雨の日。同棲しているちょっぴりお姉さんなダウナー系年下彼女に甘やかされる

一筋の雷光

第1話 ダウナー彼女は雷が苦手

(ザァザァと降る雨音∶開始)


(窓にぶつかる雨音で目が覚めるあなた)


「あっ、やっと起きた。おはよう」


(右耳にそっと囁くダウナー彼女)


(ビクッと肩が上がるあなた)


「ふふっ、ごめん。そんなに驚くとは思わなかった」


(クスッと小さく笑うダウナー彼女)


「うん、結構雨降ってるみたい。さっき調べたら夜まで降るって。今日映画館デートの約束してたのに気分下がるよね」


「映画館だから、雨はあんまり関係ないって?」


「いや、目的地が屋内だとしても気分は下がるでしょ」


(『それはそうだね』と言うあなた)


「でしょ?」


(雨音の中に遠くの方でゴロゴロと雷が落ちる音が鳴り響く)


「わっ……!」


(ダウナー彼女が布団の中でより近くにすり寄ってくる)


「雷が怖いのって?」


「ううん。ちょ、ちょっと苦手なだけだよ」


(胸をなでおろしながら、少し楽しそうに笑うダウナー彼女)


(甘える感じで)

「ね、もう今日はお家デートにしない? 映画も予約してたわけでもないし、あなたもここの所仕事の疲れが残ってるみたいだし。良いでしょ?」


(近くでコソコソと話されているためくすぐったいあなた)


(コクリと頷くあなた)


(ダウナー彼女が少し離れる為に動く)


「ん、私達はインドア派だから、結局お家でごろごろするのが一番だよ」


「それで、今日は何をして過ごす?」


「ん〜。私はいつも通りゲームするのも良いけど、せっかく映画館デートの予定だったから映画を観たいかも」


「ゲームは気が向いたらやろ」


(『良いね』と頷くあなた)


「うん。じゃあ映画を観るのに決まりだね」


「よし。やる事も決まったことだし、そろそろ布団から出よ」


(あなたとダウナー彼女が布団から出る)


(ザァザァと降る雨音∶停止)


(遠くで聞こえる雨音∶開始)


(それから暫くして、手を合わせる音)


「いただきます」


(雨音が少し聞こえる中、食器とお箸が当たる音)


「ね、見る映画は決まった?」


「あ、それって今日観に行く予定だったやつの1個前の作品じゃん」


「もう配信されてたんだ」


「それに。お菓子もソファーの前に置いて、準備万端だね」


(雨音が微かに聞こえ、食器とお箸が当たる音)


(暫くして、食器とお箸が当たる音が止む)


「よし。朝ご飯も食べた事だし、映画見よ」


(あなたとダウナーお姉さんが座り、ソファーが弾む音)


(しばらくの間、雨音だけが流れる)


(それから数時間の間、あなたとダウナー彼女。二人だけのゆったりと、落ち着いた時間が流れていた)


(ポツポツと降る雨音∶開始)


「ん〜、面白かったね映画。結局休憩しながら3本見たし」


(ダウナー彼女は、背伸びをしながらソファーの背もたれに勢い良くもたれ掛かった)


「と言うか、いつの間にか雨弱くなってるね。まぁ今さら外に出る気分じゃないけど」


「ねぇ、そう言えば映画見てた時、私の手を握ろうとしてやめてたでしょ?」


「気づいてないと思った? 残念、私に隠し事は出来ないよ」


(ダウナー彼女が座る角度を変えてこちらを向く)


「ね、甘えたくなっちゃったんでしょ?」

「良いよ、おいで」


(ダウナー彼女が両手を広げる)


(あなたは広げられた両手の中へ顔をうずめる)


「うん、あなたは素直でかわいいね」


「よぉしよぉし」


(頭を優しく撫でられる音)


(暫く撫でられ続けた後、ダウナー彼女の息がふぅ~っとあなたの左耳にかかる)


「ふふっ、ごめん。またいたずらしちゃった」


「今からは、きちんと甘やかすから許して」


(頭を優しく撫でられる音)


「ほんと、あなたは甘えん坊だね」


(頭を先程までよりも早く撫でられる音)


(楽しそうに)

「え? 私は怖がりだってぇ?」


「甘やかされてる立場なのに反論するなんて……」


(楽しそうに)

「そんな人には、抱きしめの刑だよ〜。ぎゅ〜」


(強く抱きしめられる)


(微かに聞こえる雨音とダウナー彼女の心音で落ち着く空間を暫く堪能するあなた)


「ん? 年上なのに甘えてばかりでごめん?」


(優しく頭を撫でられる音と心音)


「まぁ私もあなたに甘えるのは好きだけど、今はあなたを甘やかしたい気分なの」


「だから、今は何も考えず私に甘えて欲しい。でも、私が甘えたくなったその時は、こんな風に甘やかしてね」


(コクリと頷くあなた)


(暫くの間、雨音と心音、優しく頭を撫でられる音が続く)


「あっ、そろそろお昼ご飯の時間だ」


(ダウナー彼女は抱きしめる腕を解いて立とうとする)


(心音は無くなり、雨音だけになる)


(あなたはダウナー彼女の腕を掴む)


「ん、どうしたの?」


「手、離してよ。お昼作らなくても良いの?」


(それでも引き留めるあなた)


「もうちょっと甘えたい、ねぇ〜」


(愛おしそうに)

「どうしたの、今日はいつにも増して甘えんぼさんだね」


「まぁそのぐらい疲れてるのかな? 今日が雨で良かったよ」


「でも私お腹空いてるし……。そうだ」


(そこまで言ったダウナー彼女はあなたの耳元まで近づいてくる)


(耳元で囁く感じで)

「この手を離してくれたら、さっきよりも良いことしてあげるよ」


(あなたはダウナー彼女の腕を掴んでいる手を離す)


(耳元から離れるダウナー彼女)


「うん、手を離してくれてありがとう。お昼ご飯作ってくるね」


(キッチンまで歩いていくダウナー彼女の足音が遠ざかっていく)


(そして、遠くの方で聞こえる雨音だけが流れる)

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