猫が喋った!!?

第1話


 蝉が鳴いている。


 それはまるで雨だった。


 降りしきる雨粒のような湿った音。


 それでいて、どこか、目を覆いたくなるほどの、眩しい陽射しのような——




 サイレンの音が聞こえる。


 耳をつんざくような音と、乾き切ったノイズ。


 自分が今どこにいるのかもわからなくなるほど、鬱蒼とした意識が視界の奥に膨らんでいた。


 そういう時は大抵、寝不足。


 別に夜更かしするつもりなんてないんだけれど、高校生にもなると、「勉強」やら「部活」やらで忙しくてさ?


 昨日なんかはとくにそうだった。


 まさか、先輩から怒られるとは思いもしなかった。


 遠征先のバスの道中だよ?


 ただでさえ朝が早いんだから、眠気ざましに音楽くらい聴かせてくれれば良いのに。


 



 ザザァ



 …え?



 心地良い波音が聞こえて、ふと、目を開けた。


 重たい意識を揺り動かすように首を持ち上げ、瞼を開く。


 心地良い風が吹いている。


 誰かの話し声と、微かに響く足音。



 …駅?



 そこは、駅のホームに違いなかった。


 線路を挟んだ先にある改札口と、赤いベンチ。


 見慣れた光景だった。


 不意に、そう思った。


 この場所、目の前に広がる「上田浦駅」の文字が、約4年ぶりに見た景色だったにも関わらず。

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