ファイル.01 鏡に映る迷子の少女と帰れない駅(11)

 次の瞬間、九十九とサキは電車の中にいた。

 

 電車内には乗客が十人ほどいた。


「よかった。電車の中、空いてますよ先生」


「…………」


「先生? 何か気になることがあるんですか?」


「……いや、なんでもないよ。とりあえず座ろうか」


 しばらくすると、車掌がゆっくりと、車内を確認しながら歩いてきた。

 

 その時、車内にアナウンスが流れた。

 

「お客様にご連絡します。次の停車駅はささぎ。ささぎとなります」


「ささぎ? きさらぎ駅じゃないの? ささぎ駅なんて私、聞いたことないです。先生は知ってますか?」


「…………」


「先生……、先生? やっぱり変です。何か考えてるんですか?」

 

「あ……、ああ。私は以前にもささぎ駅に行ったことがある気がしてね。思い出してみたんだが、どうやら私の勘違いだったみたいだ。でも、次の駅で間違いなさそうだよ。そんな予感がするんだ」


「なるほど。そういうことだったんですね。まあ、先生の予感はよく当たりますからね。ささぎ駅で間違いないですよ」


「ああ。とりあえず、この駅で降りてみようか」

 

 二人は、ささぎ駅で電車から降りた。


(この感覚、間違いなく私はここを訪れている……。それも何度もだ。まさか、時間がループしているとでもいうのか?)


『おい、ゼロ。まさかとは思うが、この世界の時間はループしているのか?』


『おお、うみかもそこまで感知できるようになったのか。ああ、その通りだよ。信じられないかもしれないが、この駅は時間がループしているんだ。すでに三回、時間が巻き戻っている』


『すでに三回もループしているだって!? 私にはそこまでは感じられない。けど、君が言うなら間違いないな』


『ああ、時間がループしてるのに、お前とサキは、毎回話すことが少しずつ変わってるんだぜ。面白いよな。まあ、それはおいていて、ここには、この空間の時間を操って、ループさせている怪異がいる。そして、ある程度時間が経過すると、時間が巻き戻されてしまうんだ』


『なるほど。つまり、この空間の時間は怪異の能力でループしていて、制限時間を超えると、最初まで巻き戻されてしまうってことか?』

 

『ああ、さすが九十九だ。理解が早くて助かるぜ。それで俺たちはこの駅の中を探索していたんだが、とにかく広い駅でな。駅ビルの二階を探索し終えたところで時間切れとなってしまったんだ』


『なるほど、それは厄介だな。それで、私たちはこれから駅ビルの三階から探索していけばいいわけだね?』


『話が早くてほっんとに助かるぜ。それじゃ、早速探索に入ろう。そうそう、百華って子なら、駅ビルの一階にいるから心配するな』


『なるほど、三回目だから完全に居場所も把握しているんだな。よし、それじゃあ駅の探索を優先しよう。三階からでいいんだね?』


『ああ、とにかく広くて、あまり時間もないから急ごう』


 九十九は、ゼロと協力しながら、三階部分の探索を始めた。

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