ファイル.02 神隠しの村に巣食う大蛇と二人の姉妹(3)
サキの話では、この村の奥には帰らずの森と呼ばれている禁足地が存在するということだった。
『おい、うみか。森の方から怪異の臭いがプンプンするぜ』
『と、いうことは、やはり神隠しは怪異の仕業か。だが、まだ何かありそうだ。なんとなくだが、この村の人間は何かを隠している気がするんだ』
『カンってやつか?』
『ああ』
『なるほど。お前のカンはよく当たるからなあ。それで、何か対策を打つのか?』
『ああ、前に使った、紙の依代を使って付喪神を作る。これで村人たちの会話を聞き出してみようと思うんだ』
『盗み聞きかあ』
『嫌な言い方はよせ。あくまで調査のためだ。探偵にとって、盗聴は基本手技なんだよ、ゼロ君』
『わかってるって。うみかは、村人も怪異とグルかもってことを知りたいんだろ?』
『そうさ。村人たちが、神隠しの伝説を利用して、怪異に生贄を差し出している可能性も考えられるからね』
『人間の敵は人間ってわけだな。怖いねえ、人間って奴は』
九十九が作り出した付喪神で村人たちを観察した結果、やはり、村人たちは何故か次に神隠しにあう人間を知っているらしかった。
『やはり、村人たちは何かを隠している。怪異のことをよく知っているようだ』
『村人たちにも気をつけた方がいいな。気づいたら、俺たちが生贄になってるかもしれないぜ』
『何が起こるかわからないからな。そうならないように気をつけるよ』
三人は、まりえが事前に手配していた、この村で空家となっている建物に宿泊することにした。
古くからある日本家屋の民家だが、きちんと手入れがされていて、年数を考えれば十分すぎる家だった。
「思ったより、綺麗な家でよかったです」
「少し前に民泊が流行った時に、いろいろと手入れしたみたいだよ。農家民泊として、観光客を宿泊させていたみたいね」
「確かにさっき、ここに観光に来る人がいるっていってたわね。温泉以外にも、何かいい場所があるの?」
「この村の近くに、太刀割岩という人気の観光スポットがあってね。崖の上にある大きな岩なんだけど、まるで刀で真っ二つに切ったように二つに割れた岩なの。何年か前に、鬼と戦う剣士のアニメで、大きな岩を剣で斬るシーンがあったでしょ? そのおかげで、そこがアニメの聖地として取り上げられて、観光客が多く訪れるようになったのよ」
「そんな場所があるのねえ。知らなかったわ」
「この家にはお風呂が無いんだけど、二人も温泉、入るでしょう? 村の中心に温泉施設があるから、みんなでそこに入りに行きましょう」
「はーい。温泉、楽しみでーす」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます