第2話
…なんで、ここに…?
意識が、追いつかない。
この場所のことは知っている。
知りすぎているくらい知っている。
だって、ここは私の「故郷」だ。
小学生の頃に、住んでいた場所。
卒業して、神奈川に引っ越して以来戻ってきていなかった。
…ううん、正確には、一度戻ってきたんだっけ?
だけど、あの時は引っ越してまだ間もない頃だったし、たった1日だけの帰郷だった。
この「上田浦駅」で降りて、友達に会いに行ったんだ。
親友だったひーちゃんや、クラスメイトの子たち。
それから…
たくさんの記憶が蘇る。
ずっとずっと古い記憶や、昨日のことのように近い思い出。
追いきれないほどの時間が目の前に横たわっているのを、上田浦駅の周りの景色を見て感じた。
上田浦駅は、熊本県葦北郡芦北町大字井牟田にある肥薩おれんじ鉄道線の駅だ。
海と山に囲まれた、小ぢんまりとした集落と、その先に見える、広大な八代海と天草の島々。
跨線橋に上って初めて見られるこの景色は、上田浦駅ならではの光景だった。
かつては鹿児島本線の一部で、特急も行き交っていた駅だったけど、九州新幹線の開通以降定期の特急列車はなく、——静かで、ゆったりとした時間が流れている。
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