ファイル.02 神隠しの村に巣食う大蛇と二人の姉妹(2)
今回、三人が取材に向かうのは、I県の山奥にある神逢瀬村。
東京からは直線距離で100km以上も離れている。
この地域を通る電車が廃線になってしまったため、この村にいくには車を使わなくてはならなかった。
九十九たちは、まりえの運転する四角いフォルムのSUVに乗っていた。
「まりえが車を出してくれて本当によかったよ。私の車は軽だし、二人乗りだからね。遠出するには色々と厳しいからさ」
「こちらこそ、新しい車じゃなくてごめんね。お金が無くて、中々新車も買えなくてさ」
「いや、十分すごいですよ。中もキレイですし。この車なら、山道だってスイスイ進めるんじゃないですか?」
「まあねえ。そのために買ったようなもんだし。取材する場所によっては、舗装されてない道もあるからねー」
「思ったより、お店とかあるんですね。もっと田舎かと思ってました」
「この辺りはね。もう少し山の方へ行くと何も無くなるから。あ、次、コンビニあったら寄って行こうか?」
「うん、お願いするよ。朝早かったから、少し眠くなってきてね。コーヒーが飲みたいんだ」
「了解でーす。でも、うみちゃんは相変わらずコーヒーが好きなのねえ。でも、山の方に行くと、村まではトイレが無いから気をつけてよ」
「ああ、わかってるよ」
今、三人が向かっている神逢瀬村は、山奥にあるが、昔は炭鉱があり、そこそこ栄えていたようで大きな村だった。
炭鉱が栄えていた頃には、炭鉱の周辺だけでも五千人を超える人々が住んでいて、当時の東京を超えると言われるほどの人口密度を誇っていた。
しかし、石炭から石油へとエネルギーか移り変わっていくと、この村も一気に寂れてしまった。
三人を乗せたSUVは山道を登っていった。
まりえの話したとおり、周りには何も無かった。
「この道、街灯も無いんですね。夜に来たら怖そうです」
「昔はお店もあったみたいだけどね。人が少なくなってからは、ご覧のとおりだよ。バスも廃線してしまったから、本当に車が無いと生活が出来ないんだ」
「田舎では車は必需品っていいますからねー」
「東京に住んでると考えられないけどな」
「さあ着いたよ。ここが神逢瀬村だ」
三人は車から降りた。
「思ったより大きい村ですね。もっと小さな集落かと思っていました」
「昔、ここには炭鉱があって、その頃に開発されていたから、思ったよりも開けているのよ。そして、今は観光でここを訪れる人が結構いる。村には温泉もあるしね」
「へえ、温泉もあるんだー」
「うん。ここの温泉は意外と評判がよくて、遠くからも入りにくる人がいるみたい。けど、炭鉱跡の方は人が住んでいないから、ゴーストタウンみたいになっているよ。心霊スポットとして、よく心霊系の動画配信者なんかが取り上げてるくらいにね。今は、そっちの方が有名かもしれないよ」
「なるほど。そっちも面白そうだな。サキ君。後で見に行ってみよう」
「ふふ、先生は遺跡が好きですからねー。炭鉱跡とか大好きですものね。あ、まりえさん。私も好きなんですよ。ゲームのダンジョンみたいでワクワクするんですー」
「ふふ、二人とも、本当に遺跡が好きなのね。後で案内してあげるわ」
「それより、さっき、ここの人たちに挨拶したのに、知らんぷりされました。なんか感じ悪かったですー」
「ま、私たちはよそ者だからな。仕方ないよ」
九十九たちの言うとおり、この村の住人は、よそ者には冷たい対応をしている。
なので、基本的には向こうから話しかけてくるどころか、目を合わせることすら無い。
しかし、何故かまりえを見ると態度が変わり、向こうから挨拶をしてくれるようになった。
「まりえ、あの人知り合いなの?」
「以前にもここに取材に来たことがあるからね。それで私の顔を知ってるのよ」
「なるほどねえ。」
(しかし、田舎っていうのはよそ者に冷たいって聞くけど、ここまでとはね……)
「そして、この村の奥には、禁足地となっている森があってね。その森に入ると、二度と戻って来られないから、帰らずの森と呼ばれているの。だから、村人たちは小さな頃から、ここには絶対に近づくなと言われているらしいわ」
「その森と、この村で起きている神隠しって何か関係がありそうね」
「ええ、それを調べるために、今回ここに取材に来たのよ」
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