第2話 ダウナー彼女のいたずら耳掻き

(ポツポツと降る雨音∶開始)


「お昼ご飯美味しかったね」


「よいしょ」


(ソファーが弾む音)


「それにしても。やっぱり、休日はソファーでダラダラするのが一番だよね」


(『そうだね』と頷くあなた)


「そうだ。あなた最近耳掃除してないでしょ」


「その、今日は何だかあなたを甘やかしたい気分だから、耳かきしても良い?」


「気分じゃないなら良いんだけど」


(『うん』と頷くあなた)


「ん、それじゃあ耳掻きを……」


(ソファーから立ちがるダウナー彼女)


(ダウナー彼女の足音が段々と遠くなっていく)


(少しして、ダウナー彼女が耳かきを持ってソファーに歩み寄ってくる)


(ソファーが弾む音)


「よし、じゃあ膝枕しながらしてあげる。おいで」


(ダウナー彼女の誘惑に引き込まれ、膝下に頭を置くあなた)


(窓を微かに叩く雨音と、ダウナー彼女の太ももだけが情報として入ってくるゆったりとした時間が流れる)


「それじゃあ、今上に向いている左耳から始めるね」


(あなたの左耳を広げ、耳掻きを入れていくダウナー彼女)


(左耳の浅い所を擦る耳掻き:開始)


(耳掻きでカリカリと擦る音と小さな雨音)


「え? 汚くないかって?」


(クスッと笑いながら耳掻きを続けるダウナー彼女)


「ん〜。最近掃除してなかったから多少汚れてるけど、今から掃除するんだから別に良いでしょ」


(耳掻きでカリカリと擦る音と小さな雨音)


「もっと奥をやって欲しい? えぇ~怖いけど、あなたの頼みだし、やってみる」


(先程よりも奥を擦る音)


(暫くして、あなたの顔を覗き込むように近づくダウナー彼女)


「どう? 痛くない?」


(『うん』と言うあなた)


「良かった。でも、深い所ばかりやる訳にもいかないから、浅いとこもやるね」


(耳垢をかすめ取るように優しく擦り続ける音)


(それから暫くして、左耳の耳掻き:停止)


「よし、左耳はこのぐらいで終わり……」


(あなたの左耳に顔を近づけるダウナー彼女)


「ふぅ~」


(ダウナー彼女の優しい吐息が左耳にかかる)


(少し反応してしまうあなた)


「ふふっ、本当に耳弱いね」


「ほら、きれいになったから反対向いて」


(体を動かして反対を向くあなた)


「うっ、反対向くと私のお腹が目の前に来るのか」


(お腹を触ろうと、腕を動かすあなた)


「ちょっと、お腹を触るのは禁止。ほら、手は自分のお腹」


(ダウナー彼女は、あなたの腕を掴んでお腹まで動かした)


「はい、それじゃあ右耳始めるよ。先ずは浅い所から……」


(右耳の浅い所を擦る耳掻きの音:開始)


「ねぇ、今さら何だけど。耳掻きって夜にやる方が良かった?」


「ほら、耳掻きの音って割と眠くなるから。寝る前にやる方が良かったかなって」


(少しの間黙り込むあなた)


(沈黙の間に流れる小さな雨音と耳掻きの音)


「夜にやって寝たらイチャイチャ出来ない、か」


「ふぅ~ん……」


(クスッと笑うダウナー彼女)


「え? 何で笑ってるのかって?」


(耳掻きを一旦辞め、耳元に近づくダウナー彼女)


(からかうように囁く)

「だって、今の言葉。今日の夜はイチャイチャするって事でしょ?」


(耳元でいたずらっぽく笑うダウナー彼女)


(ダウナー彼女が耳元から離れる)


「あっ、耳赤くなってる」


「図星だったんだね」


「良いよ……」


「明日は仕事だからあまり長くは出来ないけど、私もあなたとするの我慢してたから、ちょっとだけならね」


(浅い所を擦る耳掻きの音:再び開始)


(それからしばらくの間、小さな雨音と浅い所を擦る耳掻きの音で落ち着く時間が流れる)


「そろそろ深い所やるね」


(右耳の深い所を擦る音:開始)


「力加減はこのぐらいで良い?」


(『もうちょっと強く』と言うあなた)


「もっと強く、か。分かった」


(右耳の深い所をゴリゴリと擦る耳掻きの音)


(愛おしそうに)

「こうやって、膝枕をしながらあなたの耳掻きをしていると、子供が出来たみたいでいつも以上に愛おしく感じる。かわいいよ」


「え? かわいいばっか言われてるとカッコつかない?」


「……大丈夫。あなたの事はちゃんとカッコいい彼氏だって思ってる……」


「でも、今だけは可愛がらせて」


(暫くの間、小さく聞こえる雨音と耳掻きの音が続く)


「よし。これで右耳もきれいになったかな?」


(右耳の耳掻き:停止)


(ダウナー彼女の顔が右耳に近づく)


「ふぅ~」


(ダウナー彼女の優しい吐息が右耳にかかる)


「よし、これで右耳もきれいになったね」


「ん? 耳掻きされてたら眠くなっちゃった?」


「ふふっ、お昼ごはんのすぐ後に耳掻きしてるし眠くもなるか」


(耳掻きを横に置くダウナー彼女)


「それじゃあ本当に夜やらなくて良かったよ」


(照れくさそうに)

「何で、って?」


「だって、私もあなたとイチャイチャしたいから……」


「って、もう寝ちゃいそうだね」


「夜ご飯の時間になったら起こすから、このまま寝ても良いよ」


「私も一緒に寝ようかな」


(小さな囁き声で)

「おやすみなさい。あなた」


(あなたの右頬にキスをするダウナー彼女)


「ふふっ、赤くなってる」


(頭を優しく撫でられる音)


(それから暫くの間、頭を優しく撫でられる音と雨音が続く)

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