ファイル.01 鏡に映る迷子の少女と帰れない駅(12)
『しかし、デカい駅だったな。駅ビルの十二階まで全部確認するのに、時間切れで六回もループする羽目になった』
『でも、やったかいはあったよ。怪異がループさせている空間の大体の大きさがわかったし』
九十九は手帳に書いた駅の見取図を見ながらゼロに話しかけた。
『ゼロ、君が記憶を保持してくれているおかげで、この駅の全ての地図が書けた。本当にありがとう』
『とりあえず地図が出来たのは良かったぜ。そして元凶の怪異がいそうな場所も大体絞れてきた。この空間を維持するために、空間のちょうど真ん中あたりにいる可能性が高いからな』
『そうだね。だが、気をつけようゼロ。こいつの能力がループだけとは限らないから。それに、怪異のループ能力に抗っている君の力も大分落ちてきているだろう?』
『気づいていたのか? まったく、九十九には敵わないな』
『何年同じ身体でいると思ってるんだ。それくらいわかるに決まっているよ。それで、この駅の中央管理室、あそこには確か警備員がいて、ビル内の管理をやっていたな』
二人は、駅ビルの中央管理室にいた警備員があやしいと睨んでいた。
その場所がちょうどループしている空間の中央付近となっていたからだ。
九十九は中央管理室の入口のドアを開けた。
しかし、部屋の中は漆黒の闇で包まれていた。
「やられた。こちらの動きを読まれていたか!」
部屋の中から溢れ出てきた闇が、九十九の身体を包み込んだ。
◇◇◇
『ゼロ、大丈夫か。大分消耗しているな』
『ああ、この空間は時間がループしているんだ。もう何回もループしているからな』
『確かに、私にも何度もこの駅に来た感覚がある。これは怪異のしわざだね。なんらかの理由で、時間をループさせているのか。それで、君はその怪異の能力に抗っていたから、消耗しているんだね?』
『ああ、そのとおりだよ。しかし、敵さんも大したもんだ。なかなか尻尾を掴ませてくれない。すでに駅の中は全て探索したんだがな』
『なるほど、厄介な敵だ。でも、君はもう限界だろう? あとは私がなんとかするよ』
ループするたびに、怪異の能力に抗っていたゼロは、明らかに弱っていった。
おそらく、あと数回ループすると、怪異の能力に抗えなくなり、九十九にこれまでの記憶を伝えることも出来なくなってしまうだろう。
『さっき、私がなんとかすると言っていたが、何か勝算があるのか?』
『いや、ゼロもそろそろ限界だからね。だからもう、出し惜しみはしない。私も本気でいかせてもらうよ』
『付喪神の能力を使うんだな? 確かに、怪異を探すなら、人手は多い方がいいからな』
『ああ。付喪神たちを使って、一気に駅の中の人々を調べる。もう怪異を逃しはしないよ』
(今回は調査に数がいる。やはりヒトガタを使うのが一番だろう)
九十九は依代となる人型の紙を大量に取り出すと、魂を込めて付喪神にした。
『私と感覚を共有できるヒトガタを大量に飛ばした。あやしいやつがいればゼロに教えるよ』
九十九は目を閉じて、神経を集中させた。
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