないだろうが。


そうね、あなた以外見ないように。隠して。


あぁ、全てから隠してやるさ。これから君がいく場所に、私はいないからね。私以外に見えないように、見ないように。


嗚呼苦しいわ。狭くって暑くて寒くて。


愛しい人。

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花嫁衣装 茶々 @kanatorisenkou

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