ファイル.02 神隠しの村に巣食う大蛇と二人の姉妹(4)
三人は村で唯一の温泉に入った。
温泉は露天風呂となっていて、自然を満喫出来る空間となっている。
温泉の湯は白く濁っていた。
効能として、美肌効果があるらしい。
三人はゆっくりと温泉に浸かって、疲れを癒していた。
「うーん、やっぱり温泉は最高ですねー」
「そういえば、サキは温泉が大好きだったな」
「東京には露天風呂はあんまり無いですからねー。やっぱり外で温泉につかるのは最高でーす」
「ふふ、サキちゃんがこんなに喜んでくれるなんて。二人を連れてきてよかったわ」
「まりえさーん。本当にありがとうございまーす」
◇◇◇
九十九たちが温泉施設から古民家へ戻ってきた時には、辺りはすっかり暗くなっていた。
三人は、食事をした後に、この村の神隠しについての話を始めた。
「そういえば、この村には、昔から神隠しの伝承があったんでしょう? それを詳しく教えてくれない?」
まりえはうなづくと、村の神隠しの伝説について話し始めた。
この村の奥にある森には、昔から大蛇の神様が住んでいる。
そして、その大蛇が、村人を攫うため、神隠しが起きているというものだった。
「そして、信じられないけど、今もこの村では神隠しが起きているの。禁足地となっている森も健在だしね。もしかしたら、本当に大蛇がいるのかもしれない」
九十九は、この話をしているまりえが、何故か思い詰めた表情をしていることに気づいた。
「深刻そうな顔してるけど、大丈夫?」
「え……。あ、ああ、大丈夫よ。ありがとう、うみちゃん」
「あのー、ずっと気になっていたんですけど、禁足地っていうのは何なんですか?」
「禁足地っていうのはね、様々な理由で、中に入ることを禁じられた場所のことをいうの」
「へえー、知らなかったです。立入禁止ってことなんですねー」
「そうだよ。だから、村人に怒られないように、こっそりと調査しようね」
九十九とサキが寝込んだあと、まりえが二人を起こさないように静かに起き上がった。
(まあ、手を握り合って寝ているわ。本当に仲がいいのね。……やっぱりこの二人を巻き込むわけにはいかない。私一人でカタをつけるよ、ユキ。姉さんが、必ずあなたの仇をとるからね)
◇◇◇
次の日の朝、九十九はサキに叩き起こされた。
「先生、起きてください! まりえさんがいません!」
まりえの掛け布団がめくれあがっていた。
九十九は慌てて布団を触る。
──冷たい。
ここを出てだいぶ時間が経っているようだ。
「嫌な予感がする。森の方へ向かったのかもしれない」
「一人でですか? どうして?」
「わからない。だが、そんな気がするんだ」
「先生の予感は当たりますからね。これは間違いなく森へ行ってますね」
「サキ君、すぐに準備してくれ。とりあえず、森の入口へいってみよう」
九十九は、村人たちを観察させていた付喪神を解除した。
「先生、昨日から付喪神の能力をずっと使ってましたけど、何かわかったんですか?」
「ああ、ここの村人たちは、神隠しに協力していたのかもしれない」
「神隠しの真相を知っていて、怪異に協力していたってことですか?」
「ああ。だとすると、この村は、私たちが思ったよりずっとヤバそうだ。……まりえが心配だ。急ごうサキ君」
「はい!」
九十九は付喪神の能力を使って、ずっと村人たちの様子を探っていた。
それによって、村人が定期的に禁足地の森にいる怪異に生贄を差し出していること。
それを隠すために、神隠しにあったということにしていることがわかった。
そのため、村人たちは、次に神隠しにあう人間を選別していたのだ。
『まりえは禁足地の森へ行った可能性が高い。力を貸してくれ、ゼロ』
『もちろんだ。だが、森の奥の怪異は、臭いが強いぞ。正直、かなり手強そうだ。気をつけろよ、うみか』
『君がそう言うってことは、相当手強い怪異のようだな。用心するよ。ありがとう』
「サキ君、この森の怪異はかなり手強そうだ。気を引き締めていこうね」
「わかりました先生。警戒を怠るな、ですね?」
「ああ。周囲へ気を集中させながら進もう」
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