ファイル.01 鏡に映る迷子の少女と帰れない駅(6)

 突然後ろから声をかけられ、二人が振り返ると、そこに、学生服を着たミディアムボブの髪型の若い女性が立っていた。

 

「あなたが二宮百華さん、ですね? 私は九十九卯魅花。怪異専門の探偵をしています。こちらは助手の鷹野サキです。お姉さんからの依頼で、あなたを救出にきました」


「私が鷹野サキです。よろしくです」


「姉からお話は聞いています。助けにきてくださったのですね。本当にありがとうございます」


「ええ。ここは危険です。早くこの駅から外へ出ましょう。……といいたいところですが、何か問題があるのですね?」


「はい。私は何度もこの駅から外に出ようとしたんです。でも、どうしても外に出ることが出来なくて……」


「そういうことだったんですね。わかりました。おそらく外に出られない何らかの原因が何かあるはずです。まずはそれが何か調べてみましょう」


 九十九たちは、駅ビルの出口へと向かった。

 しかし、駅ビルの出口の外は、真っ黒な闇が広がっていた。


「なるほど、闇がおおいつくしていて外が見えない。これでは外に出ることは出来ませんね……」


「そうなんです。なので、他の出口を探していたんですが、どこもここと同じように、闇におおわれていて、出ることが出来なかったんです」


 百華は、俯きながら九十九に話した。


「私たちと一緒にもう一度この駅を探索してみましょう。まずはこの駅がどうなっているのかを知りたい。黒い闇の正体もね」


「何らかの怪異が悪さをしている可能性もありますからねー。その場合は、先生が怪異をやっつけてくれますから、安心してくださいね」


 サキが微笑みながら答えた。


「こう見えて私、怪異専門の探偵なので、怪異には詳しいんです。もちろん、怪異の倒し方なども知っていますよ」


「それは頼もしいです。よろしくお願いします」


 九十九たちは駅ビルの中を探索していった。


 そして、駅ビルの北側にある従業員用の出入口が、闇に包まれていないことを発見した。


「外の景色が見える。ということは、ここはまだ、闇に包まれていないね。ここからなら外に出られそうだけど……サキ君、どう思う?」


「先生、同じフロアでここだけ闇に覆われていないのはおかしいと思います」


「そうだね。私もそう思っていたよ」


「つまり、罠の可能性があるということですか?」


 百華が不安そうに質問した。


「その可能性は否定できないです。ただ、この駅には、他に出口は見つからなかった……」


「ならば、行くしかないということですね」


「そうですね。例えこれが罠だとしても、私が何とかします。怪異探偵の名前は伊達じゃないので安心してください」


(そうだよね。ゼロ)


 九十九たちは、意を決して、従業員用の出入口から外へと出た。

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