ファイル.01 鏡に映る迷子の少女と帰れない駅(17)

「この鏡を姉に渡してもらえますか?」

 

 百華の霊は、最後に小さな手鏡を九十九に手渡した。

 

「探偵さん、春花姉さんにありがとうと、そして、この鏡がある限り、私たちはずっと一緒にいられると伝えてください」


「ああ、必ず伝えるよ」


「探偵さん、助手さん。助けていただいて、本当にありがとうございました」

 

 百華は二人に一礼すると、微笑みながら空へと昇っていった。

 

◇◇◇

 

 九十九は事務所で依頼人の春花に今回の件を報告していた。


「そうですか。妹はもうすでにこの世から……」


 春花は涙をこらえながら話した。


「残念ながら……これが最後に百華さんからあなたに渡すよう頼まれた鏡です」


「ありがとうございます。この鏡があれば、いつでも妹と話せるような、そんな気がします」


「きっと妹さんは、これからもずっとあなたのそばにいる。それが伝えたくて、私にその鏡を託したんだと思います」

 

 春花は九十九とサキに一礼をしてから、事務所を後にした。


◇◇◇


「ねえ先生。最初から私がダウジングをすれば、もっと早く事件を解決できたんじゃないですか?」


 九十九に淹れたてのコーヒーを渡しながら、サキが質問した。


「あの時点では怪異の情報がほとんど無かったからね。君を危険な目にあわせたくなかったんだ」


「うれしいです。先生ったら、そんなに私のこと、心配してくれてたんですねー」


 どさくさにまぎれて、サキが後ろから九十九をハグした。


『本当は怪異との対決をもっと楽しみたかっただけだろ?』


『ふふ、どうだろうね?』


 サキにハグされながら、九十九はコーヒーを口につけた。

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